インタビュー

小児ネフローゼ症候群の原因と検査

小児ネフローゼ症候群の原因と検査
伊藤 秀一 先生

横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授

伊藤 秀一 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター

神垣 佑 先生

この記事の最終更新は2016年05月12日です。

 腎臓には糸球体という毛細血管が集まった球形の構造体があります。糸球体内の血管は特殊な構造をしていて、血管内の水分や老廃物が血管外にこし出され、それが尿のもとになります。(詳細は別項のタンパク尿の項目を御参照下さい)。

正常な状態では老廃物や水分のみがこし出され、タンパクが血管の外に漏れる事はありません。しかし、ネフローゼ症候群では、その血管の側の壁(スリット膜と呼ばれます)が壊れてしまい、タンパク質が血管から尿の方へ漏れ出て行ってしまい、血液中のタンパク質が低下してしまいます。

 スリット膜が壊れてしまう本当の原因はまだ解明されていませんが、免疫の異常が関わっているのではないかと考えられています。病原体や癌細胞から体を守る働きをする白血球が、スリット膜を破壊する物質を分泌するのではないかと考えられており、この謎の物質を探すために世界中の研究者が努力していますが、未だに発見されていません。ネフローゼ症候群の治療においては白血球に作用するステロイドや免疫抑制薬が有効な事や風邪をひいて免疫が活性化すると再発する事などは、病気の原因の一端を示す現象です。今後、原因・病態解明がなされれば、根本治療につながる可能性が高いため、今後の研究の発展が期待されています。

尿検査と血液検査を行い、基準以上のタンパク尿と基準以下の血液中のタンパク濃度(アルブミン)の二つより、ネフローゼ症候群と診断します。さらに、臨床症状、経過なども合わせて「特発性」、「続発性」のどちらがより考えられるか判断します。

「特発性」と「続発性」では治療の種類や期間が異なるため、「特発性」では見られない1歳未満の低年齢の発症、血尿、腎機能障害、高血圧、血清の補体価の低下、皮疹・発熱などの腎外症状、などの先天性ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎による「続発性」を疑うべき所見があるときには、必ず腎生検(細い針で腎臓の組織を採取する検査)を行い、診断を確定した後に治療を開始します。一方、「特発性」を疑った際は、その多くは「微小変化型」であり、ステロイドが良く効くことが分かっているため、腎生検は初めから行わず、ステロイドの治療を開始します。一般的に1週間程度でタンパク尿が陰性化すれば「特発性」と診断して良い事になっています。一方、4週間の連日のステロイド治療を行っても、タンパク尿が持続する場合は、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と定義され、腎生検で組織所見を確認し、次の治療を選択します。

 

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