概要
原発性胆汁性肝硬変とは、肝臓内にある胆管が自己免疫学的機序(免疫のシステムに異常が起こり、病気が発症すること)によって破壊され、慢性的に肝臓内に胆汁がうっ滞(停滞した状態)してしまう病気です。うっ滞した胆汁により肝臓の肝細胞が破壊されていき、徐々に肝硬変へと移行していきます。以前は、肝硬変へと進行し、さまざまな症状が出るまで診断をつけることが難しかったことから、「原発性胆汁性肝硬変 (Primary Biliary Cirrhosis: PBC) と呼ばれてきました。しかし、検査技術の向上により早期に診断可能となったこと、また治療により多くの患者さんの肝硬変への進展を防ぐことが可能となったことから、病名の変更が議論されてきました。
2014年から2015年にかけて、まず欧米において病名が変更されました。2016年、日本においても「原発性胆汁性胆管炎 (Primary Biliary Cholangitis: PBC)」へ変更され、現在は旧称として原発性胆汁性肝硬変が併記されています。この病気は、厚生労働省により難病のひとつに指定されており、日本における患者数は約5~6万人にのぼると推定されています。女性に多く認められ、好発年齢は男性60歳、女性50歳といわれています。
原因
原発性胆汁性肝硬変は、肝臓の中にある胆管という小さな管が免疫学的なメカニズムによって破壊されることにより引き起こされます。
胆管には、消化吸収になくてはならない胆汁と呼ばれる液体が流れています。原発性胆汁性肝硬変では、肝臓内の胆管が自己免疫によって破壊されてしまいます。その結果、胆汁がうまく流れなくなってしまうため、胆汁が肝臓内に止まり、慢性の肝内胆汁うっ滞状態となります。
原発性胆汁性肝硬変は、中年期以降の女性に多い病気であることも知られていますが、なぜこのような反応が生じるのかは完全には明らかにされていません。
症状
原発性胆汁性肝硬変では、自覚症状がないまま診断を受け、そのまま一生涯を過ごされる方もいらっしゃいます。
その一方で症状を現す方もいらっしゃいますが、その際には、皮膚の掻痒感(かゆみ)を訴えることが特徴といえます。皮膚には発疹などが出ることはなく、ただかゆみだけが現れます。その他、目元に脂肪のかたまりが出現することもあります。
原発性胆汁性肝硬変では、肝硬変に至ることもあります。その結果として、皮膚が黄色くなる、腹水のためにお腹が大きくなる、胃食道静脈瘤が形成され消化管出血を起こす、などの症状が出現することがあります。
さらには、肝性脳症となり、昼夜逆転、人の区別がつかない、などの症状が出現することもあります。また、骨粗しょう症となり、弱い外力での骨折を起こすこともあります。
検査・診断
原発性胆汁性肝硬変では、血液検査が行われます。胆汁がうっ滞している状況を反映して、アルカリホスファターゼ(ALP)やγGTPといった項目が高い値を示します。
また、原発性胆汁性肝硬変は免疫学的な異常を原因として発症する病気です。そのため、自己抗体である抗ミトコンドリア抗体と呼ばれる項目が確認されます。原発性胆汁性肝硬変は、これら項目が陽性である際に強く疑われます。
治療
原発性胆汁性肝硬変では、ウルソデオキシコール酸と呼ばれる内服薬が第一選択薬として使用されます。その他にもベザフィブラートと呼ばれる薬剤を併用することもあります。
それでも病状が進行し、肝硬変に至ることがあります。この際には、肝臓移植を検討することもあります。
原発性胆汁性肝硬変では、対症療法も行われます。かゆみに対しては抗ヒスタミン薬、骨粗しょう症に対してはビタミンD製剤の使用などが検討されます。
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