
「性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。
さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「疥癬(かいせん)」についてのお話です。
疥癬はヒゼンダニ(疥癬虫、Sarcoptes scabiei)が皮膚の角質層に寄生することにより生じる皮膚感染症です。ヒゼンダニは人の皮膚にのみ生存します。乾燥に弱く、皮膚から離れると2、3時間程で死んでしまいます。近年では性感染症としての側面以外に、病院、高齢者施設、養護施設などでの集団発生の事例が増加しており問題になっています。
ヒゼンダニは球形で、短い脚が8本あります。メスは0.4×0.3mm、オスは0.2×0.15mmとメスの方が大きいのが特徴です。メスは人の皮膚の表面に角質層のすみかを移動しながらトンネルを掘り進み、皮膚の柔らかいところに次々と産卵します。オスはメスを見つけるために皮膚の表面を移動しており、普通は疥癬の症例では見つけることができません。幼虫は数日で孵化します。
ヒゼンダニはスキンシップで人から人へと感染し、衣類、寝具類などを介して伝染することがあるので、家族内感染への注意が必要です。感染後すぐには全く症状が出ませんが、感染してから4~6週間で多数のダニに増殖し、その虫体、脱皮殻、糞がアレルギー反応の原因となり、激しいかゆみが始まります。
疥癬の症状は夜間に特に強くなる激しいかゆみであり、虫が動くようなムズムズした感じがあります。ただし、高齢者や角化型疥癬の患者では痒みの訴えが少ない場合もあります。かゆみの症状は、ダニに対してのアレルギー反応が引き起こしていると考えられていまます。
潜伏期間はおよそ1ヶ月です。皮膚が柔らかい所に赤い丘疹が表れ、具体的には指と指の間、首筋、腋の下、手首、下腹部、尻、陰部などに出現します。男性の場合は性器にも感染します。
通常は、強いかゆみやトンネルを見つけることで疥癬と診断します。
確定診断をするためには、「疥癬トンネル」(ヒゼンダニが掘り進んだ穴)や隆起から少量の皮膚を採取し、顕微鏡でヒゼンダニやその卵、糞などを検出することです。
疥癬の治療は、特効薬であるイベルメクチンを1日1回数日間内服することです。これ以外の治療法として、硫黄軟膏、クロタミトン、安息香酸ベンジル外用などを全身に塗り残しがないようにくまなく塗るなどが挙げられます。
感染拡大の予防のためには患者さんの早期発見が重要で、疥癬が疑われる場合はすぐに医療機関に受診するようにしましょう。もし患者さんが見つかった場合は、無症状であっても患者さんの家族や同じ場所で寝泊りした人なども検査を行うようにしましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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頭痛について
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