げんぱつせいまくろぐろぶりんけっしょう

原発性マクログロブリン血症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

原発性マクログロブリン血症とは、血液細胞のひとつであるB細胞という細胞ががん化して免疫グロブリンの一種が過剰に産生される病気です。免疫グロブリンは本来は、免疫反応のために重要な働きをするタンパク質ですが、マクログロブリン血症で増える免疫グロブリンは本来の働きを持ちません。

マクロとは高分子量という意味であり、IgMと呼ばれるタイプの高分子のグロブリンが血液中に異常に増加するために、血液の粘度が上昇してドロドロになります。

多くの場合は無症状ですが、脳や目の血液の流れが悪くなることで、過粘稠度症候群(かねんちょうどしょうこうぐん)と呼ばれるさまざまな症状が起きることがあります。高齢者に多く発症し、男女比では男性に多い傾向にあります。

原因

B細胞におけるタンパク質の設計図である遺伝子の異常が原因です。

この病気の大多数の患者さんの腫瘍細胞では、MYD88という遺伝子の異常が検出されます。なぜ特定の遺伝子に異常が起きるのかは、まだ明らかになっていません。家族のなかにこの病気を発症した方がいる場合、いない場合と比べ発症する割合が高いことから、何らかの遺伝的な要因も関わっていることが示唆されています。

症状

無症状の方もいますが、症状が出現した場合には血液に関わるものや過粘稠度症候群に関わるものなど、軽症から非常に重い状態まで多岐にわたります。がん化したB細胞が異常な免疫グロブリンを過剰産生する点でこの病気と似ている多発性骨髄腫では、骨の痛みが現れることが多いです。しかし原発性マクログロブリン血症では骨に異常が現れるのは非常にまれです。 

血液に関わる症状

がん化したB細胞が骨髄で増えると、血液細胞の産生が阻害されます。特に赤血球がが不足することが多く、この場合は全身がだるい、疲れやすい、やる気が出ない、めまいがする、少し動いただけで息切れする、などの症状が現れます。                                    

過粘稠度症候群に関わる症状

自覚症状としては、頭痛、物が見えにくくなる(視覚障害)、手足の先がしびれる、触った感触がわかりにくい(末梢神経障害)、皮膚出血に加え口の中や胃、腸などの粘膜から出血しやすくなる、疲れやすいなどがあります。

また、クリオグロブリン血症と呼ばれる低温時にのみ固まって小さな血管で炎症を起こし、その先に血液が流れなくなって虚血を起こすことがあります。特に皮膚、関節、神経、腎臓などで高頻度におこります。

しこりに関わる症状

がん化したB細胞はリンパ節で増えることもあり、この場合は体の表面や深部にしこりができます。しこりは取って調べる検査(生検)を行って病理検査を行うと、リンパ形質細胞リンパ腫と診断されます。この場合のしこりは、どこにできるかによって、いろいろな症状が出ます。詳しくは「悪性リンパ腫」の項目を参照してください。

また、肝臓や脾臓でがん化B細胞が増えることもあり、この場合は肝臓や脾臓が大きくなります。脾臓はときに非常に大きくなることもあり、その場合はお腹の張りなどを自覚することもあります。

検査・診断

血液検査

血液に含まれる細胞の数や形などを調べます。また、異常なタンパク質(マクログロブリン)が含まれていないかどうかも調べます。加えて腎臓の機能もチェックします。

尿検査

尿にマクログロブリンの一部(軽鎖)が含まれていないかどうか調べます。軽鎖にはκ型とλ型がありますが、マクログロブリン血症の患者の尿で軽鎖が検出される場合は、κ型またはλ型いずれか一方のみが検出されます。

眼底検査

眼の奥の血管の状態を調べます。血液がドロドロになっていると血管が太く拡張します。

骨髄検査

血液をつくる工場である骨髄の一部をとります。うつ伏せの姿勢で、局所麻酔を行い腰の骨に針を刺し、中味を吸い出してくる吸引検査と、切り取ってくる検査(生検)があります。その後、顕微鏡検査、染色体検査、フローサイトメトリー検査、遺伝子検査などを行い、マクログロブリン血症の原因になる腫瘍細胞(リンパ形質細胞)の有無や性質などを検査します。

画像検査

お腹の中など体の深部にしこりができているかや、脾臓や肝臓が大きくなっていないかを調べるために、画像診断を実施します。CTや超音波が用いられます。

治療

無症状の場合、外来通院しながら定期的に血液検査を行い経過観察します。

症状がある場合には化学療法を行い、過粘稠度症候群による症状を合併している場合には、血漿交換を行うこともあります。まれに造血幹細胞移植療法が検討されることもあります。

化学療法

マクログロブリン血症は、悪性リンパ腫のうちリンパ形質細胞リンパ腫と同じ病気とされています。これは悪性リンパ腫のなかでもおとなしい性質を持っており、他のおとなしい性質をもつ悪性リンパ腫と同じような抗がん剤で治療します。経過が緩徐で重篤な症状がないことも少なくないため、初回は入院のうえ治療が行われることもあります。その他は外来で治療が行われます。

この病気の治療方法には、身体にかかる負担が少ないものから大きい治療まで選択肢がたくさんあります。また病気の進行具合と患者さんの状態に応じて、一つの薬剤を選択し少量から治療を開始する場合と、複数の薬剤を組み合わせて同時にたくさんの量を使用する場合があります。高齢者に多く発症するため、なかには複数の薬剤を組み合わせた治療に耐えられない患者さんもいます。その場合、治療の強さを少し下げ、できるだけ副作用を抑えながら悪性の細胞が増えないようコントロールします。

血漿交換療法

異常に増加したマクログロブリンでドロドロになった血液を改善する治療です。血液の血漿(けっしょう)と呼ばれる液体成分だけを、献血してくれたドナーの血漿と入れ替えます。人工透析と同じように血管の中に針を2本刺し、1本の管でドロドロになった血漿を取り除き、もう1本でドナーの正常な血漿を体の中に取り込む管を入れて治療を行います。

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