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小児ネフローゼ症候群

最終更新日
2020年10月05日
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2020/10/05
更新しました

概要

ネフローゼ症候群とは、血液中のたんぱく質が尿中に大量に漏れ出てしまい(たんぱく尿)、血液中のたんぱく質の濃度が低下した結果、尿の量が減り、体がむくむ病気です。

小児ネフローゼ症候群では、“特発性ネフローゼ症候群”がもっとも多く、全体の約90%を占めています。特発性ネフローゼ症候群とは、ネフローゼ症候群を引き起こした原因を特定できないものを指します。

小児特発性ネフローゼ症候群は、日本で年間1,000人ほど新規に発生していて、小児10万人あたり6.5人の頻度です。2:1の割合で男子に多く、1~3歳での発症が最多となります。小児においては“微小変化型”と呼ばれる病態が90~95%を占め、巣状分節性糸球体硬化症が5~10%を占めます。小児特発性ネフローゼ症候群は頻度の高い小児腎疾患ですが、その原因は解明されていません。

小児微小変化型ネフローゼ症候群は、ステロイド薬(プレドニゾロン)に対する反応性が良好であり、約90%の患者さんはプレドニゾロン開始後平均7日程度でたんぱく尿が消失します。しかし中にはプレドニゾロンに反応しない例(4週間以上反応しない場合をステロイド抵抗性と呼ぶ)や頻回に再発(たんぱく尿が出現)する例もあり、この場合には免疫抑制薬などの追加治療が必要です。

何度再発を繰り返しても、ステロイド薬に速やかに反応する場合は、腎機能が低下し透析腎移植が必要になることは殆どありません。しかしながら、小児微小変化型ネフローゼ症候群の約20%の患者さんは、成人期に移行し継続的な治療を必要としています。

原因

ネフローゼ症候群はその原因から、3つに分類されます。

  1.  真の原因が不明である“特発性(原発性)ネフローゼ症候群”
     
  2.  糸球体腎炎(IgA腎症紫斑病性腎炎、膜性腎症、ループス腎炎など)などの腎臓の病気により、たんぱく尿、血尿、身体のむくみ、高血圧などを呈する“続発性(二次性)ネフローゼ症候群”
     
  3.  生まれつき遺伝子に異常があって、生まれた直後や乳幼児期にたんぱく尿が出現し、やがて腎不全になることが多い“先天性/遺伝性ネフローゼ症候群”(極めてまれ)。

原因が何であれ、ネフローゼ症候群で見られる“たんぱく尿”は、腎臓の障害により引き起こされています。腎臓は血液中の老廃物や余分な水分、イオンをろ過して、体外(尿)に捨てるはたらきを持っています。これは、腎臓内の “糸球体”と呼ばれる部位が、血液をろ過して尿を作ることによって担われています。たんぱく質は生命の維持に重要な物質であるため、正常の糸球体においては、たんぱく質は尿中に漏れ出ない仕組みがあります。しかしネフローゼ症候群では、糸球体の細胞や構造に異常が生じ、たんぱく質が血管から尿に漏れ出てしまい、血液中のたんぱく質が低下してしまうのです。

症状

ネフローゼ症候群においては、たんぱく質が尿中に漏出することで症状が出現します。血液中のたんぱく質は、血管の中に水分を留めておく作用があります(浸透圧)。血液中のたんぱく質が減少すると、血管の外に水分が逃げてしまい、その結果として身体がむくみます。まぶたや顔や足などは、むくみが目立ちやすい部位ですが、全身のむくみをきたすこともあり、体重も増加します。また、尿量減少、胸水、腹水、さらに消化管のむくみで腸の動きが悪くなると、吐き気、腹痛、下痢、食欲低下などが起きます。

ネフローゼ症候群で尿中に失われるたんぱく質には、抗体などの免疫機能に関わるたんぱく質や、血液が固まる反応に関わるたんぱく質も含まれています。そのため、肺炎胃腸炎などの感染症、血栓症が生じることもあります。一方、小児は幼稚園や学校の検尿などで偶然診断される場合もあります。

検査・診断

尿検査と血液検査を行い、基準以上の量のたんぱく尿と基準以下の血液中のたんぱく濃度(アルブミン)の2つより、ネフローゼ症候群と診断します。さらに、臨床症状、経過なども合わせて“特発性”、“続発性”、“先天性”のいずれかであるかを判断します。

成人のネフローゼ症候群の原因はさまざまであり、治療を開始する前に腎臓の組織を確認する腎生検という検査が行われることがほとんどです。しかし、小児ネフローゼ症候群は“特発性ネフローゼ症候群”が大多数を占め、その多くは“微小変化型”です。また、前に述べたように微小変化型にはステロイド薬(プレドニゾロン)がよく効くことが殆どです。そのため、小児で微小変化型が強く疑われる際には、腎生検を行わずプレドニゾロンによる治療を先行させます。一方、プレドニゾロンに治療抵抗性の場合、続発性や遺伝性のネフローゼ症候群が疑われる場合には、腎生検を実施し治療法を検討します。

治療

ネフローゼ症候群の第一選択薬はステロイド薬(プレドニゾロン)です。プレドニゾロンによりたんぱく尿が消失すれば、その後プレドニゾロンを徐々に減量しながら、2~3か月の治療期間で終了します。たんぱく尿が消えるまでは連日プレドニゾロンを服用し、たんぱく尿が陰性化した後、一日ごとのプレドニゾロンの服用に変更します。プレドニゾロンによる高血圧、眼圧上昇に注意しながら使用します。しかし、プレドニゾロンの減量中あるいは中止後早期に、たんぱく尿が増悪・再燃する子どもが少なくない点が問題視されています。

年間4回以上の再発(初発時から半年で初発含め3回)の場合は“頻回再発型”と呼ばれ、プレドニゾロンの減量中もしくは中止後14日以内の再発が連続した場合を“ステロイド依存性”と定義します。頻回再発型/ステロイド依存性は、小児特発性ネフローゼ症候群の30~40%を占めます。一方、幸いにも一度も再発を経験しない子どもは、20~30%程度にとどまります。頻回再発型/ステロイド依存性、あるいはステロイド抵抗性の子どもに対しては、ステロイド薬をより長期的に使用する必要性に迫られ、ステロイド薬の副作用(低身長、緑内症、肥満、高血圧、糖尿病白内障、感染症、骨粗鬆症など)の問題に少なからず直面します。

これらの難治性の子どもの場合、再発を減らし、ステロイド薬の副作用を軽減することが大切であり、免疫抑制薬や生物学的製剤の治療を行います。日本で使用可能な免疫抑制薬としてミゾリビン、シクロホスファミド、シクロスポリンなどがあり、効果と副作用を考慮して選択します。ミコフェノール酸モフェチルやタクロリムスも保険適応外ですが使用されることもあります。

これらの薬剤を使用して再発の防止が困難な子どもや薬剤の副作用が問題となる子どもには、リツキシマブという生物学的製剤(点滴投与)を使用することもあります。日本においては、2014年に世界に先駆けて小児難治性ネフローゼ症候群への適応が認可されています。

食事や日常生活の制限は最小限にすべきでしょう。たんぱく尿が陽性の間は塩分制限をしますが、水分制限は原則的には不要であり、過剰な安静もまた血栓症のリスクを増やす可能性があり避けるべきです。たんぱく尿が陰性の間は、運動制限や食事制限はありません。

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