インタビュー

疥癬の原因となる疥癬虫(ヒゼンダニ)の生態、疥癬トンネルについて

疥癬の原因となる疥癬虫(ヒゼンダニ)の生態、疥癬トンネルについて
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2016年01月01日です。

疥癬の感染を防ぐためには、ヒゼンダニの生態について理解していることが重要になってきます。今回は、疥癬の原因となるヒゼンダニの生態とヒゼンダニがつくる疥癬トンネルについて、診療経験が豊富である尾上泰彦先生にお話を伺いました。

疥癬とは、ヒゼンダニがヒトに寄生することにより発症する感染症です。感染直後は症状が全く出ませんが、感染してから4〜6週間でヒゼンダニが増殖し、その虫体、脱皮殻、糞などに対するアレルギー反応として皮膚の柔らかいところに赤い結節ができるなどの皮膚病変と、特に夜中におきる激しいかゆみを主な症状とします。

疥癬の原因となるヒゼンダニは卵形ですが、プレパラートで観察すると、カバーガラスで押しつぶされるので円盤状で観察されます。ヒゼンダニの成虫は、前後に2対の計8本の短い脚があり、メスの方が大きいのが特徴です。成虫の大きさは、メスが0.4×0.3mm、オスはメスの約60%である0.2×0.15mm、そのために肉眼ではほとんど見えません。

ヒゼンダニは卵→幼虫→若虫→成虫と脱皮を何度も行い成長していきます。卵は3〜5日で孵化し、このサイクル(生活史)は10〜14日であるといわれています 。

ヒゼンダニは主に角質層に寄生しています。そのため血液を吸っているのではなく、角質層中にある何らかの栄養分や滲出液を栄養源としているものと考えられています。

ヒゼンダニは乾燥に弱く、ヒトの体温で活発に活動します。ヒトの体から離れて体温より低い温度になると動きが鈍くなります。特に16℃以下ではほとんど動きません。そのため、皮膚から離れて数時間経つと感染力が低下すると考えられています。また、ヒゼンダニは50℃、10分間の状況下で死滅します。

ヒゼンダニの幼虫、若虫、オスの成虫はヒトの皮膚の表面を移動していたり、あるいは皮膚表面にある角質層内に掘った穴や毛包内に潜んでいたりするために、ヒゼンダニの寄生部位を特定することは難しいです。また、皮膚の表面を動き回っているオスの成虫は、交尾するためにメスを探していると言われています。 ヒゼンダニのメスは、ヒトの皮膚の表面の産卵に適した場所に穴を掘り、オスが来るのを待っています。

交尾が終わると、メスの成虫はヒトの皮膚の表面の角質層に特徴的なトンネル状の横穴を開けていきます。このトンネルは、角質層の柔らかいところをすみかにしているメスが、産卵しながら移動するために生じます。このトンネルのことを疥癬トンネルといいます。

メスの成虫は、この疥癬トンネルを掘り進めながら、寿命である4〜6週間にわたって1日2〜4個ずつ産卵し続けます。疥癬トンネル内で産卵された卵は、孵化し幼虫になると疥癬トンネルを出て這いまわります。

足に生じた疥癬トンネル
(提供:赤穂市民病院 和田康夫先生)
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