腎臓は、体内の老廃物や余分な水を外に排出する役割を担っています。腎臓の機能が著しく低下することを腎不全と呼び、さらに進行すると末期腎不全と呼ばれる状態に陥ります。腎不全に陥った場合、どのような治療を行うのでしょうか。腎臓の機能と腎不全のステージ分類、腎不全の治療について、昭和大学病院 腎移植センター 講師の加藤容二郎先生にお話を伺いました。
腎臓は人の拳くらいの大きさの臓器で、左腎・右腎の2つがあります。2つの腎臓は背中側の腰のやや上部に位置し、尿管が腎臓から膀胱(ぼうこう)までつながっています。膀胱で貯められた尿は、尿道を通って体外に排出されます。
腎臓の主な機能は、ネフロン(糸球体・尿細管)と呼ばれる血液のろ過装置によって、心臓から送られた血液中の老廃物や余った水分をこし出して尿をつくることです。糸球体によってろ過された血液は原尿と呼ばれる薄い尿になり、さらに尿細管が原尿を再吸収することで、尿をつくります。
成人の場合、通常1日に1,500〜2,000ccほど(500mlペットボトル3〜4本)の尿が出ます。しかし、腎移植をした直後や急性腎不全後の回復期など(詳しくは後述します)の場合、尿の再吸収機能が一時的に低下し、薄い尿が大量に出ることがあり、多いとその尿量は1時間におよそ500ccになることもあります。
腎臓には前述のような機能が備わっていますが、何らかの理由でその機能が著しく低下すると、腎不全と呼ばれる状態に陥ります。腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全の2種類が存在します。
急性腎不全はその名の通り、急激に腎機能が低下する病態です。急性腎不全にはさまざまな原因が考えられますが、脱水状態で腎臓に負担の大きい薬(鎮痛薬など)を使用した場合にも、急性腎不全に陥ることがあります。
慢性腎不全は、様々な疾患によって引き起こされますが、近年、糖尿病や高血圧といった生活習慣病や高齢化による慢性腎不全も増加しています。
慢性腎不全から透析導入になる原因として生活習慣病以外のものも数多く存在し、その中では慢性糸球体腎炎(IgA腎症や膜性腎症などの総称)によるものが比較的多いですが、原疾患が不明のことも多いです。
腎不全は腎機能が低下した状態であるとご説明しましたが、腎機能低下の程度によってステージ分類が示されています。
腎機能は、推算糸球体ろ過量:eGFR値(ml/分/1.73m2)によって評価することができます。本来の腎機能を100としたとき、90以上であれば正常(ステージ1)で、eGFR値の低下とともに徐々にステージは上がり、eGFR値が15未満になると末期腎不全(ステージ5)と呼ばれます。
腎機能は、ある程度失われると回復困難なことがあります。ステージ2〜4までであれば、生活改善や食事療法、薬物療法によって腎機能低下を防げたり、若干改善したりする可能性があります。しかし、末期腎不全に陥った場合には尿毒症の症状(頭痛、吐き気、嘔吐など)が出てくることがあり、血液透析や腎移植などによって腎機能を補う必要があります。
腎不全に陥った場合には、血液透析、腹膜透析、腎移植などの方法で腎機能を補うことができます。これらの方法を比較しながら、詳しくご説明していきます。
血液透析とは、腎臓が本来行うべき血液ろ過の過程を人工的に補う方法です。血液透析では機械を用いて血液をろ過し、血液中の老廃物や不要な水を排出します。週に3回ほど施設に通い、1回に3~4時間かけて血液透析を行うことが多いです。一回の血液透析で安全に除水できる量に上限があるため、透析患者さんには食事を含めた水分摂取量の制限があり、特に尿がほとんど出ない、もしくは無尿の成人の場合、700-800cc(500mlペットボトル1本と少し)以下を目標に飲水制限をすることがあります。
血液透析は、週2~3回透析を行う施設に通わねばならないこと、食事を含めた飲水制限などがあることがデメリットであるといえます。しかしながら血液透析の技術も進歩し、血液透析後の生存率も以前と比べかなり改善しています。
腹膜透析は、腹腔内(お腹の内部)にある腹膜を使い、血液ろ過の過程を人工的に補う方法です。腹膜透析には、夜の就寝中に機械を使って行うAPDと、日中に4〜6回かけて行うCAPDの2種類あります。
通院は月に1〜2回ほど必要ですが、食事制限・飲水制限が血液透析よりも緩やかなので、血液透析に比べて生活への支障が少ないことがメリットです。しかし腹膜透析を長期間にわたって行うと徐々に腹膜の機能が低下し、さらには腸閉塞(腸がお腹の中で癒着し腸の内容物がうまく流れなくなる病気)などのリスクが高まることがデメリットといえます。
腎移植には、生体腎移植(健康な人からの腎臓提供)と献腎移植(心停止、脳死の方からの腎臓提供)の2種類があります。生体腎移植の際には2〜3週間ほどの入院の後、退院直後は週1〜2回の通院が必要ですが、徐々に通院回数は減り、半年ほど経過した後の通院は月に1回程度となり、移植腎機能が安定している方の場合、数年後2〜3か月に1回程度の通院になることもあります。腎移植後は、腎臓への負担を軽減するため塩分制限を指導することがありますが、通常、特に大きな食事制限・飲水制限はありません。また、拒絶反応を防ぐために、毎日2回ほど免疫抑制剤の服用が必要です。
腎移植の最大のメリットは、腎臓本来の機能を取り戻せることです。患者さんが赤ちゃんや子どもの場合、透析をしていると成長が遅れたり、肌の色が濃くなったりしますが、腎移植をすると成長が改善し、特に赤ちゃんの場合、移植翌日には肌がしっとりとし、本来の色に戻る方もいました。
一方で腎移植のデメリットとしては、移植腎が機能している間は免疫抑制剤を内服し続けないといけないことや、免疫抑制の影響により感染症のリスクが高まることなどがあげられます。また、脳死や心停止後のドナー(提供者)がまだ少ないため、腎移植を行うまでの待機期間が長く、日本での平均待機期間は約14年7カ月とうい報告があります。
腎不全は、前述のようにさまざまな方法によって治療することができます。なかでも腎移植は腎臓本来の機能を取り戻すことができ、その後の生活に制限が少ないため、腎不全の治療として推奨したいです。記事2『腎移植の手術方法・費用・ドナーの適応条件とは? 腎移植はどのように行われるのか』で、腎移植について詳しくご紹介します。
昭和大学医学部 外科学講座 消化器・一般外科部門 講師、昭和大学病院 腎移植センター 講師
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