概要
乳児湿疹とは、1歳未満の乳児に多く見られる湿疹のことです。顔、頭皮、首など皮脂の分泌が多い部位に生じやすく、ニキビのように赤く盛り上がったものや、皮膚にうろこ状のかさぶたを形成するものなどさまざまなタイプの湿疹が見られるのが特徴です。
多くは皮膚を清潔に保つなどのセルフケアを行うことによって改善できますが、なかには湿疹に細菌感染が生じて悪化するものもあり、医療機関での治療が必要になるケースもあります。また、かゆみや痛みなどの不快感を伴うときは機嫌が悪くなったり、哺乳量が減ったりするなどの変化が見られることも少なくありません。
原因
乳児湿疹の原因には、以下のようなものが挙げられます。
おむつ皮膚炎
おむつかぶれとも呼ばれ、おむつをしていることによって生じる接触皮膚炎です。皮膚に尿や便が長時間触れることや、おむつ全体が蒸れることなどによって生じます。
おむつをしている周辺に赤みが生じ、丘疹が現れたり乾燥したりすることもあります。ひどくなると皮膚表面が剥け、かゆみや痛みが生じることもあります。
乳児性脂漏性皮膚炎
皮脂の過剰分泌が原因で生じる乳児湿疹を“乳児脂漏性湿疹”と呼びます。10~30%の乳児が、生後2週間~3か月頃に発症します。この時期は、胎盤を通して胎児に移行した母体由来の女性ホルモンの影響が残っているため、皮脂の分泌量が多くなる傾向にあります。皮膚にはさまざまな常在菌が潜んでいますが、そのなかでもマラセチアとよばれるカビの一種は、皮脂を栄養源として増殖するため、皮脂の過剰分泌が生じると異常増殖して皮膚に炎症を引き起こすと考えられています。
汗疹
乳児は新陳代謝が活発で多くの汗をかきます。そのため、汗をかいたままにしていると汗疹(あせも)が生じることもあります。汗疹は汗の乾きにくい頭や首、肘や膝の内側などに生じやすい傾向があります。
汗疹には、かゆみや赤みを伴わない“水晶様汗疹”と、皮膚に炎症が起きて赤みやかゆみが生じる“紅色汗疹”があります。
症状
乳児湿疹は乳児期に見られる湿疹の総称です。そのため、症状は原因によって大きく異なります。
まず、乳児湿疹のなかでもよく見られる“乳児脂漏性湿疹”は、顔や頭皮、首などに赤い小さな湿疹が散在し、うろこ状の黄色いかさぶたやフケのような塊が皮膚に付着するのが特徴です。一般的に痛みやかゆみを伴うことは少ないとされています。しかし、皮膚に炎症が生じた部位に二次的な細菌感染などを生じると、痛みやかゆみが生じて機嫌が悪くなる、哺乳量が少なくなる、皮膚を掻きむしるといった症状が現れることも少なくありません。
また、毛穴詰まりによる“新生児ざ瘡”は顔や首、背中などに米粒大の白色や赤色の湿疹が現れます。詰まった毛穴の内部は細菌感染を起こしやすく、悪化すると湿疹が赤く腫れたり、膿が出たりすることも少なくありません。炎症が悪化すると、かゆみや痛みも強くなるため、掻きむしって炎症が広がってしまうこともよく見られます。
検査・診断
基本的に乳児湿疹は、発症したときの月齢、皮膚の状態、湿疹の外見的特徴から診断をすることができるため、特別な検査を要することはほとんどありません。
しかし、湿疹から膿が流出しているなど細菌感染が疑われ、抗生剤の使用が望ましいと考えられる場合には、原因菌を特定するために流出した膿や湿疹の組織を一部採取して、細菌培養検査が行われることがあります。
また、適切なセルフケアや治療を続けていたとしても症状が改善しなかったり再発を繰り返したりする場合は、アトピー性皮膚炎などほかの皮膚疾患である可能性も考えられるため、疑われる病気に合わせて血液検査などが行われます。
治療
乳児湿疹の多くは治療をする必要はなく、入浴時に顔や頭皮、首など皮脂の分泌が多い部位を泡立てた石鹸で丁寧に洗うなど、皮膚を清潔に保つことで自然に改善していきます。また、皮膚に付着したかさぶたやフケのような塊は皮脂が固まったもので、入浴時などによくふやかしてガーゼなどでやさしく拭き取ると剥がれます。
一方、これらのセルフケアを入念に行っていたとしても症状が改善しない場合は、皮膚の炎症を抑えるステロイド軟膏や乾燥を予防するワセリンなどの塗り薬による治療を要します。また、湿疹から膿が流出しているようなケースでは、抗生剤入りの軟膏が使用されることも少なくありません。
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