にゅうじゅうろう

乳汁漏

別名
乳汁漏出症
最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

乳汁漏とは、妊娠・分娩・産褥(さんじょくき)(分娩後の期間)以外の時期で、乳汁分泌が見られる状態を指します。乳汁の分泌は原則、妊娠・分娩・産褥期以外にはありません。

女性で起こりやすいですが、男性でも起こる可能性があります。男女比はおよそ1:3といわれているため、男性の発症もめずらしいわけではありません。

原因

原因として考えられるのは、乳汁を産生するプロラクチンの過剰分泌です。このような状態を高プロラクチン血症といいます。

プロラクチンは脳内の下垂体(かすいたい)と呼ばれる部位から放出されるホルモンですが、下垂体からプロラクチンが分泌されるためには、脳内の視床下部(ししょうかぶ)という部位から指令が下る必要があります。

したがって、この経路のどこかに支障をきたすと、プロラクチンの産生が過剰になったり、足りなくなったりします。高プロラクチン血症をきたす病態・疾患は非常に多彩ですが、大きく分けて以下4つに分かれます。

プロラクチンを産生する腫瘍(しゅよう)

プロラクチンを分泌する器官である下垂体に腫瘍ができると、体が必要としている・していないに関わらず腫瘍によってプロラクチンが産生されます。そのため、プロラクチンが過剰な状態となります。

脳の視床下部の機能不全

視床下部は下垂体に指令を出してプロラクチンを分泌させる器官なので、視床下部からの過剰な刺激によってプロラクチンが過剰に分泌されることになります。

薬剤の影響

プロラクチンは同じく脳内で分泌されるドパミンによって、過剰に分泌されないよう抑制をかけられています。したがって、ドパミンの産生を抑えるような薬(降圧剤・抗精神病薬・抗うつ薬・制吐薬・抗胃潰瘍薬など)の内服によって抑制が外れ、プロラクチンの産生が過剰になります。

甲状腺機能の低下

甲状腺ホルモンとプロラクチンの分泌調整機構には共通している部分があります。甲状腺ホルモンが低下すると甲状腺ホルモン量を正常状態に戻すために、視床下部から甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が上昇します。

このホルモンは甲状腺ホルモンの分泌にも作用しますが、プロラクチンの分泌にも作用するため、高プロラクチン血症につながります。

例外として、潜在性高プロラクチン血症があります。これは血中のプロラクチンの濃度は正常であるにもかかわらず乳汁漏出といった症状がでる場合を指します。

症状

プロラクチンの過剰により、乳汁の分泌以外に性線機能の低下が起こります。具体的には、女性では月経異常(黄体機能不全無月経)、男性では性欲の低下が起きます。これにより不妊が生じる可能性もあります。

プロラクチン産生下垂体腫瘍が原因の場合には、プロラクチンを過剰に産生する腫瘍が下垂体に生じます。

この下垂体が存在する部位の真上に視神経が通る道があるため、腫瘍によってこの道を通る視神経が圧迫され、視野狭窄(しやきょうさく)(視野が狭くなること)が生じます。

また、頭痛複視(ふくし)(物が二重にみえること)を生じることもあります。

検査・診断

原因を調べるため、主に以下のような検査がおこなわれます。

  • 問診(月経、妊娠の除外、体重変化、薬物服用の有無、寒がり、皮膚乾燥など)
  • プロラクチン
  • 下垂体ホルモン(LHFSH)、女性ホルモン(E2)
  • 甲状腺機能(TSH、fT3、fT4)
  • 頭部MRI

なかでも重要なのが、血液中のプロラクチンの量です。血中のプロラクチン濃度の正常値は約3~30ng/mLです。この値が100ng/mL以上の場合は、プロラクチン産生下垂体腫瘍を疑って、MRI検査を行います。

ただし、この数字は暫定的なものであるので100ng/mLを下回っても、プロラクチン産生下垂体腺腫を疑うような所見があればMRI検査を行う場合もあります。

血中のプロラクチン濃度が高く、ドパミン産生を抑制するような薬の服薬歴がある場合には、薬剤性を疑います。服薬歴がない方に対しては甲状腺機能の検査を行います。ここで甲状腺ホルモンの低下が見られるようであれば、甲状腺機能低下症によって起こされた高プロラクチン血症を疑います。

血中のプロラクチンの濃度は高いが服薬歴もなく、甲状腺の機能も正常だった場合には、視床下部の機能不全を疑います。

一方、潜在性高プロラクチン血症については、血中のプロラクチン濃度は正常です。したがって、症状が出ているにもかかわらず血中のプロラクチン濃度が正常な場合に疑われます。この場合は、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)試験が行われます。試験の結果、過剰にプロラクチンが分泌されるようであれば、潜在性高プロラクチン血症が考えられます。

治療

治療対象となるのは、主に以下です。

など

そのほかのケースは、担当の医師と相談のもとですが、積極的治療は行わず経過観察を行うことも少なくありません。治療は、年齢、妊娠出産の希望の有無によって異なります。また、原因によっても治療方針が異なります。

プロラクチン産生腫瘍の場合

ドパミン作動薬の投与か外科療法となります。腫瘍の大きさや症状などに応じて治療方針が決定されます。

視床下部性の場合

ドパミン作動薬の投与が検討されます。

薬剤性の場合

薬物の中止や減量、または処方の変更が検討されます。その際には、もともと治療をおこなっていた病気との治療優先順位を考慮します。

甲状腺機能低下症の場合

甲状腺ホルモンの補充が検討されます。

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