機能が失われた腎臓の一つを他人の健康な腎臓と入れ替えることで、腎臓の機能を取り戻す治療法である腎臓移植。今回は、移植を行う条件・移植の手順などについて、以下に詳しくご説明します。
腎臓移植とは、機能が失われた腎臓を他人の健康な腎臓と入れ替えることで腎臓の機能を取り戻す治療法で、腎臓の働きを補う治療である腎代替療法(じんだいたいりょうほう:腎臓移植・透析治療などがあります)の1つです。
腎移植は、生体腎移植(せいたいじんいしょく)と献腎移植(けんじんいしょく)の二つに分けられます。
今回は生体腎移植についてご説明します。
腎臓を提供する方をドナー、腎臓の提供を受ける方をレシピエントといいます。
レシピエントは、将来腎代替療法が必要になるであろうという判断をされた時点で、透析療法を受ける前から腎臓移植を受けることができます。(先行的腎移植:せんこうてきじんいしょく といいます。)
先行的腎移植は、安全に行うため遅くとも腎臓の機能が正常の20%程度ある状態でご相談をいただき、機能が正常の15%程度に落ちた状態をめどに計画的に行います。透析療法を経ずに腎臓移植へ移行するため、生命予後(あとどのくらい生きることができるか)を含めた治療成績が最も良いといわれています。
ドナーは、レシピエントからみて
に限られています。
また、「ドナー本人の意思であるということ」「腎臓を提供することで健康なドナーにその後生涯にわたって、身体的にも心理的にも社会的にも不利益があってはならない」ということが前提条件となります。そのため、それらを詳しく調べ、問題ないということを第三者も含めて様々な角度から検討した上で進んで行くことになります。
参考までに、以下が詳しいドナーの条件となっています。
※ ドナー適応基準(生体腎移植ドナーガイドライン 日本腎臓医学会)
※ マージナルドナー基準(安全性を確保した上で)
以下のような手順で腎臓移植を行います。
(1)ドナーとレシピエントの相性をチェックする検査を行います。
相性が悪く移植後に拒絶反応を起こす可能性が高いと判断された場合は、移植を行うことはできませんが、免疫抑制剤や技術の進歩によりたとえABO血液型や白血球型(HLA)が異なっていても移植を行うことが可能になってきています。
(2)ドナー、レシピエントともに、感染症やがんにかかっている場合は移植前にその治療を行う必要があります。よって移植手術の前に、それらの病気がないかどうかを調べる検査を行います。また、病気によっては再発のリスクが高いものもあるため、レシピエントの病歴(現在かかっている病気、過去にかかっとことのある病気、家族がかかった病気など)の確認も行います。
後編の記事では、移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用についてご説明します。
記事1:血液透析患者さんは海外旅行できる?―その準備、注意点について
記事2:腎臓移植とは(前編)—ドナーとレシピエントの条件、移植の手順について
記事3:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について
記事4:透析治療を受けている人はどのような食事をとればいい?
記事5:腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療
記事6:腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意
記事7:腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
記事8:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事9:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事10:慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?
医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血圧内科 客員研究員
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本透析医学会 透析専門医・透析指導医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本高血圧学会 会員
全人的総合的腎不全医療(Total Renal Care:TRC)を推進・普及させるためにアウトリーチ活動を行っている。一人ひとりの腎不全患者が自己管理や行動変容を実現するための教育というミクロなアプローチから、腎不全患者自身がさまざまな治療の選択肢を持てるようにするための社会システム全体の構築というマクロなアプローチも積極的に行っている。
上條 由佳 先生の所属医療機関
石橋 由孝 先生の所属医療機関
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