透析患者さんにとって、食事はとても大切なものです。きちんとした食事を摂り腎臓にかかる負担を軽くすれば、腎不全(腎臓の機能が低下した状態)が進むのをある程度抑えることができます。ここでは、透析患者さんが食事で気をつけるべきポイントについてご説明します。
一番大切なポイントは以下の3つです。
それぞれについて以下に詳しくご説明します。
透析患者さんに限らず腎不全の患者さんにとっては、何よりもまず塩分制限がとても大切です。塩分制限により、腎臓を守ることができるだけではなく、心臓・脳・血管などの合併症も防ぐことができます。
以下の記事で、透析患者さん・腎不全患者さんの塩分制限の大切さについて詳しく説明していますので、是非読んでみてください。
参考記事①:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)
参考記事②:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)
エネルギーのもととなる食品を十分に摂り、エネルギーが不足しないようにしましょう。エネルギーが不足すると、体の中のたんぱく質が代わりに壊されて、筋肉量が減ってしまいます。
炭水化物や揚げ物などでエネルギーを効率的に摂取することができます。
※エネルギー摂取量の目安は、
標準体重[身長(m)2x22]x身体活動量
で計算します。
“身体活動量”は、普段どのくらい身体を動かしているかによって決まる値で、デスクワークをされている方など(“軽い労作”といいます)では25~30、立ち仕事をされている方など(“普通の労作”といいます)では30~35、力仕事をされている方など(“重い労作”といいます)では35~となります。
例えば、身長170cmで立ち仕事をされている方のエネルギー摂取量の目安は
1.7×1.7×22×30=1907 kcal
1.7×1.7×22×35=2225 kcal
なので、1907~2225 kcal程度となります。
タンパク質を摂りすぎると腎臓に負担をかけるため、タンパク質制限は従来から広く行われています。1.3 (g/kg標準体重)以上は、タンパク質の摂りすぎです。
ただ、過度のタンパク質制限は栄養失調を引き起こすため注意が必要となります。担当の先生に十分相談しましょう。
(サルコペニア(sarcopenia)、PEW(protein-energy wasting)、フレイル(frailty)などの低栄養病態が問題となっています。)
安全にタンパク質制限を行う際は、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方がいいことが知られています。
(動物性タンパク質の方が、科学的分析による“アミノ酸スコア”・“消化吸収率の積算スコア”が高いため。)
上で述べた3つのポイントに加え、腎不全が進んできた場合は、以下のようなポイントに気をつけましょう。
腎不全が進むと、カリウムやリンを十分に排泄することができなくなってしまいます。体の中のカリウムの量が増えると(高カリウム血症といいます)、致死的な不整脈を引き起こすこともあります。体の中のカリウムの量が多い場合は、カリウムの摂取を控えるようにしましょう。
以下の食品はカリウムを多く含んでいます。これらの食品を食べ過ぎないように注意しましょう。
また、カリウムを減らすために
などの工夫もあります。参考にしてください。
先に述べましたが、腎不全が進むと、リンを十分に排泄することができなくなってしまいます。体の中のリンの量が増えると、骨や心臓・血管の合併症を引き起こすことがあります。ただし、たんぱく質を摂りすぎないようにしていれば、リンを摂りすぎることもありません。
透析患者さんでは、「体に入る水分の量」と「体から出る水分の量」のバランスがとても大切です。
水分は食べ物や飲み物から体内に入り、尿として体から出ていきます。また、腎臓は体内の余分な水分を、尿として体の外に捨てる働きをしています。よって、腎不全により尿がほとんど出ない透析患者さんは、余分な水分が体にたまっていきます。余分な水分がたまると、その分体重が増加しますし、むくみも出ます。そのたまった余分な水分を透析で取り除くのです。
血液透析を行っている患者さんは透析治療が週3回ですので、透析と透析の間の水分管理に注意しましょう。透析の間の体重増加の目安ですが、
を目安に、摂る水分の量を調節しましょう。
(ドライウエイトとは、体に余分な水分がたまっていない状態での体重です。)
例えば、ドライウエイトが60kgの患者さんは、中2日の透析の場合、
60×5÷100=3 kg 以内の体重増加を目安にしましょう。
記事1:血液透析患者さんは海外旅行できる?―その準備、注意点について
記事2:腎臓移植とは(前編)—ドナーとレシピエントの条件、移植の手順について
記事3:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について
記事4:透析治療を受けている人はどのような食事をとればいい?
記事5:腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療
記事6:腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意
記事7:腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
記事8:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事9:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事10:慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?
医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血圧内科 客員研究員
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本透析医学会 透析専門医・透析指導医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本高血圧学会 会員
全人的総合的腎不全医療(Total Renal Care:TRC)を推進・普及させるためにアウトリーチ活動を行っている。一人ひとりの腎不全患者が自己管理や行動変容を実現するための教育というミクロなアプローチから、腎不全患者自身がさまざまな治療の選択肢を持てるようにするための社会システム全体の構築というマクロなアプローチも積極的に行っている。
上條 由佳 先生の所属医療機関
石橋 由孝 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。