概要
一般的に「背骨」ともいわれる脊椎は、合計26個の椎骨から成り立っています。
- 頚椎:7個
- 胸椎:12個
- 腰椎:5個
- 仙椎:1個(5個の骨が一つに癒合している)
- 尾椎:1個(3~5個の骨が一つに癒合している)
それぞれの椎骨は、主要部である円柱状の椎体と、椎弓や棘突起、関節突起などにより構成されています。脊椎骨折とは、これらの椎骨のいずれかもしくは複数が骨折することです。骨が完全に折れている状態だけでなく、ヒビが入っている、へこんでいる、粉砕しているなどの状態は、すべて骨折に該当します。骨粗しょう症により骨が弱くなっている場合、日常的な動作により小さな負荷がかかることでも脊椎椎体骨折は起こります。
脊椎のなかには神経の束である脊髄が通っており、非常に大きな外力を受けた場合などには、脊椎骨折に伴って脊髄が損傷され、麻痺症状などが生じることがあります。
原因
骨粗しょう症により骨がもろくなっている場合、日常的な動作や姿勢により生じる小さな外力でも脊椎椎体骨折を来すことがあります。具体的には、重いものを持ったときや中腰の姿勢をとったときに骨折が生じる例がみられ、骨粗しょう症になりやすい閉経後の女性に多くみられます。
強い外力を受けることで生じる外傷性の脊椎骨折の原因としては、転倒や転落、交通事故などが挙げられます。非常に強い衝撃が加わった場合、脊椎の骨折だけでなく、脊髄損傷が生じることもあります。
また骨折により脊椎が徐々に変形したり不安定になったりすることで、時間が経過してから脊髄にも損傷が及び、しびれや麻痺などの症状が現れる場合もあります。(遅発性脊髄障害)
このほか、がんが脊椎に転移し、骨が破壊されて骨折が生じる場合があります。
症状
外傷によって骨折した部位には、強い痛みや腫れが生じます。また骨折の重症度や仕方によっては、体表から変形がみてとれることがあります。このほか、骨のぐらつき(不安定性)も脊椎骨折により生じる症状として挙げられます。がんの骨転移による脊椎骨折の場合も、背中の痛みや腰痛が生じます。
一方、日常動作によって生じた骨粗しょう症性の脊椎椎体骨折の場合、安静時には痛みを自覚しにくい傾向があり、ご本人も骨折していたことに気がつかないことがあります。胸椎や腰椎を骨折した場合、胸腰移行部といわれる背中や腰のあたりに軽い鈍痛が生じ、寝ていた状態から体を起こしたときや立ち上がったときに痛みが悪化することがあります。また複数の椎体に骨折が生じると、腰や背中が丸く曲がり身長が低くなります。
同じ骨粗しょう症性の骨折でも、尻もちをついたときなど、軽微ながらも明らかに外力がかかった場合は、骨折した部分に強い痛みが生じます。
脊椎骨折に脊髄損傷を伴う場合、しびれや麻痺などの神経症状が生じます。損傷した部位によっては、下半身や四肢(手と足)がまったく動かなくなり、感覚がなくなるケースもあります。
検査・診断
外傷性の脊椎骨折の場合、多くは現れている症状とMRI検査やX線(レントゲン)検査による骨折部位の確認により診断をつけることができます。このとき、脊髄損傷を合併していないかどうかも確認します。
骨粗しょう症性の脊椎椎体骨折が疑われるときには、触診で背中に痛みがないか、動きに異常はないかを確認し、骨密度の測定や画像検査を行います。
治療
腕や足の骨折では、応急処置として固定する際、固定材をあてようとして患部が多少動く場合があります。しかし、脊椎骨折の場合は、患部が動くことで脊髄に損傷が及んでしまう危険性があります。周囲の方は、なるべく患者さんの脊椎を動かさないようにし、すみやかに救急車を呼びましょう。
搬送先の医療機関では、骨折の種類や重症度に応じて、保存療法や手術療法が行われます。保存療法とは、ギプスなどを用いて脊椎がぐらつかないよう固定し、骨を正しい位置で癒合させる治療です。治療後は鎮痛剤などを使いながら、可能な限り早期にリハビリテーションを開始します。
