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変形性膝関節症の診断と治療――個々に合った治療を目指す北里大学北里研究所病院の取り組み

変形性膝関節症の診断と治療――個々に合った治療を目指す北里大学北里研究所病院の取り組み
岩間 友 先生

北里大学北里研究所病院 整形外科 スポーツクリニック 医長

岩間 友 先生

目次
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変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、加齢などにより膝関節が衰えて痛みや運動障害をきたす病気です。北里大学北里研究所病院 整形外科では、症状のみならず患者さんのバックグラウンドやニーズを十分理解し、その方にとってより満足度の高い治療方針を見出せるよう日々努力を重ねています。

今回は、同院 整形外科医長の岩間 友(いわま ゆう)先生に、変形性膝関節症の検査、診断や治療の選択肢、診療で大切にされていることについてお話を伺いました。

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写真:PIXTA

変形性膝関節症では“滑膜炎による痛み”や“メカニカルストレス(物理的な刺激)による痛み”が生じます。また、“中枢感作*による痛み”にも注意が必要です。それぞれの痛みに対して適切な治療法があるため、痛みの質を評価することが重要となります。

滑膜炎による痛みであれば安静にしていても重だるいような違和感があり、メカニカルストレスによる痛みなら動作開始時などに膝に体重がかかると強い痛みを感じます。また、炎症や荷重ストレスがなくても痛みを感じるなら、中枢感作の可能性が考えられます。

患者さんが感じている痛みが上記のどれに該当するのか判断するため、どのようなタイミングでどのような痛みを感じているかを問診で詳しくお聞きします。具体的には下記のような質問をしていきます。

  • 痛みを感じるのは動いているときか。安静にしているときにも感じるか。
  • 寝ているときの痛みであれば、横になってじっとしているときにも感じるか。寝返りを打ったときだけ感じるか。
  • 動いているときの痛みであれば、階段の上り下りのときか。歩き始めか。歩き始めてしばらくしてからか。

また、触診から得られる理学所見(身体所見)も診断には欠かせません。どの部分に圧痛(圧迫したときの痛み)を感じるか、靱帯(じんたい)の緩みによって膝の安定性が揺らいでいないかなどを確認し、痛みの質を評価します。

*中枢感作:痛みが長く続くことで痛みを伝える神経に誤作動が生じ、本来痛みを感じない状況で痛みを感じたり、わずかな痛みを非常に強い痛みとして感じたりすること。

当院では、下肢アライメント(股関節(こかんせつ)・膝関節・足関節の3点を結ぶ脚の形状)を把握するため、X線検査(レントゲン)では股関節から足までの全体像を撮影しています。これにより、軟骨がすり減っているかどうかだけでなくO脚の有無や程度を確認します。O脚が強いと膝の内側に負担がかかりやすくなるため変形性膝関節症のリスクが高まると考えられており、以後の症状の推移を考えるうえで重要な要素となります。

また“早期OA(osteoarthritis:変形性関節症)”と呼ばれる段階では軟骨のすり減りは発生しておらず、レントゲンで異常がみられないことがあります。しかしすでに関節内では変化が生じている可能性があり、変形性膝関節症を否定することはできません。そのため当院では必要に応じて追加でMRI検査を行い、レントゲンでは分からない半月板の病変の有無などを詳しく調べます。これにより関節内の変化を早期に把握し、症状の進行予防につなげています。

治療を進めるにあたっては、患者さんのバックグラウンドを踏まえることが大切です。同じ年代で似たような症状がある患者さんでも、「毎日ランニングを欠かさずフルマラソンの大会にも出ている」という活動性の高い方もいれば、「基本的に外出時は自転車を利用しておりほとんど歩かない」という方もいます。ご自身が普段どのぐらい動いているか、そして治療でどのぐらい動ける状態になりたいかが重要で、フルマラソンを走りたい方と近所のスーパーまで歩ければよいという方では治療方針がまったく異なってきます。当院では一人ひとりのニーズに合った治療を選択できるよう、問診で詳しく伺っています。

変形性膝関節症の治療は保存的治療(手術以外の治療)と手術に大きく分けられ、下記の選択肢があります。

  • 薬物療法:内服薬、外用薬、関節注射など
  • 理学療法:装具治療、運動療法など
  • 再生医療(APS療法)
  • 手術療法:関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術

