疥癬は原虫であるヒゼンダニがヒトに寄生することで見られる感染症です。スキンシップのような密な接触が感染の原因となるので、性的行為で感染することがあります。ヒゼンダニと疥癬の症状について、写真も交えて尾上泰彦先生に紹介していただきました。
疥癬の原因であるヒゼンダニは卵形ですが、観察する際にはプレパラートとカバーガラスで押しつぶされるので円盤状のヒゼンダニを見つけられます。ヒゼンダニの成虫は、短い脚が計8本、前脚と後脚それぞれ2対ずつ存在します。
また、大きさはオスよりメスの方が大きいです。実際の成虫の大きさは、メスは0.4×0.3mmの大きさで、オスはその約60%である0.2×0.15mmの大きさです。そのため、肉眼ではほとんど見ることができません。
ヒゼンダニは卵から3~5日で孵化します。その後、幼虫→若虫→成虫と脱皮を何度も行いながら成長していきます。この1連のサイクル(生活史)は10〜14日であるようです。
疥癬の症状は、疥癬トンネル、丘疹、疥癬結節の3つに分けられます。3つは基本的に癒合することはないようです。
疥癬に特異的な皮疹です。ヒゼンダニのオスはメスを探すために皮膚の角質層を探し回っていて、見つけると交尾を行います。交尾を終えた後、メス成虫はヒトの皮膚の角質層に特徴的な横穴をトンネル上に開けていきます。このトンネルは角質層の柔らかいところに作られ、メスはこのトンネル内に産卵します。このとき作られる白い線状皮疹が疥癬トンネルです。
メス成虫は、疥癬トンネルを掘りながら、4〜6週間にわたって卵を1日2〜4個ずつ産み続けます。卵から孵り幼虫になるとトンネルから出て這いまわります。
疥癬トンネルは指の間、指側面、手首などに好発します。男性では性器にもよくできます。疥癬トンネルはメスの成虫が産卵しながら作る道筋であるので、虫卵、虫体の検出率が高いようです。
疥癬では、激しいかゆみを伴う紅班性丘疹を生じる場合もあります。かゆみは夜間に強くなり、不眠につながることもあります。
疥癬結節は、主に男性の外陰部にみられ、強いかゆみを伴います。結節は赤褐色で小豆大の大きさです。丘疹と疥癬結節両方ともに正確なことはわかっていませんが、ヒゼンダニの虫体や脱皮殻、糞などに対してのアレルギー反応の結果として生じるものと考えられています。
疥癬の原因となるヒゼンダニは集団感染を引き起こすことがあります。これまでは高齢者の養護施設で発生することが多かった疥癬の集団発生ですが、近年では保育園でも確認されるケースが増えてきました。詳しくはこちらから 疥癬の集団感染を起こすヒゼンダニに注意-「かゆみ」と「特有の皮膚症状」が特徴
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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