慢性腎臓病(CKD)のうち末期腎不全の治療として、より通常の生活に近い質を得ることができるのは腎移植です。子どもの場合も、体重が一定以上であれば大人の腎臓を移植できます。腎移植によって記事3『末期腎不全の子どもの透析方法 腹膜透析と血液透析』でご説明した透析からも解放できる可能性が高まります。子どもの腎移植について、これからの慢性腎臓病(CKD)治療の展望を踏まえて、東京都立小児総合医療センター総合診療科・腎臓内科部長の幡谷浩史先生にお話を伺いました。
体重が10キログラム以上であれば、子どもに大人の腎臓を移植することが可能となります。できる限り早い時期に腎移植を受けて、透析から解放することで、健常児により近い生活を送ることができます。最近では、腎臓の機能が低下している子どもに、透析ではなく直接腎移植をすること(先行的腎移植)も増えています。
発達・学校生活などさまざまな子どもの特性や家族の生活の質(QOL)などを考えると、腎移植のほうが、より通常の生活に近いQOLを得る方法といわれています。しかし腎移植をしても100%の腎機能を再獲得することはできませんし、拒絶など様々な問題も生じます。
腎不全は腎臓を移植したらそれでおしまいではなく、現時点では生涯治療を続ける必要があります。数か月後、数年後に再び腎機能が悪化する可能性もありますし、重症化すると再度透析導入しなければいけない可能性も否定できません。
また、前提として移植はドナー(提供者)がいなければ成り立ちません。基本的に日本の腎移植は生体腎移植(生きている方から腎臓を摘出し移植する方法)であり、ほとんどの場合、ご家族から1つの腎臓をいただきます。ドナーが健康でなければ腎臓の提供はできません。不適合でドナーになれない場合もありますし、無理強いもできません。また、移植腎の機能が一生持続するわけでもありません。腎臓病は一生涯の治療が必要なものとして、どのように腎不全とうまく付き合っていくかを考えていくことが大事です。
慢性腎臓病(CKD)は文字通り慢性の病気であるため、いかに進行を遅らせるかが大事になってきます。しっかりと治療をするか否かで、腎機能低下のスピードは異なります。前項で述べたように、慢性腎臓病(CKD)は末期になっても腎移植すればすべて終わりという病気ではありません。慢性腎臓病(CKD)の治療は透析から移植という段階を踏んで行うものだと考えるのではなく、透析と移植、両者を含めて治療のためのツールであり、全体として考えるのはあくまでも子どもの生活の質であることを忘れないようにしなければなりません。
記事3『末期腎不全の子どもの透析方法 腹膜透析と血液透析』でも触れましたが、慢性腎臓病(CKD)の子どもがどのようにすればできるだけ普通の生活をできるかを第一に考えています。
慢性腎臓病(CKD)の治療法は限られているのが現状で、腎保護のための薬も多くあるわけではありません。不要な制限はしないようにしています。なるべく普通の環境に近いところで生活をしながら、体のバランスをうまくとっていくように調整します。
問題は山積みです。腎不全の合併症などの他に、成人診療科への移行期の問題(移行医療の詳細は『移行医療とは? 小児科と成人の診療科を橋渡しするための医療の仕組み』を参照)もあればその子どもの成長に伴う精神的な問題(友達の目を気にするなど)もありますし、腎移植をした場合、移植後にきちんと薬を飲んでもらうための工夫も必要です。
ただし、未来の慢性腎臓病(CKD)治療は現状にとどまらず、さらに進化していくでしょう。実際、かつては子どもへの腹膜透析も普及していませんでした。将来は、さらにいい治療法が出てくると信じています。
本人や家族が病気を理解し、正しく病気とつきあい、将来を見通した治療選択ができるよう、より早期の段階から情報を共有しながら、治療を進めていく必要があります。慢性腎臓病(CKD)の子どもにとって明るい未来が持てるよう、私たち腎臓内科が子どもたちを支えていきます。
東京都立小児総合医療センター 総合診療科/腎臓・リウマチ膠原病科 部長
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