施設で血液透析を行っている患者さんは、医療機関で週3回の透析治療を受ける必要があります。現在は血液透析を行っている患者さんでも、主治医の許可が降りれば海外旅行ができます。
そこで、今回は血液透析を行っている患者さんが海外旅行に行く際の準備・注意点などについて、ご説明します。
血液透析患者さんの海外旅行では、透析施設の予約や必要書類の送付などさまざまなことが必要となるので、しっかりと渡航準備を行うことが大切です。以下流れは一例です。地域にもよりますが参考にしてください。
1.医師へ相談する
身体の状態などによっては海外旅行を許可できない場合があるので、必ず海外旅行へ行くことを主治医に相談して下さい。
2.旅行情報、必要書類を手に入れる
透析専門の海外ツアーなどを取り扱う旅行代理店もあるので、インターネットなどで情報を得ましょう。
3.旅行の日程を立てる
余裕のある日程を組みましょう。時差の関係で週2回の透析治療になってしまうこともあるので、日程を決める際には十分注意して下さい。血液透析では、基本的に必ず週3回の透析治療が必要です。
4.透析施設を確保する(3ヶ月前)
旅行先で透析治療を受けられる病院を確保しましょう。旅行会社が透析施設の予約申し込みを代行してくれるサービスもあります。
5.宿泊施設・航空券を手配する(2ヶ月前)
透析施設からアクセスの良いホテルを手配しましょう。また、当日施設までスムーズに行けるよう、ホテルから施設までの行き方を確認しておきましょう。
6.必要書類の作成を主治医に依頼する(2ヶ月前)
必要書類が旅行代理店から送られてきます。医療情報については主治医が記載しますので、早めに依頼しましょう。
7.必要書類を透析施設へ送付する
8.還付申請書類を入手する
海外での透析治療の費用も還付を受けることができます。自治体によって必要書類が異なりますので、自治体の窓口で確認しておきましょう。還付についてはまた後ほど詳しくご説明します。
出発の前日に透析治療を受けられることが望ましいです。さらに、旅行先との時差を考慮して、旅行中どのように薬を飲めばよいか主治医から指導を受けておきましょう。
また、大手の航空会社では、糖尿病対応食・低塩食などが用意されていますので、事前に申し込んでおくとよいかと思います。
透析治療の費用は、国や地域によってさまざまです。大体の目安としてはアジアで1回3〜5万円、アメリカで4〜5万円、オーストラリアで8万円程度となっていますが、ご確認ください。
支払いは、現地の通貨で治療の初日か最終日にまとめて行うことが多いです。現金での支払いが多く、クレジットカードを利用できる施設は一部だけに限られています。
また、透析治療後に病院から「透析記録書類」が渡されます。透析記録に加えるため、帰国したらこの書類を主治医に渡して下さい。
海外での透析費用の一部は、健康保険の適応となり給付の範囲内で還付されます。健康保険の種類や自治体によって異なるので、旅行前に自治体の窓口で確認しておくとよいでしょう。
還付の申請から給付までの流れは以下の通りです。
主な必要書類は以下の通りです。
4.審査の後、支給額が決定され、申請月から2ヶ月後の月末までに支給されます。
また、渡航先で体調を崩した場合に備えて、医療機関の受診方法や旅行保険を確認しておきましょう。主治医と相談し、可能であれば内服薬や簡単な病歴なども、現地の言語もしくは英語で準備できると更に安心です。なんらかの状態に備えて内服薬は多めに持参しましょう。
無理のない計画で、海外旅行を楽しんでください。
記事1:血液透析患者さんは海外旅行できる?―その準備、注意点について
記事2:腎臓移植とは(前編)—ドナーとレシピエントの条件、移植の手順について
記事3:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について
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記事6:腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意
記事7:腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
記事8:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事9:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
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医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血圧内科 客員研究員
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本透析医学会 透析専門医・透析指導医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本高血圧学会 会員
全人的総合的腎不全医療(Total Renal Care:TRC)を推進・普及させるためにアウトリーチ活動を行っている。一人ひとりの腎不全患者が自己管理や行動変容を実現するための教育というミクロなアプローチから、腎不全患者自身がさまざまな治療の選択肢を持てるようにするための社会システム全体の構築というマクロなアプローチも積極的に行っている。
上條 由佳 先生の所属医療機関
石橋 由孝 先生の所属医療機関
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