成人脊柱変形とは、大人になってから発症する脊柱変形のことを指し、さまざまな病態がみられます。その一方で、ほぼ共通してみられる症状には、痛み、直立・起立が続けられないといったものが挙げられます。
QOL(生活の質)低下やADL(日常生活動作)障害につながる成人脊柱変形の症状について、国家公務員共済組合連合会 九段坂病院の大谷和之先生にお話を伺いました。
成人脊柱変形とは、その名のとおり、大人になってから発症する脊柱変形を指します。脊柱の変形が原因で、痛み、直立保持困難、長距離歩行困難といった症状があらわれます。このような症状は、患者さんのQOL低下やADL障害につながるため、それらを改善するために治療を行う必要があります。
成人脊柱変形の治療について、詳しくは記事2、記事3をご覧ください。
成人脊柱変形に分類される疾患群には、以下のとおりいくつかの種類があります。
など
かつて、これらは個々の病名で称されていましたが、近年では「成人脊柱変形」と総称しています。
近年、脊柱変形(小児を含む)に対する手術は増加しています。その背景にはまず高齢化があり、それに加えて、かつては加齢現象の結果とみなされ治療の対象とならなかったいわゆる「高齢者の腰曲がり」が、病態解明によって「成人脊柱変形」として認知されるようになり、医療技術の進歩によって治療できるようになったことが影響していると考えられます。
成人脊柱変形の手術について、詳しくは記事3をご覧ください。
成人脊柱変形による代表的な症状は、以下のとおりです。
胃食道逆流症になると食事の量が減り、体重が減少することがあります。
これまでお話ししたように、成人脊柱変形はADL障害を引き起こし、さらに慢性の腰痛や社会的活動の低下、姿勢の変化による劣等感や不健康感を伴うため、QOLの低下につながります。成人脊柱変形がQOLに与える影響は、関節炎や慢性肺疾患、糖尿病などの慢性疾患よりも大きいといわれ、また、脊柱変形のある高齢女性は入院のリスクが高く、生命予後が悪化するという報告もあります。
このような点から、成人脊柱変形に対しては可能であれば手術などの治療を行い、QOLの低下を防ぐことが重要です。ただし、すべての方が手術適応となるわけではありません。また、成人脊柱変形の手術は長い時間を要する大掛かりな手術で、合併症のリスクも伴います。そのため、治療(手術)によるメリットとデメリットを踏まえたうえで、治療法を選択することが大切です。(成人脊柱変形の治療について、詳細は記事2をご覧ください)
後弯(背骨が後ろに曲がっている)になると、少しでも重心をもとに戻そうとして、Aのように膝を曲げ、股関節を後ろにそらすことで立った姿勢を保持します。しかし、このような無理な姿勢は筋疲労のため長く続けられず、数十秒でBのように膝に手を置く前傾姿勢になってしまいます。
この例からわかるように、成人脊柱変形では、後弯になるとADL障害を起こしやすいといえます。
当院の整形外科では成人脊柱変形の手術を数多く行っており、全国から患者さんがいらっしゃいます。先ほど述べたようにすべての患者さんに手術が適応となるわけではありませんが、気になることがある方、成人脊柱変形で手術を検討されている方については、まず病院を受診して診察を受けていただくことをおすすめします。
基本的に当院では、成人脊柱変形の患者さんに対し、初診で手術を決めることはほぼありません。まずは治療のメリットとデメリットをきちんと患者さんにご説明し、さらにお話のなかでそれぞれの患者さんの人生観や価値観を理解してから、最終的に患者さんに治療を選択していただくようにしています。
「手術をして元気に余生を過ごしたい」という方もいれば、「手術はせずに可能な範囲で生活を続けたい」という方もいらっしゃいます。私たちは患者さんの人となりを理解して、最終的に患者さんのご希望が叶うよう、全力でサポートします。
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 整形外科部長
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