じょうせんしょくたいゆうせいたはつせいのうほうじん

常染色体優性多発性嚢胞腎

別名
多発性嚢胞腎
最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

常染色体優性多発性嚢胞腎(多発性嚢胞腎)とは、両方の腎臓に多くの嚢胞(のうほう)(球状の袋でなかに液体が溜まっている)ができる病気のことです。遺伝性の腎疾患ではもっとも頻度が高いといわれています。

常染色体優性多発性嚢胞腎に罹患すると、70歳までに約半数の方が末期腎不全に陥るといわれています。さらに高血圧肝嚢胞脳動脈瘤を合併します。なかには、腎臓の機能が低下する前に嚢胞の細菌感染や脳動脈瘤の破裂などで亡くなる方もいるので、早期発見・診断が重要といわれています。

原因

遺伝子の異常により発症し、男女ともに罹患する可能性があります。両親のどちらかが常染色体優性多発性嚢胞腎を保有している場合には、50%の確率で子どもに遺伝します。50%の確率とは子どもの半分が病気になるという意味ではありません。子どもがそれぞれ50%の確率で病気を持つということです。よって子ども全員が発症する場合もあれば、誰もかからない場合もあります。また、まれではありますが、両親がこの疾患の保有者ではない場合でも、子どもが発症する可能性もあります。

生まれたときは、嚢胞は確認できませんが、年齢を重ねるにつれ嚢胞が大きくなり数も増え、徐々に症状が出てきます。

症状

年齢を重ねるに従い、徐々に嚢胞が大きくなり、症状が出てきます。一般的には30〜40歳代では無症状のことが多いですが、嚢胞が大きくなると以下のような症状が現れます。

  • 腹痛、腰痛
  • 腹部膨満
  • 側腹部痛(脇腹の痛み)
  • 肉眼的血尿(排尿時に尿に血が混じること)

など

また腎機能が低下すると、慢性腎不全による浮腫(ふしゅ:むくみ)や倦怠感、食欲不振、など全身症状も出現することがあります。

また、常染色体優性多発性嚢胞を起こした方には、肝嚢胞もよくみられます。肝嚢胞により肝臓が腫大すると腹部膨満感、食思不振などの症状が強く出ます。嚢胞感染が難治性となることもあります。

さらに高血圧脳動脈瘤のリスクも伴うため、若年でも高血圧を指摘されたり、脳動脈瘤が大きくなると、吐き気・嘔吐や脳動脈瘤破裂に伴う頭痛などが現れたりする場合もあります。

検査・診断

常染色体優性多発性嚢胞腎が疑われる場合には、 家族歴の確認、採血(血液検査)、尿検査、画像検査を実施します。

家族歴

検査を行う前にもっとも大切な情報は、この病気の家族歴(患者の家族や近親者の病歴や健康状態、死因などの記録)です。

採血

慢性腎不全に関連する以下の項目を確認する必要があります。

  • 腎機機能:クレアチニン(Cre)、尿素窒素(BUN)などを
  • 電解質:ナトリウム(Na)、クロール(Cl)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(P)など
  • 貧血や脱水:Hbヘモグロビン)、Alb(アルブミン)など
  • 炎症反応:CPR、WBC(白血球)、血沈など

など

尿検査

尿試験紙法、尿生化学、尿沈渣、尿浸透圧などの検査を行い、尿中タンパク質や血尿の有無を測定します。

画像検査

画像検査では、もっとも簡便な腹部超音波検査をおこない、嚢胞の有無を確認します。腎嚢胞だけでなく肝嚢胞の有無を確認することも診断の役に立ちます。判断が難しい場合や正確に大きさを測りたいときには、CT検査やMRI検査などを行います。また、脳動脈瘤の有無を調べるために、造影CT検査や MRA検査を行います。

治療

バソプレッシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンが、腎嚢胞の増大や腎機能の低下を抑えることが報告されました。この動きを受けて2014年、本邦ではトルバプタンが多発性嚢胞腎の治療薬として承認されました。この薬は、肝障害や脱水などの副作用もあるため注意が必要です。現在は、資格を持った医師のみが処方できる薬剤となっています。

それ以外の治療としては、血圧の管理も重要です。多発性嚢胞腎では高血圧症を起こしている方も多いため、血圧をコントロールすることは腎機能低下の進行抑制や脳動脈瘤破裂の予防にもつながります。

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