発作性夜間ヘモグロビン尿症は、赤血球が血管内で破壊されることによって、貧血やヘモグロビン尿(コーラ色の尿)などが現れる病気です。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療では、病気による症状を抑える効果があると考えられる薬が登場しており、定期的に点滴を受けることで、状態の改善が期待できます。
今回は、NTT東日本関東病院 血液内科の臼杵 憲祐先生に、発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因や症状と共に主な治療法についてお伺いしました。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、赤血球が血管内で破壊されることによって溶血*が起こり、貧血やヘモグロビン尿(コーラ色の尿)などが現れる病気です。患者数が少ないまれな病気と考えられています。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、あらゆる年代で発症する可能性があります。なお、発症のしやすさに男女差は認められていません。
*溶血:赤血球の膜が破れ、赤血球の外にヘモグロビンが出てしまう状態。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、PIGA遺伝子に変異が起こることで生じることが分かっています。
遺伝子の変異が原因と聞くと「病気が遺伝するのではないか」と思われる方もいるかもしれませんが、発作性夜間ヘモグロビン尿症は後天性の病気であり、遺伝しないことが分かっています。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、前のページでお話しした再生不良性貧血や、骨髄異形成症候群と呼ばれる病気と合併する場合があることが明らかになっています。再生不良性貧血とは、血液中の白血球、赤血球、血小板が減少することで、めまいや頭痛、疲れやすさなど、さまざまな症状が現れる病気です。また、骨髄異形成症候群とは、白血球や赤血球をつくるはたらきのある造血幹細胞に異常が生じ、正常な血液細胞がつくられなくなる病気を指します。
発作性夜間ヘモグロビン尿症では、貧血による息切れや動悸、顔色不良、全身の倦怠感などが現れます。また、何か作業を行ったときに疲れやすいと感じるようになることもあります。ほかにも、ヘモグロビン尿と呼ばれるコーラ色の尿が現れることもあるでしょう。
発作性夜間ヘモグロビン尿症の患者さんは、血栓(血の塊)が詰まる血栓症を起こす可能性があります。ただし、なぜ血栓症が生じるのかは明らかになっておらず、研究が続けられています。
発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療では、症状を抑える効果のある薬が登場しており、定期的に点滴によって薬を投与する治療を行います。
また、貧血の症状が強く現れている場合には輸血を行うこともあります。さらに、血栓症や再生不良性貧血など、ほかの病気を合併している場合には、それぞれの病気に対する必要な治療を行っていきます。
発作性夜間ヘモグロビン尿症の薬物療法を受ける患者さんには、製薬会社が発行している「患者安全性カード」の携帯が推奨されています。お話ししたように、発作性夜間ヘモグロビン尿症は、患者数の少ないまれな病気です。薬による副作用で体調が悪くなり受診した医療機関に、必ずしも発作性夜間ヘモグロビン尿症の診療経験があるとは限りません。
この患者安全性カードには、発熱や頭痛、嘔吐や筋肉の痛みなど副作用によって現れる注意すべき症状が書かれています。該当する症状が現れた場合には、医療機関を受診した際にカードを提示することで、病気について知らせるとともに必要な治療を受けることができるでしょう。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、患者数が少なくまれな病気です。決められた頻度で継続して治療を受けていただくことが、重症化を防ぐうえでとても大切です。継続的に診療経験のある医師にかかり、適切な治療を受け、重症化を防いでほしいと思います。
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