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子宮体がんと子宮頸がんの検診、予防——早期発見のためにできること

子宮体がんと子宮頸がんの検診、予防——早期発見のためにできること
坂本 育子 先生

地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院 婦人科 部長/ゲノム検査科 部長

坂本 育子 先生

目次
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子宮がん子宮体がん子宮頸がん)は早期発見ができれば、比較的予後がよいがんであるといわれています。本記事では、子宮がんのステージごとの生存率や早期発見のための検査方法について、山梨県立中央病院婦人科部長の坂本(さかもと) 育子(いくこ)先生にお話を伺いました。

子宮体がんが進行すると、初めは子宮体部内(粘膜のみ)に収まっていたがんが、徐々に子宮の筋肉の層に深く食い込みながら広がる、ほかの臓器に遠隔転移する、といったことが起こります。子宮がんの進行の程度を示すステージ分類は、がんの大きさだけでなく、がんがどの程度の深さまで食い込んでいるか、どこまで広がっているかといったことをふまえて判断します。

以下は、子宮体がんにおける大まかなステージ分類です。

子宮体がんにおける大まかなステージ分類

実際には、Ⅰ期のなかでもⅠA期、ⅠB期に分かれるなど、がんの大きさや広がり方によってもう少し細かく分類がなされます。

子宮頸がんも、子宮体がんと同様にどの程度がんが広がっているか、食い込んでいるかという点をふまえて、Ⅰ~Ⅳ期の各ステージに分類されます。

子宮頸がんのステージ分類

このステージ分類も、子宮体がんと同様におおまかなもので、実際にはステージごとにがんの状態によってさらに詳細に分類されています。

どのがんにおいても早期発見が重要ですが、子宮体がん子宮頸がんいずれも、ステージⅢまでに発見し治療を行った場合と、ステージⅣになった段階で発見し治療を行った場合では、生存率の差が顕著になります。子宮体がんと子宮頸がんのステージごとの5年相対生存率*は以下のとおりです。

【子宮体がんの患者さんのステージごとの5年相対生存率】

  • ステージⅠ:96.8%
  • ステージⅡ:91.7%
  • ステージⅢ:72.8%
  • ステージⅣ:22.3%

【子宮頸がんの患者さんのステージごとの5年相対生存率】

  • ステージⅠ:95.0%
  • ステージⅡ:79.6%
  • ステージⅢ:62.0%
  • ステージⅣ:25.0%

出典:国立がん研究センター「2010-2011年5年生存率の主な結果」

ステージⅠ~Ⅲの段階で発見することができれば、子宮体がん、子宮頸がんどちらの場合でも5年相対生存率は60%を超える一方で、ステージⅣとなると大幅に5年相対生存率が下がります。しかし、これは裏を返せばステージⅠ~Ⅲの間に発見できれば、十分治療が可能ながんであるということであり、早期発見の重要性がよく分かるデータではないでしょうか。

*5年相対生存率:生存率は、がんの診断を受けてから一定の期間が経過した時点で生存している方の割合を指し、相対生存率ではほかの死因は除き、がんのみによる死亡を計算している。

では、子宮がんを早期発見するために、どのようなことができるのでしょうか。前ページでも解説したとおり、特に子宮頸がんに関しては、がんになる前段階(前がん病変)の状態がある、子宮の入り口に発生することが多いといった特徴から、きちんと検診を受けることで、より早期発見の可能性が高まるといえます。

現在のところ、国の指針として定められている検診はありませんが、一部の自治体では検診を行っている場合もあります。また、全額自己負担とはなりますが、人間ドックなどで検診を受けることも可能です(当院では実施していません)。

子宮体がんの検診を行う場合には、主に子宮内膜細胞診が実施されます。これは、子宮の内部に細い器具を挿入して子宮内膜の細胞を採取する検査です。この細胞診でがんの疑いが強いと判断された場合には、さらに別の器具を用いて子宮内膜の組織を採取して診断を行ないます。

しかし、高齢の方やお産経験がない方は子宮口が狭くなっており、子宮内部に器具を挿入することが難しい場合があります。そうしたときには、初めに子宮口を広げる処置を行う、麻酔をかけるといった方法で検査を行う、もしくは超音波検査を実施します。子宮体がんを発症すると、子宮内膜が厚くなることが多いため、超音波検査によって子宮内膜の厚さを測って判断します。しかし、閉経前では判断が難しい、初期のがんは検出しづらいという問題点があるため、やはりもっとも望ましいのは子宮内膜細胞診です。

子宮頸がんの検診では、20歳以上の場合は検診費用を各自治体で負担*してもらうことができます。検診の内容は子宮頸部の細胞診と内診、問診、視診です。

細胞診では、子宮の入り口付近の頸部をへらやブラシでこすって子宮頸部の細胞を採取します。その細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞や前がん病変がないか確認します。

細胞診でがんの疑いがあった場合には、さらにコルポスコピー検査を行うことがあります。この検査は、コルポスコピーという拡大鏡を用いて子宮頸部を観察のうえ、異常が見られる部位の組織を採取するという流れで実施されます。

早期発見のために、たとえ出血などの自覚症状がない場合でも20歳を超えたら2年に一度は検診を受けるようにしましょう。

*負担額は各自治体によって異なります

前ページ子宮頸がんの原因は、主にヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染であると解説しましたが、この感染を予防するHPVワクチンが開発され、現在、世界70か国以上で接種が行われています。HPVワクチンによって約60~70%程度の子宮頸がんを予防できるといわれており、日本でも定期接種化されています。そのため、公費助成による接種が可能です。しかし、ワクチンの接種後に接種部位に痛みや腫れなどをはじめとするさまざまな症状が現れることがあるという報告をうけ、各自治体からの積極的勧奨は差し控えられている状況です。ただ、この多様な症状の原因がワクチンであると完全に証明されたわけではないため、最終的にワクチンを接種するか否かは個人の判断にゆだねられています。いずれにせよ、ワクチンを接種することで得られる効果と起こり得る症状について十分に理解したうえで、ワクチンの接種についてしっかりと検討することが重要です。

子宮体がんは40歳代から、子宮頸がんは20歳代後半から増え始めるなど、子宮がんはほかのがんと比較すると、若年であっても発症しやすいといえます。特に20歳代では、自身ががんになるとは考えもしない、という方がほとんどではないでしょうか。しかし、若いうちから自分の健康に目を向け、定期的に検査を受けることは、子宮がんの早期発見につながります。

ステージごとの5年相対生存率からも分かるように、子宮がんは早期発見さえできれば、治る可能性の高いがんです。そのため、万が一子宮がんを発症した場合でも早期段階で発見し、治療を受けられるよう、定期的に検診を受けることをおすすめします。

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