末期腎不全において、「小児の透析療法について」でご説明した透析療法のほか、腎移植が行われる場合があります。小児の腎移植はどのようなものなのでしょうか。また、透析療法と腎移植はどのように選択されるのでしょうか。引き続き、横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授の伊藤秀一先生、横浜市立大学付属市民総合医療センター 小児総合医療センター 助教の稲葉彩先生に解説していただきます。
腎移植は新しく腎臓を移植する事で腎臓の行う機能の全てを置き換える事が出来る事が出来る根本的な治療です。小さなお子さんでも体重が10kg以上あれば移植を行う事ができます。
移植に患者さんのご家族の腎臓を移植する生体腎移植と、亡くなられた方の腎臓を移植する献腎移植がありますが、わが国では献腎移植を受けられる機会は非常に少なく、移植の大半は生体腎移植であるのが現状です。
腎移植のメリットとしては主に以下が挙げられます。
一方腎移植の合併症としては、以下のようなものがあります。
腎移植が成功すれば毎日の透析から解放され腎不全の合併症も改善され、生活の制限や透析時間の束縛もほとんどなくなります。しかし腎移植が成功しいったん腎機能が回復しても、年数がたつにつれ徐々に慢性拒絶反応などにより徐々に腎機能が低下して、再び腎不全となり透析に戻る、あるいは再移植を必要とする可能性もあります。
小児の腎不全に対する腎代替療法には血液透析と腹膜透析、腎移植があり、それぞれに利点と欠点があります(表)。
一般には透析療法はあくまでもつなぎの治療であり、お子さんにとっては腎移植が成長、発達の面で望ましい治療と考えられていますが、必ずしも全員にあてはまるわけではりません。それぞれのお子さんや家族にとって一番良いと思われる治療を主治医の先生と相談して、選択していくことになります。
腎不全に対する治療の比較
血液透析腹膜透析腎移植
腎機能悪いままほぼ正常
必要な薬剤慢性腎不全に対する薬剤(貧血、骨代謝異常、高血圧など)免疫抑制薬
生存予後移植に比べ悪い優れている
QOL移植に比べ悪い優れている
生活の制約多い(週3回、1回4時間程度の透析治療)やや多い(透析液交換、装置の準備や手間)ほとんどない
食事・飲水の制限
多い
やや多いほとんどない(水を多くとることが必要)
通院回数週3回月に1~2回移植後1年間は月に1回
運動自由(ただし内シャント部の圧迫や衝撃は避ける)カテーテル部の圧迫を避ける移植部の圧迫を避ける以外は自由
旅行通院透析施設の確保が必要透析液、装置の準備が必要自由
〈参考文献〉 国立成育医療研究センターBookシリーズ 子供の腎炎・ネフローゼ (五十嵐隆 監修、伊藤秀一 編)
〈参考リンク〉 横浜市立大学 発生成育小児医療学教室(小児科学) ウェブサイト
横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授
横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授
日本小児科学会 小児科専門医日本腎臓学会 腎臓専門医日本リウマチ学会 リウマチ専門医・リウマチ指導医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
1993年に横浜市立大学医学部を卒業後、神奈川県立子供医療センター小児科レジデントとなる。藤沢市民病院小児科フェローを経て、横浜市立大学医学部大学院にて小児科学を研究。東京都立清瀬小児病院 腎臓内科フェロー、横浜市立大学付属市民総合医療センター助手、国立成育医療研究センター腎臓科医長等を経て、2014年より横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学(小児科学)主任教授。後進の指導とともに、主にネフローゼ症候群などの小児の腎臓やリウマチ疾患を専門として診療にあたる。また、これらの難病に対する薬剤の開発や治療法の確立、原因不明の病気の解明に力を注いでいる。
伊藤 秀一 先生の所属医療機関
稲葉 彩 先生の所属医療機関
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