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インタビュー

腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療

腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療
上條 由佳 先生

日本赤十字社医療センター腎臓内科

上條 由佳 先生

石橋 由孝 先生

日本赤十字社医療センター 腎臓内科部長

石橋 由孝 先生

透析治療には血液透析と腹膜透析(ふくまくとうせき)の2種類あることはご存知ですか? 腹膜透析は、自宅で行うことができ、日常生活やお体への支障が少ない透析治療です。その腹膜透析について、以下に詳しくご説明します。

腎臓には、体内の不要な老廃物や余分な塩分・水分を尿として体の外に捨てる働き、ミネラルバランスの調整・pH(体の中の酸性・アルカリ性のバランス)の調整・血圧の調整をする働き、血液をつくるホルモン・骨に関わるホルモンを作る働きがあり、体全体のバランスを整えています。しかし、病気により腎臓の機能が落ちると、老廃物や水分がたまったり全身のバランスをとることが難しくなります。(腎不全(じんふぜん)といいます。)

そしてこの腎不全が進行すると、腎臓の機能を補う治療である腎代替療法(じんだいたいりょうほう)が必要になります。腎代替療法の一つが「透析治療」であり、これは“腎臓の代わりに体内の不要な老廃物や余分な水分を体の外に捨てる”という治療です。治療ではあるのですが、一方で透析というものは、これまでと同じ生活を続けていただくために、食事でとった老廃物をトイレに毎日行って捨てるのと同様に、生活の一部として行っていただくものになります。よって、患者さん・ご家族にもその内容をしっかり理解していただく必要があります。

透析治療には、腹膜透析と血液透析の2種類があります。今回は、腹膜透析についてご説明します。
参考記事:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について

腹膜透析は、自分の「腹膜」(ふくまく:お腹の中の内臓を覆っている薄い膜)を使って、体内の不要な老廃物や余分な水分を排出し、血液をきれいにする治療法です。自宅で行える透析治療で、通院は月に1〜2回程度で済みます。

腹膜には毛細血管(もうさいけっかん:小さい血管のこと)が張り巡らされており、腹膜透析ではこの毛細血管を利用します。

具体的には、お腹の中に透析液をいれることで、体内の老廃物や水分が毛細血管から透析液へ移動します。そして、この透析液を身体の外に取り出すことで、血液がきれいになるのです。

腹膜透析のしくみ

腹膜透析のしくみ

腹膜透析にはCAPD(ツインバック)とAPDの2種類があります。
腹膜透析では、体内の老廃物や水分がたまった透析液を取り出して、新しい透析液と交換するという作業が必要になるのですが、この2種類にはそれぞれ以下のような特徴があります。

  • ・CAPDは、日中に自分で透析液を交換する方法です。1日に1~4回(回数は、腎臓の機能がどのくらい残っているかによって決まります)交換します。

患者さんの生活スタイルに合わせ生活の中に組み込める、アレンジが効く、透析液・排液バッグ・接続用機器(使う方のみ)があればどこでもできる、重力の差を用いた自然な注排液ができる、などのメリットがあります。
ただし、回数が増えた場合は日中に時間がとられることになります。そのような場合は、APDという方法を用いることができます。

  • APDは、夜寝ている間に機械が自動的に透析液を交換する方法です。注液量や排液量、時間など医師の指示のもと様々にアレンジすることができます。

基本的には夜寝る時間などを利用するため、日中を自由に使えるなどのメリットがあります。また、夜間のトイレなどで起きた場合は一度切り離しをすることが可能です。

CAPDとAPDの治療成績の違いとして明確なものは出ていません。生活スタイルや腎臓の機能(残腎機能:ざんじんきのう といいます)、カテーテルや注排液の状態、など患者さんに合った方法を医師と相談して決めましょう。

APDとCAPD

APDとCAPD

まず腹膜透析を始める時に、透析液を出し入れするためのチューブ(カテーテルといいます)をお腹に埋め込む手術を行います。手術時間は1時間程度で、患者さんには“盲腸の手術+α程度の手術”と説明することが多いです。局所麻酔で行うこともありますが、カテーテルをしっかりとした位置におくために腰椎麻酔や全身麻酔を用いることが多いです。

※1:局所麻酔(きょくしょますい):麻酔をかけたいところに直接麻酔薬を注射することで、部分的に麻酔をかける方法。
※2:腰椎麻酔(ようついますい):腰に針をさし、背骨の中に麻酔薬を注射することで、みぞおちから足あたりに麻酔をかける方法。
※3:全身麻酔(ぜんしんますい):麻酔薬により意識をなくし、痛みを感じないようにする方法。

入院期間は、数日から数週間です。(医療期間での教育プログラムによっても異なります。)ただし、血液をさらさらにする薬を飲んでいる方は、手術の1週間ほど前から入院して(薬によって異なります)薬を変更することになるので、少し入院期間が長くなります。

上で述べたように、CAPDの場合は、透析液を取り出して新しい透析液を注入するという作業(バック交換といいます)をご自身で行って頂く必要があります。ただし、このバック交換は決して難しい作業ではなく、医療従事者の指導を受ければ、どなたでもできるようになります。また、高齢者、身体が不自由な方、視力障害者の場合はサポートを受けることができますので、ご安心下さい。

  1. 体の中の老廃物などが入った透析液を取り出します(排液)。この作業には15分程度かかります。
  2. 新しい透析液をチューブから体の中に注入します(注液)。この作業には10分程度かかります。

バック交換(排液と注液)

バック交換(排液と注液)

上で述べたように、腹膜透析は自宅で行える透析治療で、通院は月に1~2回で済みます。そのため、バック交換の時以外は日常生活を問題なく送ることができ、学校、仕事、旅行なども可能です。

透析治療は特定疾病療養費(とくていしっぺいりょうようひ)という制度の対象となっており、手続きを行えば医療費の自己負担が月1〜2万円となり、腹膜透析で使用する機器のほとんどがその中に含まれます。その他にも様々な助成がありますので、医療従事者に相談してみましょう。

記事1:血液透析患者さんは海外旅行できる?―その準備、注意点について
記事2:腎臓移植とは(前編)—ドナーとレシピエントの条件、移植の手順について
記事3:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について
記事4:透析治療を受けている人はどのような食事をとればいい?
記事5:腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療
記事6:腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意
記事7:腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
記事8:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事9:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事10:慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?

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