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インタビュー

腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について

腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
上條 由佳 先生

日本赤十字社医療センター腎臓内科

上條 由佳 先生

石橋 由孝 先生

日本赤十字社医療センター 腎臓内科部長

石橋 由孝 先生

機能が失われた腎臓の一つを他人の健康な腎臓と入れ替えることで、腎臓の機能を取り戻す治療法である腎臓移植前編では、ドナーとレシピエントの条件、移植の手順についてご説明しました。今回の後編では、ドナー・レシピエントの移植後の生活、移植のメリットやデメリット、移植の費用などについてご説明します。

ほとんどの場合、移植した後は腎臓の機能が回復します。しかし、移植された腎臓はあくまで他人の腎臓であるため、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)という免疫を抑える薬を一生飲み続ける必要があります。

生体腎移植では、健康なドナーにメスを入れる事になります。よって、生体腎移植を行うかどうかの判断は慎重に行わなければいけません。

「腎臓を提供することで健康なドナーにその後生涯にわたって、身体的にも心理的にも社会的にも不利益があってはならない」ということが前提条件になるため、医学的に問題がないかどうかの確認はもちろん、本人の自発的な意思の確認、社会的・精神的にも問題がないかどうかの確認が必要です。

ドナーの手術は、腹腔鏡を用いて行うことが多く開腹手術に比べ、出血量、痛み、入院期間などの面で優れています。手術時間は4時間程度で、手術による合併症は少ないと言われています。医療機関により異なりますが手術後の入院期間は1週間程度です。

移植後は、ドナーの腎臓が1つになるため、残った方の腎臓にかかる負担が大きくなり、高血圧になったり、蛋白尿(たんぱくにょう:腎臓の機能が悪くなることで、尿中に正常以上のタンパクが出てくること)が出てきたりします。よって、塩分制限を行うなど、腎臓にあまり負担をかけないように気をつけていく必要があります。

基本的に、移植後のドナーの腎臓機能が悪くなることはないとされていますが、腎臓が1つになるため、十分な腎機能評価、禁煙、体重・血圧管理、耐糖能、脂質などを含めた総合的評価を行う必要があります。

ドナーにとってもレシピエントにとっても幸せな移植となるよう、定期的に通院を行い、レシピエントだけでなくドナーもきちんとフォローアップを受けるようにしましょう。

透析治療などの他の腎代替療法と比べた、移植のメリット・デメリットをまとめました。

腎臓移植後は、規則正しい生活、免疫抑制剤の服用をきちんと行い、再発や拒絶、感染などがなければ十分な腎臓機能を保つことができます。よって、社会復帰はもちろん、妊娠、スポーツなども問題なく行うことが可能です。また、寿命の面でも透析治療などと比べて優れています。

レシピエントが免疫抑制剤を一生飲み続ける必要があること、ドナー・レシピエントともに手術が必要なことが欠点として挙げられます。
特に生体腎移植に関しては、健康なドナーにメスを入れなければならないことが大きな欠点と言えるでしょう。

以下の表も参考にしてください。

表1 腎移植を含めた腎代替療法の比較〜医学的側面〜

表1 腎移植を含めた腎代替療法の比較〜医学的側面〜

表2 腎移植を含めた腎代替療法の比較〜社会的側面〜

表2 腎移植を含めた腎代替療法の比較〜社会的側面〜

移植した腎臓が正常に機能する確率のことを生着率(せいちゃくりつ)といいます。腎移植での生着率は、免疫抑制剤の進歩に伴って、年々改善されています。

腎移植の生着率ー日本移植学会 臓器移植ファクトブック2014より引用

腎移植の生着率ー日本移植学会 臓器移植ファクトブック2014より引用

上のデータによると近年では、移植から5年後で9割以上、10年後で8割以上のレシピエントの腎臓が正常に機能しています。

最近は免疫抑制剤が進歩してきているので、ドナーとレシピエントでABOの血液型が異なっていても、移植を行うことができます。(その場合、予めレシピエントに存在する抗体の除去(血漿交換・吸着)、免疫抑制療法、抗凝固療法等を行います。)

生体腎移植の場合の費用は、移植前の検査や血漿交換、免疫抑制剤などの種類によっても異なります。

術前に検査したことにより正式に移植が成立した場合は、移植準備などでかかった医療費(保険適応外の部分は除外)が払い戻されます。ただし、何らかの理由で移植が成立しなかった場合は払い戻しがありませんのでご注意ください。また保険適応外の部分の検査に関しては戻ってきませんので医療機関によく聞いてください。

高額医療費の長期特定疾病制度(透析を行っていない患者さんの場合は高額療養費払い戻し制度限度額適用認定証)、身体障害者手帳、自立支援医療、心身障害者医療費助成などの助成制度が利用できます。ただ住所地により利用できる助成制度が異なり、また加入している健康保険によっても内容が大きく異なるため、医療機関や住所地の障害福祉担当窓口までお問い合わせください。

 

記事1:血液透析患者さんは海外旅行できる?―その準備、注意点について
記事2:腎臓移植とは(前編)—ドナーとレシピエントの条件、移植の手順について
記事3:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について
記事4:透析治療を受けている人はどのような食事をとればいい?
記事5:腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療
記事6:腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意
記事7:腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
記事8:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事9:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事10:慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?

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