脊椎骨折の手術法は多岐にわたりますが、例として金属製のプレートを用いて脊椎を固定する方法や、骨セメントを注入する方法などが挙げられます。骨粗しょう症性の骨折の場合は、基本的にコルセットやギプスなどを装着する保存療法で治癒を目指し、効果が得られない場合に手術を検討します。また、治療においては今後の骨折を予防するための食事療法や薬物療法、転倒を防ぐための運動療法なども重要な位置付けを占めます。
医師の方へ
「脊椎骨折」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「脊椎骨折」に関連する記事
関連の医療相談が12件あります
事故による腰椎圧迫骨折
一年前に事故で腰椎圧迫骨折して入院して、三ヶ月入院して退院してからは、近くの整形外科でリハビリと電気治療を10ヶ月程したのですが全然、痛みも引かずに治りそうに無いので違う病院に行ったら、MRIを取って来る様に言われ撮ると、普通は、骨は真っ黒に写っているが圧迫骨折した骨は、白く写っていて先生も、おかしいと言うだけで、根本的な治療方針を言うてくれずに、とりあえずリハビリして言うけど…それでは前の整形外科と同じと思って、この先は…どうすれば治るのか分からない。総合病院で診てもらうか、それとももう一度違う脊椎専門の整形外科に行く方がいいか分からない。
痛みがありにも出来ません
腰が痛み 3年まえから 痛みがり手術はできない 痛みがあるので 歩くと痛みがあり大変見たいです
頚椎症とは治るのでしょうか
半年くらい前から首の痛みをかかえている家族が病院に行ったところ、頚椎症と診断されました。 首の骨が2箇所潰れていると言われ 理学療法士によるリハビリと 病院で電気?をあてる治療をするとのことです。 原因や治るのかどうかがあやふやなのですが、 潰れてしまった首の骨はリハビリで元に戻ることはあるのでしょうか? なお、一回目の診察時に電気を当てたところ痛みは軽減されたそうです。
二度目の放射線治療で心配なこと
肺がんで放射線治療を連続5回やることになりましたが、土日をまたぐと二日途切れますが、間をあけても問題ありませんか。素人考えでは集中治療の効果がそがれると思うのですが、気にするほどのことではないですか。主治医と会うのは治療計画を聞く日で大分先になるため、その前に通常どうなのかを知りたく質問しました。待つ時間が長いと色んなことが気になって困ります。あと放射線は二度目で線量も累積されるかもしれないため(前回は障害副作用何もなし)治療中の障害として、肋骨の骨折、晩期の副作用として肺臓炎や脊髄の損傷があるそうですが、まれとのことと言われますがかなり覚悟しておいた方がよいですかね。覚悟が決まらなくてすいません。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
脊椎骨折を得意な領域としている医師
-
-
腰部脊柱管狭窄症
- 内視鏡を用いた腰椎椎間板ヘルニア切除術(MED)、腰椎開窓術(MEL)、頚椎椎弓切除術(c-MEL)
- 経皮的スクリュー挿入法(PPS)を併用した脊柱固定術(MIS-TLIF)
- 側法アプローチによる脊柱固定術 (XLIF、OLIF)
-
腰椎椎間板ヘルニア
- 内視鏡を用いた腰椎椎間板ヘルニア切除術(MED)
- 経皮的スクリュー挿入法(PPS)を併用した脊柱固定術(MIS-TLIF)
- 側法アプローチによる脊柱固定術 (XLIF、OLIF)
-
脊椎骨折
- 経皮的スクリュー挿入法(PPS)を併用した脊柱固定術
- 側法アプローチによる推体置換前方再建(XCORE)
- 骨粗鬆性圧迫骨折に対する経皮的バルーン椎体形成術 (BKP)
-