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腎不全に対するさまざまな透析治療——オーバーナイト透析、在宅透析とは?

腎不全に対するさまざまな透析治療——オーバーナイト透析、在宅透析とは?
藤原 木綿子 先生

愛仁会井上病院 腎臓内科 部長

藤原 木綿子 先生

一居 充 先生

愛仁会井上病院 腎臓内科 部長

一居 充 先生

目次
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腎不全の患者さんが行う治療の1つ、透析治療。病院に足を運んで行う血液透析という方法が知られていますが、病院に宿泊して就寝中に行う“オーバーナイト透析”、自宅に透析装置を置いて自分で行う“在宅透析”など、患者さんの都合やライフスタイルに合わせて行える治療方法があります。

今回は、さまざまな透析治療の方法や病院の取り組みについて、井上病院腎臓内科部長の藤原 木綿子(ふじわら ゆうこ)先生と一居 充(いちい みつる)先生に伺いました。

オーバーナイト透析は就寝中に血液透析を行う方法です。当院の場合、20時頃に来院していただいて着替えなどの準備を済ませ、22時頃から血液透析を開始します。23時にフロアを消灯して就寝、朝6時頃に終了となります。通常の血液透析と同じように通院が必要ですが、特に就労されている方や学生の方にとって、夜間の睡眠時間で透析を受けられることがメリットです。

十分な透析時間が確保できることで、体への負担も軽減されます。透析治療を必要としない健康な方は24時間常に腎臓がはたらいていますが、血液透析では1回4時間程度、週3回の透析で腎臓の機能を果たさなくてはなりません。一方、オーバーナイト透析では1回につき約8時間とゆっくり時間をかけられるため、透析による疲労感や症状の軽減、薬剤の減量が期待できます。

オーバーナイト透析は基本的に、病状の安定した若い方が適応となります。若年の方に対象を絞っているのは、就労や学業が日中の透析治療による影響を受けやすいためです。オーバーナイト透析を始める年齢は60歳前後までとし、退職され時間的に余裕ができる方に関しては日中または夜間透析に移行していただいています。

安全対策のため、病状が安定していることも適応の基準となります。血液透析中の除水による血圧変動が大きい方、心臓の病気がある方など、急な状態変化が起こる可能性がある場合には適応となりません。そのほか、認知症が進行していて長時間の透析がストレスになりやすい方など、事故につながる恐れがある場合もスタッフ数が多い時間帯に透析を行います。

在宅透析とは、ご自宅に透析装置を設置して患者さんが自分で血液透析を行う方法です。患者さんの都合に合わせて、週に5~6回などより多くの透析をすることも可能で、老廃物がしっかりと除去されて薬剤を減らせる方もいらっしゃいます。

血圧の変動などがなく病状が安定していて、自分で装置の管理や透析用の針の穿刺(せんし)ができる、もしくは協力できるご家族がいらっしゃるという方には、在宅透析をおすすめします。透析中にご家族と会話したりテレビを見て過ごしたり、ゆっくりしている時間に行うなど生活リズムに合わせた透析が可能で、QOL(生活の質)の向上も期待できます。

透析の手技を習得するため、在宅透析の導入が可能になるまで1年ほどの通院が必要です。治療にかかる費用は通院して行う血液透析と同じですが、装置を導入する際の水道工事の費用や毎月の水道代などは患者さんの負担となります。また、透析治療をした後の器具やゴミの処理方法はお住まいの自治体によって異なるため確認が必要です。

外来で実施している血液透析には、長時間透析、オンラインHDF、特殊血液浄化療法などがあります。その中でも当院が特に力を入れているのが、長時間透析とオンラインHDFです。

24時間常にはたらいている腎臓の機能を代用する透析治療では、透析時間を長くすることで透析の質の向上が期待できます。そのため当院では、1回6時間の長時間透析も積極的に実施しています。より多くの老廃物を除去することが期待できるほか、ゆっくりと除水ができるため、血圧の変動が少なく体への負担を軽減できるというメリットがあります。

オンラインHDFは、血液透析に加えて補液(透析液の補充)を行い、通常の血液透析では除去しにくい大きな物質を取り除く方法です。透析治療によって生じることがある関節炎かゆみ、イライラ、むずむず脚症候群透析アミロイドーシスなどを予防する効果が期待できます。当院ではオンラインHDFの装置を117台設置し、できる限り多くの患者さんに使用していただけるよう環境を整えています(2021年4月現在)。

特殊血液浄化療法は、特殊な病態に対して必要になることがある治療方法です。持続緩徐式血液透析濾過(じぞくかんじょしきけつえきとうせきろか)(continuous hemodiafiltration:CHDF)と呼ばれる方法は、通常の透析治療では状態の変化を起こしやすい患者さんに対してゆっくりと継続的に透析を行う方法です。単純血漿交換療法(たんじゅんけっしょうこうかんりょうほう)(Plasma Exchange:PE)は、特殊な抗体を持つ病気の患者さんに対して、透析膜のような役割を担う機器を利用して抗体を抜き取り血漿交換する方法です。CHDFやPEを含め、当院ではさまざまな特殊血液浄化療法に対応しています。

透析治療を受けている患者さんでは、手先や足先の血流が滞って潰瘍(かいよう)と呼ばれる傷ができることがあります。強い痛みなどによりADL(日常生活動作)の低下をきたす恐れがあるため、当院ではできるだけ早く血管外科の医師に相談していただくことをおすすめしています。

腎不全の原因となる糖尿病が進行すると、合併症として足の組織が壊死(えし)する足壊疽(あしえそ)をきたすことがあります。足壊疽の予防のためにはフットケア(創傷ケア)が効果的です。当院では、日本フットケア・足病医学会認定のフットケア指導士によるケアを行っています。

腎不全の合併症に、骨が弱くなって骨折しやすくなる骨粗しょう症という病気があります。近年、骨粗しょう症の診断や治療に関する進歩は目覚ましく、骨折の予防に効果的な治療薬も増えています。当院では、透析患者さんの診察にも携わっている整形外科の医師と連携し、患者さんの病態に合わせた治療に努めています。

腎不全は心筋梗塞(しんきんこうそく)脳卒中などの命に関わる病気の危険因子です。当院では、腎不全の患者さんが心筋梗塞や脳卒中を発症した場合に迅速に治療できるよう、近隣の病院と連携を行っています。また、MRI検査やCT検査などの画像検査を気軽に受けられる環境を整え、速やかな合併症の評価に取り組んでいます。

藤原先生

当院では、患者さんが聞きたいこと、知りたいことなどをテーマに講演を行う公開講座“健康教室”を開催しています。その中で“腎不全シリーズ”と題して、腎臓のはたらきや腎不全のこと、透析治療などについてお話ししています。主治医には聞きにくいと感じている方も参加しやすいような会を目指しており、講演の後は直接お話しできる質問回も設けています。患者さんに腎不全や透析治療の理解を深めていただくことが本教室の狙いですので、何でも気軽に質問していただければと思います。

2020年度、2021年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で開催中止となっていますが、今後はホームページで動画を公開し、WEB上に質問コーナーも設ける予定です。ぜひご利用ください。

一居先生

透析治療中の患者さんには、若年から高齢まで幅広い年代の方がいらっしゃいます。若年の方では学業や仕事への影響が大きく、高齢の方では筋力や体力が落ちて通院が難しくなったり周囲の協力が必要になったりと、患者さんによってさまざまなお悩みがあると思います。当院では、患者さん一人ひとりに丁寧で細やかな対応をしていけるよう心がけていますので、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。

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