合併症
造血幹細胞移植は上でも述べたとおり、治療効果は高い一方でリスクもある治療方法です。治療によって生じる合併症には大きく分けて次の3つのものが挙げられます。
“前処置”の副作用
前処置によって、がん細胞だけではなく血液中の正常な細胞も著しく減少するため、重篤な感染症にかかりやすくなる、出血しやすくなる、貧血になりやすくなるといった症状が現れるようになります。また、抗がん剤の副作用である口内炎・脱毛・吐き気・下痢などの症状に悩まされるケースも少なくありません。
さらに、前処置によって卵巣や精巣の機能に大きなダメージが加わると将来的に不妊となる可能性が高くなることも問題となります。
拒絶反応
同種造血幹細胞移植では、患者の免疫細胞が、移植された造血幹細胞を“異物”と見なし拒絶反応が起こることがあります。近年では拒絶反応を予防するための前処置や免疫抑制剤などが進歩したため拒絶が起こるケースは少ないですが、骨髄非破壊的造血幹細胞移植や臍帯血移植では拒絶が起こる確率が少し高くなります。
移植片対宿主病
造血幹細胞とともに移植されたドナーの免疫細胞が、患者の正常細胞(組織)を異物とみなして、攻撃するようになる合併症です。生着前後から発症することが多く、皮疹、下痢、黄疸が3大症状ですが、その治療薬であるステロイドで制御できない場合、重症感染症や肝臓、肺、腎臓などの重要臓器の機能不全などが生じることがあり、その場合には命に関わるケースも珍しくありません。
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4年ぶり完全オフライン開催――日本血液学会学術集会・豊嶋会長が感じた熱気と開催にかける思い
「再会」をテーマに第85回日本血液学会学術集会が2023年10月13~15日、東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内)で開かれる。新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)の5類移行後最初の同学会学術集会は“満を持して”完全オフライン(現地開催)となる。会長を務める豊嶋 崇徳教授(北海道大学大
【第84回日本血液学会レポート】同種造血幹細胞移植に対するCOVD-19ワクチンの有効性――低抗体価リスク因子、中和抗体薬との併用は(3800字)
造血幹細胞移植(HSCT)患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症化・死亡リスクが高く、感染予防が重要となる。長藤 宏司氏(久留米大学医学部 内科学講座 血液・腫瘍内科部門 主任教授)は、第84回日本血液学会学術集会(2022年10月14日~16日)の教育講演において、主に同種H
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