無症候性心筋虚血とは、心筋虚血であるのに自覚症状がない状態をいいます。心筋虚血とは、心臓に血液を送る冠動脈という血管が動脈硬化などによって狭くなったために、心臓の筋肉に十分な血液が届いていない状態を指します。
無症候性心筋虚血の治療法は、原則として症状のある方と変わりません。ここでは治療内容を中心に、無症候性心筋虚血について詳しく解説します。
心筋虚血とは心臓に血液を送る冠動脈という血管が狭くなり、必要なだけの血液が心筋(心臓の筋肉)に送れない状態のことです。
冠動脈が狭くなる原因として一般的なものは動脈硬化ですが、冠動脈の攣縮(異常に収縮すること)が原因となることもあります。また、動脈硬化が原因の場合は動いているときに心筋虚血が起こりやすく、攣縮が原因の場合は安静時に起こりやすいほか、禁煙が心筋虚血を誘発することもあるとされています。
心筋虚血が起こると胸の痛みなどの症状が現れることが一般的ですが、症状が出ないこともあり、これを無症候性心筋虚血といいます。症状が出ない理由としては高齢や糖尿病であることなどによって痛みを感じづらい状況にあることが挙げられ、これは自律神経の障害が原因と考えられています。
また、痛みが出ないことによって気づかないまま心筋虚血が進行すると、循環不全によって息切れや呼吸困難、むくみ、嘔吐などの症状が現れるようになり、この時点で心筋が壊死しているケースもあります。その場合は治療をしても後遺症が残ることがあります。
無症候性心筋虚血の治療法は基本的に有症候性の治療法と同様ですが、病態が複雑であるため、さまざまな検査によって心筋虚血の程度や範囲を明らかにし、生活の質や予後(治療後の経過)の改善を目的とした治療を選択する必要があります。
一般的な治療法は薬物療法がメインとなります。
薬は抗狭心症薬をメインに使用し、なかでも“β遮断薬”が有効だといわれています。β遮断薬は交感神経(興奮する神経)の活動を抑えて血圧と脈拍数を下げ、心臓への負担を和らげる薬です。また、血管を広げる“カルシウム拮抗薬”や、発作時の症状を和らげるための“ニトログリセリン”なども状況に応じて用いられます。
そのほか、攣縮を抑える効果も期待できる抗コレステロール薬の“スタチン”や心筋梗塞症の要因となる精神的ストレスの軽減などによって、心筋虚血の緩和や症状悪化の予防を目指すこともあります。
無症候性心筋虚血の補助的な治療法として手術療法の選択肢もあります。
具体的には、狭くなった冠動脈を広げる“冠動脈形成術(PTCA)”や“冠動脈バイパス術”、動脈硬化の部分を切り取る“動脈硬化切除術”などがあります。これらは冠動脈血行再建術とも呼ばれますが、無症候性心筋虚血においては無症状であることから、これらの治療を行っても生活の質の改善に影響しないとも考えられています。
通常の心筋虚血であれば胸痛で無理ができませんが、無症候性心筋虚血においては症状がないために、心筋虚血が強くなっても気付かないことがありえます。それにより心不全や、致死的な不整脈を起こす可能性があります。
冠動脈がより狭くなることや新たに別の部分が狭くなること、動脈硬化の進行を防ぐことが重要だと考えられます。動脈硬化のリスクとして喫煙や過剰な塩分、脂質などがあるため禁煙をし、塩分や脂質の取りすぎを控え、適度な運動なども合わせて行うとよいでしょう。
さらに、高血圧や脂質異常症、糖尿病などは動脈硬化のリスクを高めるといわれているため、これらの病気がある人はこちらの治療も積極的に行うとよいでしょう。
無症候性心筋虚血の治療は主に薬物療法によって行われ、用いられる薬は心臓への負担を和らげる薬、血管を広げる薬など、患者の状態や症状によってそれぞれを組み合わせて使います。
また、無症候性心筋虚血の原因は動脈硬化が一般的であるといわれているため、日頃の生活習慣の見直しによって動脈硬化の予防・改善に努め、症状悪化を防ぐとよいでしょう。具体的には禁煙する、塩分や脂肪分を取りすぎない、バランスのよい食事や適度な運動などを心がけます。
さらに、動脈硬化の危険因子といわれている高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの持病を持っている場合はそれらの病気の治療も並行して行うとよいでしょう。
医療法人 札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO
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