熱中症とは体温調節機能が正常にはたらかなくなることで体温が著しく上昇した状態です。一般的に熱中症の症状とは暑い場所にいる場合、または暑い場所にいた後の全ての体調不良を指し、初期にはめまいや立ちくらみ、生あくび、大量の発汗などが現れやすいといわれています。このほかにも、熱中症の症状として頭痛などが現れることもありますが、熱中症で頭痛が起こっている場合は体の中で思わぬ異変が起こっている可能性があります。
本記事では熱中症で頭痛がある場合の重症度と対処法について解説します。
熱中症の症状は重症度に応じて“I度”、“II度”、“III度”の三つに分類されます。
このうち頭痛が出現した際にはすでに“II度”の熱中症と考えられるため、医療機関への受診が必要な状態であると考えられます。II度の熱中症は軽い集中力の低下が見られるものの意識ははっきりしている場合があり、「受け答えがしっかりしているから大丈夫」と症状をそのままにしてしまうことも少なくありません。しかし判断を誤り適切な処置を怠ると重症化してしまう危険性があり、すぐに医療機関の受診が必要な状態であるといえます。
熱中症の重症度とそれぞれの症状は、以下のとおりです。
臨床症状から熱けいれん、熱失神と呼ばれることもあります。めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛などが見られますが、意識障害はありません。現場での応急処置(冷所での安静、体表冷却、水分と塩分の補給)と見守りで回復すれば医療機関の受診は必要ありません。
熱疲労とも呼ばれる状態で、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下などが起こります。意識はありますが、場合によっては臓器障害を起こしていることもあります。判断を誤れば重症化して命の危険につながりうる状態です。現場での応急処置を行ったうえで医療機関の受診が必要となります。
熱射病と呼ばれる状態で、体温が上がりすぎたことによって意識障害や、肝・腎機能障害、血液凝固異常などを起こしている状態です。医療機関での診察・検査によって、上記を示す所見が確かめられた場合に診断されます。直ちに医療機関での入院加療、場合によっては集中治療が必要になります。
涼しい環境に移動させたうえで、体温の冷却と水分・塩分補給を行います。それと並行して医療機関への搬送の準備を行います。
クーラーが効いている涼しい室内に移動させます。難しい場合は風通しのよい日陰でもよいでしょう。
衣服を脱がせて体から熱を逃がしやすくします。ベルトやネクタイ、下着など体を締め付けているものは緩めて風通しをよくしましょう。また、皮膚に濡れたタオルやハンカチを当てて、うちわや扇風機で風を送ると体温が下がりやすくなります。そのほか、冷えたペットボトルや氷のうなどを首の付け根、腋の下、太ももの付け根など、太い血管がある部分に当てることも有効です。
自分で水が飲める場合は冷たい水をどんどん飲んでもらいます。大量に汗をかいている場合は汗で失った塩分を補給するため経口補水液やスポーツドリンクなどを飲むとよいでしょう。経口補水液やスポーツドリンクなどが手に入らない場合は、水1Lに1~2gの食塩を溶かした食塩水を与えることも有効です。
なお、受け答えがおかしい、意識がない、吐き気や嘔吐があるといった症状がある場合は、点滴での水分・塩分補給が必要となります。直ちに医療機関へ搬送するようにしましょう。
上記で述べたとおり、熱中症で頭痛が現れた場合は医療機関での受診が必要な状態であり、自宅で様子を見続けることは適切な対応とはいえません。意識がはっきりしている場合でも、体の中では重大な異変が起こっている場合もあります。なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。特に体を冷やしたり水分・塩分補給を続けても症状がよくならなかったり、頭痛のほかにも吐き気や嘔吐、体のだるさなどが続く場合は、夜間診療などの救急機関や救急車の要請も検討する必要があります。
熱中症で頭痛が起こるのは、体温が上がりすぎることによって脳の血管や神経に何らかの異変が起こっているためです。そのため、この原因を取り除かない限りは熱中症による頭痛を改善することはできません。
市販の頭痛薬は“一次性頭痛”と呼ばれる頭痛の原因となる病気がないタイプの頭痛には有効ですが、何らかの病気が頭痛の原因となる場合はその原因に対する治療が必要になります。そのため、熱中症による頭痛が起きた場合は市販薬を使って様子を見ようとはせず、医療機関を受診することが大切です。市販薬を使用して様子を見ることはあまり効果が期待できないばかりか、症状を悪化させてしまうことにもつながりかねません。
熱中症で頭痛が起こっている場合は、体の中で思わぬ異変が起こっている可能性があります。特に症状が長引いたり症状が強くなっていたりする場合は自己判断で様子を見るのではなく、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
また、熱中症を予防するには熱い日は屋外で活動しないということが大切です。しかし、熱い日にどうしても屋外で活動する必要がある場合はこまめな水分補給や休憩をすることを心がけましょう。
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