こうつうせいすいとうしょう

交通性水頭症

最終更新日:
2024年05月29日
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2024/05/29
更新しました
2020/03/05
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概要

交通性水頭症とは、脳や脊髄の表面を流れる脳脊髄液の血液中への吸収がうまくいかなったり、流れが滞ったりすることによって引き起こされる水頭症の一種です。水頭症は、脳の内部の空間である“脳室”に脳脊髄液が溜まって拡大することで、歩行障害や排尿障害をはじめさまざまな神経症状を引き起こします。

脳や脊髄の表面は、“くも膜”と呼ばれる薄い膜で覆われており、くも膜と脳や脊髄の表面の隙間には“くも膜下腔”という空間があります。くも膜下腔は脳脊髄液という液体で満たされており、脳や脊髄を外部の衝撃から守る重要な役割を果たしています。脳脊髄液は、脳の中にある脳室という空間で作られ、脳室の狭い通路を取ってくも膜下腔へ流れ込みます。そして、脳や脊髄の表層を循環すると、毛細血管に吸収されていきます。通常、成人では約150mlの脳脊髄液が循環し、脳室では1日に約500mlもの脳脊髄液が新たに作られ、古くなった脳脊髄液は次々と新しいものに入れ替わります。

なお、脳脊髄液がうまく流れない・吸収されないといった異常によって発症する水頭症を交通性水頭症というのに対し、脳室の異常が原因で発症する水頭症を“非交通性水頭症”といいます。

交通性水頭症は成人に発症しやすく、脳圧(頭蓋骨の中の圧)は上昇しないケースが多いことが特徴です。また、このような水頭症を“正常圧水頭症”と呼びます。

原因

交通性水頭症は、脳脊髄液の循環経路のなかで、くも膜下腔が狭くなるなどによって脳脊髄液の流れが悪くなることや、くも膜下腔内での脳脊髄液の吸収がうまくいかなくなることで引き起こされます。

主な原因としては、次のようなものが挙げられます。

脳の病気

くも膜下出血髄膜炎などによって脳脊髄液を吸収する脳の表面の細かい血管などにダメージが加わると、脳脊髄液を吸収する機能が低下したり、くも膜が周辺の組織と癒着を起こしたりして水頭症を発症することがあります。特にくも膜下出血では発症後1~2か月後に約30%のケースで水頭症を発症するとの報告があります。

はっきりした原因が分からない

正常圧水頭症の中でもはっきりした原因が判明しないタイプを“特発性正常圧水頭症”といい、正常圧水頭症の約40%を占めるといわれています。ただ、高齢者に多く発症することから、脳やくも膜などの加齢による変化が関与していると考えられています。

症状

交通性水頭症の多くは、脳圧が上昇しないため頭痛や嘔吐、意識障害などの症状は引き起こされません。しかし、脳室が大きくなると脳を圧迫するため、脳の機能が障害されて歩行障害・認知機能障害排尿障害(頻尿、尿失禁など)の3つの特徴的な症状が現れるようになります。

また、脳圧が正常値の水頭症を“正常圧水頭症”と呼びますが、このタイプでは歩行障害、認知機能障害、尿失禁の3つの特徴的な症状が現れます。高齢者に多く見られる水頭症ですが、これらの症状は加齢による生理的な現象と似ているため、発症に気づかないケースも非常に多いと考えられています。

検査 ・診断

交通性水頭症が疑われるときは次のような検査が行われます。

頭部CT検査、MRI検査

交通性水頭症の診断をするには、脳室の拡大を確認することが必要です。そのため、まずは簡単に実施できる頭部CT検査を行います。

また、水頭症を発症すると頭部MRI検査で脳室の周囲に特徴的なサインが描出されるため、頭部CT検査で脳室の拡大などがはっきりしない場合は頭部MRI検査が追加で行われることもあります。

そのほか、頭部CT検査で脳内に腫瘍などの病気が発見された場合は、精密検査として頭部MRI検査を行います。

髄液排除試験(タップテスト)

腰を走行する脊髄下方のくも膜下腔に針を刺して脳脊髄液を約30ml排除し、症状の変化を調べる検査です。特に特発性常圧水頭症の診断のために行われ、脳脊髄液を抜くと数時間~数日内に歩行障害などの症状の改善が見られることがあります。

腰に針を刺すため体への負担を伴う検査ですが、特発性常圧水頭症の診断に有用で、なおかつ髄液の排出路を新たにつくる“シャント手術”を行うか否かを決めるための大切な検査でもあります。

治療

脳脊髄液の吸収を促したり、吸収したりする能力を回復させる薬剤は現時点でないため、過剰にたまった脳脊髄液を体内の別の部位に排出するための経路をつくる“シャント手術”が行われます。現在主に行われているシャント手術は、“脳室―腹腔シャント(V-Pシャント)”と“腰椎―腹腔シャント(L-Pシャント)”です。

前者は脳室と腹腔(腹膜で囲まれた腹部の空間)、後者は腰のくも膜下腔と腹腔を細いチューブでつなぐことで脳脊髄液を腹腔内に排出し、脳室やくも膜下腔に脳脊髄液がたまるのを防ぐ効果が期待できます。また、数は多くありませんが、脳室と右心房(心臓の一つの空間)をつなぐ“脳室-心房シャント(V-Aシャント)”という種類のシャント手術が行われることもあります。

シャント手術は脳神経外科の基本的な手術手技で、効果が期待できるのであれば、90歳を超える超高齢者の手術も行われています。ただし全身麻酔が必要なため、健康状態が著しく悪いケースや、認知症を発症しており手術をしても症状の著明な改善が望めないケースなどでは手術を行わず、経過を見ていくこともあります。

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