腎不全とはどのような状態なのでしょうか。そして、特に小児の腎不全にはどのような特徴があるのでしょうか。小児の腎不全診療において豊富な経験を持つ横浜市立大学小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授の伊藤秀一先生、横浜市立大学付属市民総合医療センター小児総合医療センター助教の稲葉彩先生に解説していただきます。
腎臓の主な働きとしては、以下が挙げられます。
腎臓の病気などにより腎臓の障害が進行した結果腎機能が悪くなってくると、これらの働きが障害されるため、いろいろな問題が引き起こされます。このような、腎臓の働きが低下し体の水分量や電解質などの正しい維持が困難になった状態を、腎不全と呼びます。
腎不全になると、老廃物が体の中に異常に蓄積した結果めまいや頭痛、嘔気などの症状が現れたり(こうした症状を尿毒症といいます)、体の中の水分が過剰となる事で体がむくんだり血圧が高くなったりします。ひどくなると心臓に負担がかかったり、肺に水がたまる事で呼吸が苦しくなる場合もあります。また電解質の異常により不整脈が生じる場合もあります。その他赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌する働きが弱くなるため貧血が現れ(腎性貧血といいます)、骨を作るビタミンDが不足する事で骨がもろくなります(腎性骨症といいます)。
15歳以下の小児では、毎年50-60例が末期腎不全(「小児の透析療法について」参照)に至っています。小児の慢性腎不全の原因となる病気は生まれつきの腎臓の病気によるものが多く、先天性腎異形成/低形成やその他の腎尿路奇形が約1/3を占めています。後天的な腎臓の病気では難治性ネフローゼ症候群の代表疾患である巣状分節性糸球体硬化症が最も多く、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などの慢性糸球体腎炎はすべてを合わせても全体の10%程度です。
腎不全に至ると、ある程度までは食生活の改善や薬などで治療できますが、さらに進行してくるとこれらの治療では追いつかなくなり、自分の腎臓の代わりとなる治療法(腎代替療法といいます)が必要になります。この状態を末期腎不全といいます。腎代替療法には血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの方法があります。それぞれの治療の特徴とライフスタイルに合わせてこれらの治療を比較し、個々にあった治療を選択します。
〈参考文献〉 国立成育医療研究センターBookシリーズ 子供の腎炎・ネフローゼ (五十嵐隆 監修、伊藤秀一 編)
〈参考リンク〉 横浜市立大学 発生成育小児医療学教室(小児科学) ウェブサイト
横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授
横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授
日本小児科学会 小児科専門医日本腎臓学会 腎臓専門医日本リウマチ学会 リウマチ専門医・リウマチ指導医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
1993年に横浜市立大学医学部を卒業後、神奈川県立子供医療センター小児科レジデントとなる。藤沢市民病院小児科フェローを経て、横浜市立大学医学部大学院にて小児科学を研究。東京都立清瀬小児病院 腎臓内科フェロー、横浜市立大学付属市民総合医療センター助手、国立成育医療研究センター腎臓科医長等を経て、2014年より横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学(小児科学)主任教授。後進の指導とともに、主にネフローゼ症候群などの小児の腎臓やリウマチ疾患を専門として診療にあたる。また、これらの難病に対する薬剤の開発や治療法の確立、原因不明の病気の解明に力を注いでいる。
伊藤 秀一 先生の所属医療機関
稲葉 彩 先生の所属医療機関
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