治療
ネフローゼ症候群の第一選択薬はステロイド薬(プレドニゾロン)です。プレドニゾロンによりたんぱく尿が消失すれば、その後プレドニゾロンを徐々に減量しながら、2~3か月の治療期間で終了します。たんぱく尿が消えるまでは連日プレドニゾロンを服用し、たんぱく尿が陰性化した後、一日ごとのプレドニゾロンの服用に変更します。プレドニゾロンによる高血圧、眼圧上昇に注意しながら使用します。しかし、プレドニゾロンの減量中あるいは中止後早期に、たんぱく尿が増悪・再燃する子どもが少なくない点が問題視されています。
年間4回以上の再発(初発時から半年で初発含め3回)の場合は“頻回再発型”と呼ばれ、プレドニゾロンの減量中もしくは中止後14日以内の再発が連続した場合を“ステロイド依存性”と定義します。頻回再発型/ステロイド依存性は、小児特発性ネフローゼ症候群の30~40%を占めます。一方、幸いにも一度も再発を経験しない子どもは、20~30%程度にとどまります。頻回再発型/ステロイド依存性、あるいはステロイド抵抗性の子どもに対しては、ステロイド薬をより長期的に使用する必要性に迫られ、ステロイド薬の副作用(低身長、緑内症、肥満、高血圧、糖尿病、白内障、感染症、骨粗鬆症など)の問題に少なからず直面します。
これらの難治性の子どもの場合、再発を減らし、ステロイド薬の副作用を軽減することが大切であり、免疫抑制薬や生物学的製剤の治療を行います。日本で使用可能な免疫抑制薬としてミゾリビン、シクロホスファミド、シクロスポリンなどがあり、効果と副作用を考慮して選択します。ミコフェノール酸モフェチルやタクロリムスも保険適応外ですが使用されることもあります。
これらの薬剤を使用して再発の防止が困難な子どもや薬剤の副作用が問題となる子どもには、リツキシマブという生物学的製剤(点滴投与)を使用することもあります。日本においては、2014年に世界に先駆けて小児難治性ネフローゼ症候群への適応が認可されています。
食事や日常生活の制限は最小限にすべきでしょう。たんぱく尿が陽性の間は塩分制限をしますが、水分制限は原則的には不要であり、過剰な安静もまた血栓症のリスクを増やす可能性があり避けるべきです。たんぱく尿が陰性の間は、運動制限や食事制限はありません。
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