概要
前立腺肥大症とは、男性の体において膀胱に隣接して尿道を取り巻いている前立腺という臓器が大きくなり、尿道が細くなることによって排尿にまつわるいろいろな症状をきたす病気を指します。
前立腺は男性ホルモンの変化に影響を受けます。そのため、前立腺肥大症では、男性ホルモンのはたらきが衰え始める30歳代から前立腺が大きくなり始め、加齢とともに大きくなります。肥大する前立腺の大きさや形には個人差があります。
原因
加齢に伴う男性ホルモンの変化が、前立腺肥大症に関与していると考えられています。これは、前立腺が男性ホルモンのはたらきと密接に影響し合う臓器であるためです。
このほか、以下に挙げる因子と前立腺肥大症との関連が明らかになりつつあります。
など
症状
前立腺肥大症になると、尿道の一部が細くなるために尿に関するいろいろな症状が起こるようになります。具体的には、以下のような症状が現れます。
- 排尿困難(尿が出にくい)、または尿閉(尿が出ない)
- 頻尿:おしっこが近い、夜中にトイレで何度も起こされる
- 尿意切迫感:突然おしっこに行きたくなる
- 残尿感:尿を出しても出し足らない感じがする
- 尿失禁:尿を漏らしてしまう
検査・診断
前立腺肥大症の検査では、日常生活で尿について困っていることを問診で伺ったうえで、さまざまな検査を行います。たとえば、尿流測定で実際に尿の出る速さを測定したり、腹部超音波検査で尿が溜まった状態の前立腺体積や形状、膀胱変形の有無などを調べたりします。また、トイレの後に膀胱内の尿の量を推定(残尿測定)したり、直腸診を実施し、肛門から指をいれて前立腺を触診して大きさや硬さ、表面のゴツゴツ感がないかなどを調べたりします。
前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAという値は前立腺肥大症でもが高くなることがあり、高値の場合は定期的なフォローやより詳しい検査を行います。
治療
前立腺肥大症の治療方法には、大きく分けて薬を用いた薬物療法と、手術で前立腺の一部を取り除く手術の2つがあります。通常はまず薬物療法を行いますが、効果が不十分であったり、尿路感染や腎機能障害などの合併症が生じていたりする場合や、重症と判定されるような場合には、手術など外科的治療を行うことが多いです。
薬物療法
薬物療法で用いる薬には、前立腺や膀胱の一部の筋肉を緩めて尿の通りをよくするタムスロシンなどの交感神経α1受容体拮抗薬や、男性ホルモンのはたらきを抑える5α還元酵素阻害薬などがあります。また、近年では、タダラフィルというホスホジエステラーゼ5阻害薬も一般的になっています。
手術治療
手術は尿道から内視鏡入れて行う治療が標準的です。
その方法には幾つかあり、尿道の内側から前立腺を削り取る経尿道的前立腺切除術(TURP)、ホルミウムレーザーを用いた前立腺核出術(HoLEP)やレーザーを用いた前立腺蒸散術(PVP)などがあります。
医師の方へ
「前立腺肥大症」を登録すると、新着の情報をお知らせします