痛みの質などを考慮して選択しますが、急を要する症状がなければ基本的に保存的治療からスタートします。

薬物療法

飲み薬、ヒアルロン酸などの関節注射、湿布薬などで痛みを緩和します。痛みが膝関節の内側に限局している場合には、超音波を使った局所注射を施行することもあります。

理学療法

装具治療では、一般的には既成の膝サポーターや外側楔状足底板(がいそくけつじょうそくていばん)(靴の中敷きで外側が厚くなっているもの)などを使って膝を安定させます。当院では、患者さんの下肢アライメントに合わせて、O脚やX脚の歩容を矯正できるようオーダーメイドの装具治療も取り入れており、当院の保存的治療の強みの1つです。

運動療法では、関節への負荷をカバーするために膝周囲の筋肉を鍛える運動や、膝の曲げ伸ばしの可動域を広げる訓練などを提案し、理学療法士がサポートします。当院では運動療法により特化したメディカルフィットネスセンターも院内に併設しており、さまざまなレベルでのスポーツ復帰へ向けてアスレティックトレーナー*のサポートを受けることも可能です。

*日本スポーツ協会認定

先方提供
メディカルフィットネスセンター

再生医療(APS療法)

人が生まれながらに持つ自然治癒力を利用し、炎症の抑制、組織の修復を図る治療法です。患者さん自身の血液から血小板を取り出し、炎症を抑える物質や軟骨を保護する物質を高濃度に抽出して関節内に注射します。2024年3月現在、この治療は保険適用外の自由診療*です。入院が不要で、手術治療よりも身体的負担が少なく済むことがメリットです。薬物療法や理学療法では改善が乏しいものの、手術適応と判断するには早い、手術を受ける決心はつかないといった患者さんにとって、有用な選択肢になり得ると考えています。

*投与は1回となり、当院での費用は税込33万円です(投与日の診察料、採血・注射施術料、技術料、材料費を含む。投与日以外の診療は保険診療)。注射後数日は膝の腫れや痛みが悪化することがありますが、自然に軽快します。期待したほどの効果が得られないこともあり得ます。3年まで痛みを和らげる効果が持続したという報告もありますが、半年程度で効果が薄らぐ場合もあります。

関節鏡手術

皮膚を小さく切開し、関節内に内視鏡と専用器具を挿入して行う手術です。変形性膝関節症の初期ともいえる半月板損傷の修復を主な目的としています。内視鏡治療ですので、体への負担はほかの手術より比較的小さく、特に内側半月板の後根断裂などにはよい適応となります。O脚がある方の場合には、半月板治療だけでは変形性膝関節症の進行を抑える効果が不十分であり、下記の高位脛骨骨切り術と一緒に行うケースもあります。

高位脛骨骨切り術

脛骨(すねの骨)に切れ目を入れて向きを変えることでO脚を矯正し、膝関節内側への荷重ストレスを減らして痛みの軽減を図る手術です。主に活動性の高い患者さんが対象で、手術後は十分なリハビリテーションを要するものの、ランニングや競技レベルのスポーツなど比較的強度の高いスポーツ活動への復帰も目指せます。

人工膝関節置換術

膝関節表面の軟骨がすり減った部分を人工関節に置き換えて、痛みの軽減を図る手術です。日常的な外出や旅行などでの歩行に不自由がない状態を目指す方、ゴルフやレクリエーションレベルのスポーツを楽しみたい方が主な対象になります。関節の傷んだ部分のみを置き換える“単顆置換術”と、関節全体を置き換える“全置換術”があり、重症度や患者さんの活動性、ニーズを考慮して選択します。

下肢アライメントを改善することも手術の目的の1つですが、脚が一直線にまっすぐ伸びた状態が必ずしもその方にとってベストのアライメントとは限りません。当院では患者さん一人ひとりの満足度をより高められるよう、いかにその方の元々のアライメントに近づけるかを重視し、違和感を抑えたより心地よい人工関節の提供に力を注いでいます。

MN

先述のとおり、変形性膝関節症には多くの治療選択肢があります。だからこそ、患者さんにとってよりよい治療を選択するには、症状を見極めるのはもちろん、“患者さん自身がどうなりたいか”が重要な要素になります。当院では、その方の生活スタイルや活動性、膝の痛みが治ったら何をしたいかなど、時間をかけて丁寧にお話を聞く姿勢を大切にしています。患者さんをしっかりと理解することが、その方に合った満足度の高い治療の提供につながると考えています。不安なことや疑問がありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

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  • 北里大学北里研究所病院 整形外科 スポーツクリニック 医長

    岩間 友 先生

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