編集部記事

蜂窩織炎は身近な細菌が原因となる感染症 ~引っかき傷や水虫による炎症部位などから侵入する~

蜂窩織炎は身近な細菌が原因となる感染症 ~引っかき傷や水虫による炎症部位などから侵入する~
渡辺 大輔 先生

愛知医科大学 皮膚科 教授

渡辺 大輔 先生

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蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、皮膚とその下の皮下脂肪組織に起きる細菌感染症です。患部に赤みや痛み、または圧迫した際の痛みが見られたり、重症の場合は、発熱や悪寒、頭痛低血圧、錯乱などが見られたりすることもあります。

本記事では蜂窩織炎の原因をメインに、感染経路ごとの予防策などについても詳しく解説します。

蜂窩織炎の原因となる細菌の種類は数多くありますが、中でも一般的なものがレンサ球菌とブドウ球菌といわれています。どちらも体表に存在する細菌で珍しいものではないため、日常での感染が大いにあり得ると考えられます。

レンサ球菌は酵素によって感染範囲を抑えようとする組織のはたらきを妨げるため、炎症が体の一部にとどまらず、皮膚の中で一気に広がるという特徴があります。

レンサ球菌は通常であれば人体に害を及ぼすことはないとされ、感染を起こしても健康な人では発症しないこともあります。しかし、レンサ球菌は、A群レンサ球菌、B群レンサ球菌、緑色レンサ球菌などのいくつかのグループに分けられ、特定の感染症を引き起こすレンサ球菌もあります。なかでも、蜂窩織炎はA群レンサ球菌の感染によって引き起こされるとされています。

ブドウ球菌が原因となる蜂窩織炎は、傷口や(のうよう)の周りに限局して生じるのが一般的です。

また、ブドウ球菌には黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などさまざまな種類がありますが、なかでも黄色ブドウ球菌は、蜂窩織炎や食中毒、皮膚感染症などの原因菌となるものです。さまざまなたんぱく性毒を産生するため病原性が強く、もっとも危険とされています。ただし、健康な成人の場合、鼻腔(びくう)に約30%、皮膚に約20%存在するとされる菌で、保菌していても症状は現れないこともあります。そのほか、かつて有効だった抗菌薬に耐性があるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌も、蜂窩織炎の原因菌として増えているとされています。病院や介護施設など、菌にさらされやすい環境にいる場合はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に感染することがあります。

蜂窩織炎の感染経路は、主に外傷や潰瘍(かいよう)と、白癬水虫)などの真菌感染症の2種類があるとされています。それぞれの詳細と予防策は以下のとおりです。

蜂窩織炎の原因となる細菌は引っかき傷や刺し傷、虫刺され、やけどをした部位など、皮膚にできた開口部(傷口)から侵入するとされています。また、体液がたまって皮膚が腫れている部分は特に感染しやすいと考えられています。

蜂窩織炎の予防法としては、細菌に感染しないための環境づくりが大切です。傷ができたときはすぐに水で洗い、やけどや、深爪、巻き爪など皮膚を傷つける要因となるものは皮膚科などで治療することを検討するとよいでしょう。また、虫刺されや傷の予防として長袖などで皮膚の露出を避けることも有効です。そのほか、ひび割れなどの対策として毎日保湿剤で保湿をして皮膚の清潔を保つとよいでしょう。

白癬菌(はくせんきん)の感染(水虫)など、真菌感染症が原因となることもあります。特に足の指の間におこる水虫(趾間型(しかんがた)の足白癬)の場合、指の間のひび割れや炎症部位から細菌が侵入して蜂窩織炎につながることがあります。蜂窩織炎は足、膝から下にできることが一般的で、その原因には足白癬が考えられています。そのため、足白癬の治療はもちろん、普段から足を清潔にしておくことも大切です。

ただし、目に見える傷のない正常な皮膚でも蜂窩織炎が発生することがあるといわれており、感染経路が不明なケースもあるため注意が必要です。特に糖尿病、慢性静脈不全やリンパ浮腫の患者は蜂窩織炎にかかりやすいとされているため、上記の予防法を心がけるとよいでしょう。

蜂窩織炎はもともと体表に存在する細菌が原因となることがあるため、身近な細菌感染症であるといえます。しかし、日頃から予防できる点もあるため傷口は清潔にする、保湿を心がける、足白癬などの病気は皮膚科で治療するなどを心がけるとよいでしょう。

また、蜂窩織炎かどうかを自己判断することは難しいため、皮膚の赤み、痛みなどが見られる場合は皮膚科の受診を検討しましょう。

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