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インタビュー

小児の蛋白尿について

小児の蛋白尿について
伊藤 秀一 先生

横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授

伊藤 秀一 先生

増澤 祐子 先生

横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学)

増澤 祐子 先生

小児の血尿について」に続いて、この記事では小児の蛋白尿について、横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授の伊藤秀一先生、同教室の増澤祐子先生に解説していただきます。

尿に蛋白が混じっている状態を「蛋白尿」といいます。尿の見た目では蛋白尿の判断は難しいので、3歳児検尿や学校検尿などで指摘される場合が多いでしょう。

最も正確な蛋白尿の評価方法は、24時間尿をためて1日の蛋白量を測定する方法です。しかし、おむつをしている小さなお子さんや、幼稚園や学校に通っているお子さんでは1日の尿を全てためるのは現実的には難しいので、実際には朝起きた時にとった尿や、受診した時の尿から蛋白尿を評価しています。

蛋白尿検査の方法としては、試験紙などで調べる定性法と、実際に蛋白の濃度を測定する定量法があります。定性法は試験紙の色調により−、±、1+、2+、3+、4+などに分けられます。簡便に検査できるので一次検査に用いられますが、あくまでも検査に用いた尿の蛋白濃度を示しているだけであり、その時の尿の濃さによって影響を受けてしまいます。すなわち水分を沢山取ったあとに検査を受けると、尿は薄まるため蛋白の濃度は低めに出てしまいます。

そのため、一次検査で蛋白尿を指摘された場合には、蛋白の実際の濃度を測定します。定量法といって、mg単位で具体的な量を測定する方法です。そして尿の濃さを補正するため、1回の尿の蛋白濃度を尿中のクレアチニンという物質(一日に排出される量がほぼ一定の物質)で割り算して1日の尿蛋白量を評価します。これは尿中蛋白・クレアチニン比と呼ばれ、1日の尿の蛋白量とほぼ等しく、どんな時の尿でも一定の評価が可能となります。尿中蛋白・クレアチニン比は0.15以下が正常で、1.0を超えれば高度蛋白尿と考えられています。

病気ではなく治療の必要のない生理的蛋白尿と、病的蛋白尿に分類されます。

運動、発熱、脱水などによって蛋白尿が出ることがありますが、その場合は治療の必要はありません。特に体位性蛋白尿は、学校検尿で見つかる症状のない蛋白尿の大部分(20~40%)を占めるとも報告されています。

体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)

思春期のやせ型のお子さんに多くみられる良性の蛋白尿です。やせ型の体型のために、腎臓が体内で動いてしまい蛋白尿が生じると考えられています。特徴的なのは、横になって安静にしている時には異常がなく、起きて体を動かすと(起立した体勢になると)蛋白尿がみられることです。つまり、朝起きた時にとった尿(早朝尿)では蛋白は出ていないにも関わらず、活動を始めてからは蛋白尿が陽性となります。運動や体位により尿への蛋白の排泄が増えるために起こり、特に治療の必要はありません。

体位性蛋白尿を疑った場合には、ご家族に尿試験紙を購入してもらい、1週間程度寝る前に排尿してから採取した早朝尿と学校から帰宅後の尿検査を行っていただいて比較することもあります。この場合、帰宅後の尿のみで蛋白尿が観察されます。また、体位性蛋白尿を判断するため、外来で検査する時にも早朝尿と来院時の尿を両方検査することがあります。

病的蛋白尿は原因によって腎前性、腎性(糸球体性、尿細管性)にわけられます。

腎前性蛋白尿

腎臓以外の病気などで多量の不要な蛋白が血液中に生じて、それが尿に流れ出てきたものをいいます。極めてまれですが、多発性骨髄腫白血病、溶血などがあります。

腎性蛋白尿(糸球体性、尿細管性)

腎臓は血液をきれいにする臓器なので、たくさんの血液が腎臓を通ります。尿は、まず腎臓の糸球体というところで血液からこしとられ(濾過され)、次に尿細管という部分で調整されて作られています。

腎臓の糸球体が原因で起こる蛋白尿を糸球体性蛋白尿、尿細管が原因で起こるものを尿細管性蛋白尿といいます。検出される蛋白の種類などから判断します。

糸球体性蛋白尿が検出された場合には、腎炎(正確には糸球体腎炎と言います)やネフローゼ症候群の可能性があるため精密検査が必要です。蛋白尿の量、持続期間、蛋白尿の他に症状があるかなども考慮します。腎炎やネフローゼ症候群の場合には、蛋白尿そのものが腎臓のはたらきを悪化させます。ちなみに、血尿は腎臓のはたらきを悪化させることはありません。そのため血尿でなく蛋白尿が、腎炎やネフローゼ症候群の治療を行うかの判断や治療の効果判定に用いられています。

尿細管性蛋白尿が検出された場合にも、蛋白尿の原因の精密検査や経過観察が必要となります。腎臓が生まれつき低形成でないか、腎臓の奇形がないか、腎瘢痕(尿路感染症などにより腎臓が傷ついていること)がないかなどの確認のため腹部超音波検査などの画像検査を行う場合もあります。

糸球体と尿細管

 

蛋白尿と血尿の両方がある場合、最終的に60%以上が慢性の腎炎(糸球体性腎炎)であると報告されています。腎炎は将来的に腎臓のはたらきが悪くなる場合がありますが、早期発見し早期に治療することで腎臓のはたらきが悪くなるのを防ぐ事ができます。そのため、蛋白尿・血尿が続く場合は専門施設での精密検査(腎生検など)が必要です(参考記事:「小児の糸球体腎炎とは 急性と慢性それぞれの特徴」)。

小児でも成人でも慢性腎炎(慢性糸球体性腎炎)のうち最も頻度が高いのはIgA腎症で、我が国ではその70%が学校検尿で無症状のうちに発見されています。 蛋白尿と血尿の両方を検診などで指摘された場合はきちんと通院し、主治医の先生によく相談して下さい。

〈参考文献〉
・血尿診断ガイドライン2013 編集:血尿診断ガイドライン編集委員会(日本腎臓学会、日本泌尿器科学会、日本小児腎臓病学会、日本臨床検査医学会、日本臨床衛生検査技師会)
・小児の検尿マニュアル 編集:日本小児腎臓病学会、診断と治療社
・国立成育医療研究センターBookシリーズ 子供の腎炎・ネフローゼ (五十嵐隆 監修、伊藤秀一 編)

〈参考リンク〉 横浜市立大学 発生成育小児医療学教室(小児科学) ウェブサイト

 

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