概要
貨幣状湿疹とは、円形から楕円形をした貨幣状の湿疹のことで、強いかゆみを伴います。小さな丘疹が徐々に大きくなり、ジュクジュクした表面をかさぶたや角化した皮膚が覆う状態が特徴です。
全身にできる湿疹ですが、特に下肢と手の甲にできやすく、中年期以降に多く発症するといわれています。発症原因はさまざまで、何らかの基礎疾患に由来するものもあり、内科的な検査が必要になることもまれではありません。
発症段階では、湿疹は数個のみですが、適切な治療が行われずに放置されると、非常に強いかゆみを伴った湿疹が全身に広がることがあるため注意が必要です。この状態を自家感作性皮膚炎といいますが、貨幣状湿疹に続発しやすく、難治性のため治療に時間を要することが特徴です。
原因
貨幣状湿疹の原因はさまざまです。
皮膚炎
貨幣状湿疹は、主に乾燥した肌に生じる乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などの皮膚炎が原因となります。秋から冬にかけて症状が悪化します。
これらの皮膚炎は、乾燥によって皮膚のバリア機能が低下したうえに、摩擦や、さらなる乾燥などの刺激が長期にわたって加わることで、かゆみの原因であるヒスタミンや炎症を引き起こすサイトカインが産生されて発症すると考えられています。
慢性炎症
何らかの皮膚炎に併発するのではなく、金属アレルギーや歯周病、扁桃腺炎といった慢性炎症が原因となることもあります。どのようなメカニズムで発症するかは明確に解明されていません。
また、貨幣状湿疹に続発しやすい自家感作性皮膚炎は、貨幣状湿疹を掻きむしることで皮疹の内容物が崩壊したり、細菌や真菌感染を起こしたりすることで生じるアレルギー反応の一種であると考えられています。
症状
脚の脛や手の甲などに小さな丘疹が生じ、それらが癒合して大きくなり、直径1~5cmほどになります。形は楕円形~円形であり、若干の盛り上がりがあって貨幣のように見えることから、「貨幣状」と名付けられました。
進行すると、皮疹の表面はジュクジュクと水っぽくなり、かさぶたや角化した分厚い皮膚が散在するようになります。睡眠を障害されるほどの強いかゆみを生じ、無意識に掻きむしることで自家感作性皮膚炎が誘発されます。この場合、体幹や背中、顔にまで皮疹が広がることもまれではありません。
検査・診断
貨幣状湿疹は、湿疹の外観や強いかゆみ症状などの臨床所見から診断されます。しかし、貨幣状湿疹と見た目が類似していてかゆみを伴う他の湿疹もあり、多くの場合では鑑別診断が必要になります。
特に臀部(お尻)にできたものはタムシとの鑑別が必要であり、角質の一部を顕微鏡で観察するKOH(真菌)検査を行います。また、皮膚がんや乾癬との鑑別のために湿疹の病理組織検査が行われることもあります。
アレルギーが原因と疑われる場合には種々のアレルギー検査、慢性炎症が疑われるときには血液検査や画像検査などが必要に応じて行われます。
治療
貨幣状湿疹は悪化すると治療に時間がかかるため、早期に適切な治療を行う必要があります。一般的にはステロイド外用薬が使用されます。
かゆみがひどいときには抗ヒスタミン薬を 、湿疹に細菌感染が生じているときには抗菌薬を使用します。自家感作性皮膚炎に進行した場合には、ステロイドの内服治療が行われることもあります。
また、症状を悪化させないために、保湿効果のある外用薬が使用されることもあります。
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