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透析アミロイドーシス

最終更新日:
2024年11月29日
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2024/11/29
更新しました
2018/08/08
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概要

透析アミロイドーシスとは、長期間にわたって透析治療を受けている患者に合併しやすい、主に関節の痛みや神経症状などを引き起こす病気です。アミロイドーシスとは、アミロイドという異常なタンパク質が形成され臓器に沈着することでさまざまな症状を引き起こす病気の総称で、アミロイドの主成分となるタンパク質によって起こりやすい症状は異なります。

析アミロイドーシスは、β2-マイクログロブリンが主成分となるアミロイドの蓄積と体内の炎症が発症に関与すると考えられており、ほかのアミロイドーシスに比べて腰、手首、肩、膝、背骨の関節や神経の症状が現れやすい点が特徴です。

析アミロイドーシスには軽快が見込める治療方法が乏しいため、発症しないよう予防が重要です。

なお、透析アミロイドーシスは10年以上透析治療を受けていると発症するリスクが高くなるとされていますが、現在では透析技術の進歩により透析アミロイドーシスの発生率は減少していると報告されています。予防方法としては、腎移植のほか、透析療法における生体適合性が高くかつ高フラックス*な透析膜や、高純度透析液の使用、血液ろ過透析システムの採用が挙げられます。

*高フラックス:透析に用いるフィルター(透析膜)には非常に小さな無数の孔が空いており、その穴の大きさが大きいものを高フラックス、小さいものを低フラックスという。高フラックスのものほど、サイズの大きい老廃物を血液から除去できる。

原因

透析アミロイドーシスの発症機序は完全に解明されていませんが、β2-マイクログロブリンという、全ての細胞膜に存在するタンパク質が関与しています。β2-マイクログロブリンが透析治療で除去しきれずに蓄積し、さらに透析治療で生じる体内の炎症などが加わることで、アミロイドの形成が進むと考えられています。

透析アミロイドーシスの原因と危険因子には、以下の4点が挙げられます。

低フラックス透析膜の使用

β2-マイクログロブリンは、透析で除去される老廃物の中でもサイズが大きめであり、低フラックス透析膜では体内から除去されずに蓄積します。

残存する腎機能の低下

残存する腎機能が低い場合もβ2-マイクログロブリンは蓄積しやすくなります。

低生体適合性透析膜と低純度透析液の使用

透析アミロイドーシス発症に関与する炎症は、透析膜の生体への適合性*の良し悪しと、透析液の純度に左右されます。純度が低い透析液には、細菌から放出されるエンドトキシンと呼ばれる物質(細菌の死骸から出る毒素)が含まれ、体内の炎症を促進させるといわれています。

*生体への適合性:透析膜と血液が触れ合う際、透析膜の素材によっては血液中に備わっている炎症システムが反応しやすくなる。このような透析膜は生体適合性が悪い(低い)と表現される。

高齢・長期透析治療(10年以上)

析治療においてβ2-マイクログロブリンの蓄積をゼロにすることは難しいため、透析治療期間が長くなるほど、透析アミロイドーシスは発症しやすくなると考えられています。

症状

透析アミロイドーシスでよくみられる症状としては、指や手首、肩、肘、膝などの関節の痛みと、“手根管症候群”が挙げられます。

手根管症候群は、手首にアミロイドが沈着することで指先の感覚や動きをつかさどる正中神経が圧迫され、手や指のしびれ、痛み、筋肉の萎縮などを引き起こす病気です。また、透析アミロイドーシスは頚椎(けいつい)(首の骨)に発症することもあり、首の痛み、腕のしびれや痛みなどの症状がみられるケースもあります。重症化すると、脊椎が変形・破壊される“破壊性脊椎骨関節症”を引き起こすため、注意が必要です。

そのほか、透析アミロイドーシスは骨の中に袋状の病変(骨嚢胞(こつのうほう))を作るため、些細な刺激でも骨折しやすいといわれています。

一般的に透析アミロイドーシスは関節や骨に発症しますが、進行するとほかの臓器にもアミロイドが沈着して腸炎心不全などを引き起こすこともあります。

検査・診断

透析を長期間受けている患者に、手根管症候群や関節痛のようにアミロイドの蓄積によって生じる特徴的な症状がみられる際は、透析アミロイドーシスを疑います。透析アミロイドーシスが疑われる場合は、以下の検査を行います。

画像検査

症状がある部位の骨や軟骨、腱などの状態を詳しく評価するため、X線、CT、MRIなどで画像検査を行う必要があります。骨の内部に骨嚢胞が認められる場合は、透析アミロイドーシスの可能性が高まります。

血液検査

血液中のβ2-マイクログロブリン濃度を調べます。また、透析アミロイドーシスは関節炎がみられることがあるため、関節炎を引き起こすほかの病気がないかを確認するために、細菌感染の関与を炎症反応や血液培養で検証したり、膠原病(こうげんびょう)や異常な免疫グロブリンを分泌する血液疾患の有無を調べたりします。

神経伝導速度検査

手根管症候群が疑われる場合は、正中神経の機能を調べるために皮膚の上から末梢神経(まっしょうしんけい)を刺激して神経の電気的な動きを調べる検査を行うことがあります。

病理検査

画像検査や血液検査などでははっきりと診断できない場合、関節内の組織などに沈着している物質を採取して顕微鏡で詳しく調べる病理検査を行うことがあります。

治療

透析アミロイドーシスに対する根本的な治療法は現在のところ確立していません。そのため、治療の主体は現れた症状を緩和するための対症療法となります。

具体的には関節の痛みを和らげるための薬物療法や、手根管症候群や破壊性脊椎骨関節症に対する手術などが挙げられます。

 

予防

透析アミロイドーシスを予防するためには、高性能の透析膜や純度の高い透析液を使用することが推奨されています。現在、透析治療は進歩を遂げており、特に生体適合性の良い膜を使った高効率透*や、エンドトキシンフリーの透析液を用いた透析を行う機関が増えたことで、透析アミロイドーシスの発症率は低下しています。

また、腎移植が成功した患者には透析アミロイドの改善がみられた例もあり、腎移植は透析アミロイドーシスの治療と予防の点でもっとも有用と考えられています。

*高効率透析:血液透析において、血液と透析液の流量を増やし、また圧力をかけることで老廃物を除去しやすくするもの。透析効率を増加させ、β2-マイクログロブリン除去の改善に寄与する。

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