甲状腺の働きすぎなどの原因よって発症する「甲状腺クリーゼ」は、身体のさまざまな部分で症状が起こるので他の病気と区別がつきにくいことが課題です。しかし生命に関わる病気なので見誤っては一大事です。その症状や診断基準について和歌山県立医科大学内科学第一講座教授 赤水尚史先生にお話をうかがいました。
細胞の働きを活発にする甲状腺ホルモンの受容体は脳にもあります。ですから甲状腺クリーゼになった場合は興奮、錯乱状態といった中枢神経障害の症状が出ることがあります。大声で叫ぶ・暴力をふるう・けいれん・昏睡・幻覚や錯覚を見る譫妄(せんもう)・すぐに意識が混濁する傾眠、といったことが起こるケースもあります。
このほか、
といったことが特徴としてありますが、甲状腺機能亢進症など体内の甲状腺ホルモンの値が高く甲状腺中毒症になるベースがない場合は別の疾患と考えられます。
バセドウ病をはじめとする甲状腺機能亢進症の合併症のひとつが甲状腺クリーゼです。その発症の結果、多臓器不全・心不全・呼吸器不全・不整脈・DIC(全身の血管内で無秩序に血液凝固反応が起こる「播種性血管内凝固症候群」)などで死に至ることがあります。
日本甲状腺学会の「甲状腺クリーゼの診断基準の作成と全国調査」班が2008年1月に診断基準(第1版)を発表し、それをもとに全国疫学調査を実施しました。その調査結果によって改訂した診断基準(第2版)を2012年に示しています。
まず甲状腺クリーゼと診断する大前提となるのが血液検査です。
が「必須項目」です。
先に全身症状として示した
以上が顕著な症状と想定されています。
そのうえで、血液検査による「必須項目」と以下の「a.」「b.」いずれかの条件を満たせば「確実例」として診断します。
さらに、
という場合は「疑い例」として甲状腺クリーゼと同じ方針で治療します。
問題は甲状腺クリーゼの場合、患者さんは非常に重症なので救急で病院に運び込まれる場合が多いことです。つまり甲状腺疾患の専門家ではない医師が対応することになります。意識障害のある場合が多いですから、ご家族がついていないと、患者さん本人に甲状腺機能亢進症などがあるかどうか確認できませんし、意識があったとしても、甲状腺の病気を持っていることをご本人も知らない場合があるので見落とされる危険があるのです。
実際、隈病院(神戸市中央区)など、日本には専門的に甲状腺の患者さんを診ている病院が3カ所あるのですが、そこにはクリーゼの患者さんは来られません。治療を受けて病気のコントロールをされているので、そういう場所で働く専門医ほど甲状腺クリーゼの実態をご存知ないのです。「甲状腺クリーゼ全国疫学調査(第一次:2009年1月~6月)」(※記事1「甲状腺クリーゼとは 甲状腺中毒症をベースにした難病」参照)で、調査前に年間100人以下だろうと予測していたのに実際は250人以上確認できたということの背景には、そういう事情もあるのです。
大学病院など大規模な医療機関の専門医は甲状腺クリーゼの患者が救急で運び込まれた場合、担当医から相談を受けることもあるので、比較的実際の例を知っているのです。しかし相談を受けないと分かりませし、見逃されている場合もあるかもしれません。
救急部門でもその部分は課題になっており、私も救急診療のガイドラインなどへの執筆を依頼されることも増えてきました。
医療法人神甲会 隈病院 院長
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受診のめやす
職場の健診で、医師の問診の際に甲状腺に触れられました。見た感じ何となく、、という程度の様子でした。自覚症状がないなら様子見てていいよ。と言われましたが以前も違う受診の際に別医師も今回と同じ様子だったことを思い出したので気になります。 甲状腺について少し調べてみたのですが理解不足です。 どのような症状があったら受診した方がよいのでしょうか。自分では触っても分からないと思います。 受診したら、どのような検査でどういった治療や予後なのかも教えていただけたらと思います。
貧血などです
去年、15年以上振りに健康診断を受けたところ、貧血などが出てしまい治療を続ける予定でしたが、色々忙しく治療が出来ていません。 その時の診断ではヘモグロビンが8,6、鉄は13しかなく、他の赤血球の数値も全てL(ロー)で、貧血の薬をまずは3ヶ月と言われ一時飲んでいましたが吐き気などの副作用が酷く、飲み続けて2ヶ月目くらいに勝手にストップしてしまいました。(白血球は標準値でした) 今までは意識はしてなかったので自分の貧血が酷く感じてなかったのですが、最初の診断時に医師に無理しないで、って言われていたせいか、ちょっと気になるときもありフラフラするので横になるようにしています。 でも、もう1つ関連は分かりませんが、去年の9月から毎日ではないですが耳で熱を測ると38度台が月平均であり、更年期の検査もしましたが正常でした。(真冬の月平均は、耳で熱を測る数値は37,5度くらいでした。)甲状腺の検査をしたら、橋本病の数値が振り切っていてエコーでも、しっかり橋本病の症状は出てましたが、甲状腺の基本的な採血結果は振り切ってませんでした。 この熱と貧血と橋本病の関連がよく分からないらしく、困っています。
治療方法はどういったものがあるのか知りたいです。
5月初旬に上記のような診断となり、通院していますが、治療法は現在ステロイドは服用するしかないと言われたので、ステロイドを服用しています。いつ病名がはっきりするのか、何が原因で病名が特定できないのか、治療方法はどの医療機関でもこの方法しかないのか、相談したいです。
甲状腺機能亢進症
質問よろしくお願いします。 最近頻脈と体重減少が気になり検査してもらって甲状腺機能亢進症と診断されました。今産後3ヶ月で、一人目の出産の時も一時的に甲状腺のホルモンが過剰分泌しました。3ヶ月程度で薬も飲まなくて良くなりました。今回も同じかな?と思ったのですが、昨日の診断から顎から首にかけてのところが痛いまではいかなくても違和感?があります。口が大きくあきにくいような、、あと、右耳下のあたりが風船を膨らました時のような感じがします。甲状腺と関係あるのでしょうか??違和感が気になります。よろしくお願いします。
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