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腎不全とはどんな病気? 原因、症状、検査方法

腎不全とはどんな病気? 原因、症状、検査方法
一居 充 先生

愛仁会井上病院 腎臓内科 部長

一居 充 先生

藤原 木綿子 先生

愛仁会井上病院 腎臓内科 部長

藤原 木綿子 先生

目次
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体内で尿をつくる臓器として知られ、体にとって重要なはたらきを担う腎臓。何らかの原因により腎臓がダメージを受けて機能の低下をきたし、腎不全になると、体のむくみや気分不良、貧血などが起こります。病気が進行すると心不全や心停止の原因となる恐れもあります。

今回は、腎不全とはどのような病気か、症状と経過、検査方法などについて、井上病院腎臓内科部長の藤原 木綿子(ふじわら ゆうこ)先生と一居 充(いちい みつる)先生に伺いました。

腎臓の構造

腎臓は、左右の腰あたりの背中側に1つずつある臓器です。縦10cm、奥行き5cm程度のそら豆のような形をしています。腎臓が担っているはたらきには、主に次のようなものがあります。

腎臓の代表的なはたらきは、血液中の老廃物などを濾過(ろか)して尿を生成することです。尿のもとである原尿(げんにょう)を、糸球体と呼ばれる部分で1日に約150Lつくり出しています。原尿は、尿細管(にょうさいかん)と呼ばれるホースのようなところを通っていき、その過程で体に必要な水分や電解質と呼ばれるミネラルが体内に再吸収されます。150Lの原尿のうち約99%が再吸収され、約1.5Lが尿となり、尿管を伝って尿道から排出されます。

ナトリウムやカリウムなどのミネラルのバランス調整を担っています。たとえば、塩分を摂取しすぎたときには尿を出して余分なナトリウムを排出できるようはたらきかけます。

腎臓からは、造血ホルモンであるエリスロポエチンが分泌されています。腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が減り、徐々に貧血が進行します(腎性貧血)。

ミネラルバランスの維持の一環で、腎臓はカルシウムやリンの調整も行っています。カルシウムとリンは骨にとって大切な栄養素です。腎不全が進行してこれらのミネラルの調整能力が低下すると、体内で副甲状腺ホルモンが分泌され、不足した分を骨から供給するようになるため、骨が弱くなっていきます。

腎臓の機能が低下して正常にはたらかなくなった状態を腎不全といいます。腎不全の指標となるのは、血液検査で調べられる血清クレアチニン値や、推算糸球体濾過値(estimated glomerular filtration rate:eGFR)です。

血清クレアチニン値の正常値は1.0mg/dl前後です。腎臓の機能の低下とともに数値は上昇し、正常値を超えて2.0mg/dl になると、残っている腎臓の機能は50%以下になります。最終的に透析をするかどうかは8.0mg/dlが基準です。ただし、この数値は年齢や体格などで変わることも多いです。

近年では、腎臓の機能を表す値であるeGFRという指標が登場しています。eGFRは年齢や血清クレアチニン値から推算され、60 ml/分/1.73m2を下回ると慢性腎臓病に該当する可能性があると考えます。

腎不全の主な原因は、遺伝子の異常が原因で起こる病気や、腎臓に炎症が起こる糸球体腎炎などです。糖尿病高血圧といった生活習慣病も腎不全の原因となります。心臓から送られる血液の約20%を受け入れている腎臓は血管が豊富な臓器であり、生活習慣病などの動脈硬化をきたす病気は腎臓にも悪影響を及ぼすためです。長年かけて、こうした病気が原因で起こる腎不全は基本的に慢性腎不全と呼ばれ、腎臓にダメージが蓄積して元に戻らなくなった状態です。日本では慢性腎不全の患者さんは約1,300万人と推定され、国民の成人の約8人に1人が該当します。

急激に腎不全が引き起こされる病態は、急性腎不全と呼ばれます。たとえば、尿管結石や腫瘍(しゅよう)が生じて膀胱など尿路を塞ぎ、尿が排出されなくなって起こるような腎不全です。この場合、腫瘍などの原因を除去すれば腎臓の機能は回復することが多いですが、急性腎不全を繰り返していると腎臓に少しずつダメージが蓄積し、腎機能障害が残ってしまうことがあります。腎臓は基本的に再生しない臓器であるため、腎不全が固定化する前に治療することが重要になります。

腎不全を発症すると、尿をつくる機能が低下して尿の出が悪くなったり、ミネラルバランスの異常を起こしやすくなったりします。

しっかりと排尿できている場合や尿タンパクが出ないタイプの腎不全では、透析治療が必要になる直前まで自覚症状がない方もいらっしゃいます。たとえば、腎不全に伴って貧血が生じても徐々に進行するため、倦怠感やふらつきなどの症状を自覚しない患者さんも少なくありません。

腎不全が進行すると、尿の出が悪い患者さんではむくみが悪化してきます。軽症だと足のむくみなどで済みますが、適切な治療を受けずにいると徐々にむくみが強くなって胸に水がたまり、心不全の原因となります。ミネラルバランスの異常も、放置すると少しずつ悪化して不整脈や心停止の原因となります。

腎不全の検査として多く行われているのは血液検査と尿検査です。

血液検査では、先に述べたように血清クレアチニン値やeGFRを中心に調べます。

尿検査では、主に尿タンパクや尿潜血の値を見ます。血液検査で血清クレアチニン値が保たれている方でも、尿タンパクや尿潜血が出ている場合は腎臓に傷がついている状態と考えられます。傷を放置すると少しずつダメージが大きくなり腎不全に至る可能性があります。尿潜血が主体として出てくるIgA腎症は若い方の発症が多く、学校の検尿で発見されることもあります。

腎臓の形態や大きさに異常がないかを調べます。生まれつき片側の腎臓が小さい方や、解剖学的に片側の腎臓で生活している方は腎不全のリスクがあります。また、遺伝子異常が原因で起こる病気の1つで、水のたまった袋(嚢胞(のうほう))が腎臓にできて少しずつ腎機能の低下が進んでいく多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)も、画像検査により診断できます。

血液検査、尿検査、画像検査などを行って異常が発見された場合、腎臓から直接組織を採取し、顕微鏡で観察する腎生検を行うことがあります。

透析治療が必要になる方のおおよそ10人中4人は、糖尿病が原因で起こります。糖尿病を長期間患っている方は、腎不全の進行を予防できるよう定期検査の受診をおすすめします。特に、糖尿病の合併症である網膜症や神経障害がみられる方は、腎臓もダメージを受けていることがあります。腎不全は自覚症状が現れにくいため、定期的に検査を受けておくことが大切です。

腎不全に関して特にセルフチェックをする必要はありませんが、生活習慣病がある方には血糖値や血圧、体重の測定を行っていただくことがあります。微小変化型ネフローゼ症候群のような一部の患者さんでは、再発することもあることから、再発の指標となる尿タンパクが測定できる尿試験紙で日常的にセルフチェックし、異常が出たら病院にご連絡いただくようにしている方もいます。尿試験紙は薬局で購入することができます。

腎臓は基本的に、ダメージを受けると再び元に戻ることができない性質を持つ臓器です。そのため、腎不全の治療においては早期発見・早期治療が重要になります。糖尿病高血圧などの生活習慣病だけでなく、若年発症も多いIgA腎症などの糸球体腎炎も腎不全の原因となります。IgA腎症や微小変化型ネフローゼ症候群は根治的な治療法が得られていない病気ですが、ステロイド治療を早期に行うことが効果的です。腎不全について気になることがあれば詳しくご説明いたしますので、気軽に受診していただければと思います。

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