インタビュー

ステロイドとはどのような薬か? ―抗菌薬、抗真菌薬など様々な皮膚科外用薬の特徴 

ステロイドとはどのような薬か? ―抗菌薬、抗真菌薬など様々な皮膚科外用薬の特徴 
竹腰 知紀 先生

国際医療福祉大学三田病院 皮膚科講師

竹腰 知紀 先生

この記事の最終更新は2016年07月05日です。

記事1『皮膚科の薬の種類と特徴―処方される薬の基礎知識を紹介』では、皮膚科外用薬の基材や種類などをご説明しました。今回は、外用薬で主に用いられるステロイド(抗炎症薬)、抗菌薬、抗真菌薬についてそれぞれお話します。使われるケースが多いステロイドを中心に、様々な皮膚科外用薬の種類について国際医療福祉大学三田病院皮膚科講師の竹腰知紀先生にお話しいただきました。

ステロイドとは副腎からつくられる副腎皮質ホルモンの一種です。

皮膚科診療・治療において重要なポジションを占めているのが副腎皮質ステロイドであり、多くは外用薬として用いられます。炎症・アレルギー反応を抑制する働きがあり、いわゆる「かぶれ」など多くの炎症性皮膚疾患の治療に用いられています。とても有用な薬ではありますが、長期にわたって不適切な使用を行うと副作用が生じてしまうこともありますので、医師の指示に従って適切に使用することが大切です。

様々な情報が流れる中で「ステロイドは怖い薬」と思ってしまい、ステロイド外用薬に拒否的な反応をされる患者さんもときどきいらっしゃいます。また、「できるだけステロイドを塗る期間を最小限にしたい」という思いからか、治りきる前に塗ることをやめてしまう患者さんもしばしばお見かけします。

しかし、そういったやり方はかえって湿疹を慢性化させ、当初使用していた薬よりも強いステロイド外用薬を長めに塗布しないと治らないという状態になってしまうことも珍しくありません。どのような薬も適切に使用すれば薬になりますし、不適切に使用すれば残念な結果になってしまいます。ステロイドも他の薬と同様、そういった側面はありますので、正しくご理解いただき、できるだけ最小限の負担で最大限の効果を得られるようにしていただければと思います。

なお、ステロイドはその薬効の強さにより5段階のグレードに分類されています。(Strongest>Very Strong>Strong>mild>Weak)

顔面や陰部では、ステロイドの吸収率が高いため、mildクラス以下の弱いものを処方することが多いです。ただし、現在ではWeakのステロイドはほとんど処方されていません。

  • ジフロラゾン酢酸エステル
  • 酪酸ブロピオン酸ベタメタゾン
  • フルオシノニド
  • ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
  • ジフルプレドナート
  • アムシノニド
  • 吉草酸ジフルコルトロン
  • 酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン
  • プロピオン酸デキサメタゾン
  • デキサメタゾン吉草酸エステル
  • ハルシノニド
  • ベタメタゾン吉草酸エステル
  • ぺクロメタゾンプロピオン酸エステル
  • フルオシノロンアセトニド
  • トリアムシノロンアセトニド
  • アルクロメタゾンプロピオン酸エステル
  • クロベタゾン酪酸エステル
  • ヒドロコルチゾン酪酸エステル
  • デキサメタゾン

ステロイドはあらゆる炎症を強力に抑制します。湿疹などの皮膚炎症性疾患では、ステロイドは主に外用療法として使用されています。つまり皮膚炎症性疾患の治療において、ステロイド外用薬は第一に検討すべき治療法の一つです。

ステロイド外用薬を長期に使用した場合の副作用として、皮膚が薄くなる、毛細血管が目立つようになるなどがあります。

適切な強さのステロイド外用薬を、適切な場所に、適切な期間外用することが大切です。ステロイド内用で起こる全身的な副作用(骨粗しょう症のリスクなど)は、強い外用薬を長期に全身的に外用するといった特殊な状況を除き、通常の使用では滅多に起きるものではありません。

重症度や病気の種類、急性期か慢性期かなどによって薬を使い分けます。

例えば薬疹など、全身に重い皮疹が生じる病気の場合、急性期(多くは1~2週間ほど)に強いランクの外用薬(ストロンゲスト、ベリーストロングなど)を1日2回の頻度で外用します。急性期の症状が落ち着いてきたら、弱いランクの外用薬に切り替えたり、あるいは症状が治まってしまったと判断される場合はそのまま中止したりすることもあります。

(薬疹の詳細については横浜市立大学皮膚科教授 相原道子先生記事『薬疹とは。薬剤によって発症する皮膚疾患』を参照ください)

また、慢性的に湿疹を繰り返している病変(病気が原因で変化が生じている部分)では、症状を抑えられると判断されるランクにあたる外用薬を、症状がきちんと治まるまで外用します。ときには数週間にわたって外用が必要な場合もありますし、症状が改善した後も弱いランクの外用薬に切り替えながら症状をきちんと治療させていく方法をとることもあります。

顔面や陰部など、ステロイドの吸収がよい部位ではmildクラスの外用薬を使用することが多くなりますし、小児などでは、成人と比較して1ランク弱い薬を使用するのが原則です。

内用ステロイドは、全身性のアレルギー性疾患や自己免疫性疾患、また炎症性皮膚疾患のなかでも炎症が強く広範囲にわたるなどの場合に用いられます。薬の用量により効果の調節を行うことができます。一定期間以上の内用で様々な副作用のリスクが出現してくるため、長期に内用する可能性が予想される場合はあらかじめ予防策を講じることがあります。

一方、外用ステロイドは皮膚の局所に限局した炎症性皮膚の病変において非常に有用ですが、作用箇所が限定されています。そのため、通常の使用においては、ステロイドの長期内服でみられる全身的な副作用は非常に少なくて済みます。

また最近、皮膚においてはステロイドとしての作用を発揮するものの、血液内に入ると分解されてステロイドとしての効果が著しく低下する外用薬(アンテドラッグと呼びます)なども開発されてきており、外用薬による副作用のリスクをさらに下げる努力がなされています。

炎症性皮膚疾患であれば一般的には第一に外用ステロイドの使用が検討されますが、その中でも身近な疾患として以下の疾患・症状を挙げます。これらは、ご本人やご家族などが経験されたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

アトピー性皮膚炎

・接触性皮膚炎かぶれ

乾癬

・脂漏性湿疹

虫刺症虫刺され

手湿疹(手あれ)

・皮脂欠乏性湿疹(乾燥肌かゆみ、湿疹)

抗菌薬とは細菌に対する薬のことを指すため、ウイルスには効きません。おできとびひにきび、指の腫れなどの治療に使用されます。ブドウ球菌やアクネ菌など、原因となっている菌を抑えることで赤みや腫れといった感染症状を改善します。細菌による皮膚感染症治療全般に用いられる薬です。

抗真菌薬は真菌(カビ)に作用する薬です。真菌による感染症は真菌症と呼ばれ、代表例として白癬(一般的には水虫・たむしと呼ばれます)があります。外用薬が適応されるのは、表在性真菌症、および一部の深在性皮膚真菌症までとなります。

表在性真菌症

・真菌による皮膚感染が皮膚表面や角質で留まっている状態

・外用薬として塗り薬を使用することが多い

深在性皮膚真菌症

・真菌による感染が皮下組織や爪などにも進行してしまっている状態

・外用薬で治療可能な場合もあるが、治療困難な場合、内服薬を使うことがある

 

 

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