概要
伝染性単核症とは、主にEpstein-Barrウイルス(EBV)の初感染によって起こり、発熱、喉の痛み、リンパ節の腫れ、発疹などを主症状とする感染症です。
EBVは主に唾液を介して感染し、思春期以降に感染した場合に伝染性単核症を発症することが多く、kissing diseaseとも呼ばれています。
予後は良好で2~3週間で自然に軽快することが多いですが、発熱などの症状が1か月以上続くこともあります。
原因
ほとんどがEBVの初感染によって起こりますが、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、トキソプラズマ原虫などが原因となることがあります。
EBVは乳幼児期~若年青年期に、主に唾液を介して感染しますが、乳幼児期では感染しても症状が出ないことが多く(不顕性感染)、一般に思春期~若年成人の初感染で発症します。
症状
伝染性単核症はEBVの初感染から約4~6週間の潜伏期間を経て、発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎、扁桃炎、脾腫、肝腫大、倦怠感、頭痛、腹痛、悪心、嘔吐、皮疹などの症状をきたします。皮疹は約20%にみられ、しばしば麻疹様〜風疹様の紅斑を示します。
血液検査では、しばしば白血球増多、リンパ球増多、異型リンパ球の出現、好中球減少、血小板減少がみられます。また多くの症例で肝機能異常を認めます。
発症から2週間程度は頸部のリンパ節の腫れや咽頭炎の症状が強く、その後脾腫の頻度が高くなることが知られています。症状は2~3週間で自然に軽快することが多いですが、発熱が1か月以上続くこともあります。
まれに、脾破裂、脳炎、自己免疫性貧血などの合併症がみられることもあります。特に脾腫がみられる場合は脾破裂のリスクが高くなるため、腹痛の症状が認められた場合は脾破裂を疑う必要があります。
検査・診断
伝染性単核症の診断は、症状や血液検査の結果をもとに総合的に判断されます。
症状では発熱、扁桃炎、咽頭炎、頸部リンパ節腫脹、肝脾腫の有無などが参考となります。
血液検査では、異型リンパ球の出現を伴うリンパ球増多、肝機能障害の有無を確認します。
また、EBVの感染を確かめるため、EBVに関連するVCA抗体、EA抗体、EBNA抗体の測定を行います。これらの抗体は抗体の種類によって上昇するタイミングが異なるため、複数の抗体を測定することによって現在の感染だけでなく過去の感染の有無も調べることができます。
治療
伝染性単核症に対する特異的な治療は現時点では存在しません。基本的には自然に治癒する病気であることから、対症療法を行いながら回復を待ちます。
たとえば、発熱や喉の痛みなどに対しては、解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンなどが使用されることがあります。また、重篤な肝障害、気道閉塞、高熱が持続する場合は副腎皮質ステロイドを全身投与することもあります。
注意すべき点として、ペニシリン系抗菌薬に対して過敏反応を示しやすいため、細菌の混合感染に対して抗生剤を使用する場合にはペニシリン系は避ける必要があります。
また伝染性単核症では、脾腫の症状が認められることがあります。この場合、運動を行うことで脾破裂を引き起こすことがあるため、発症から3週間程度は運動を避ける必要があります。
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