概要
一回の月経の出血量が異常に少なく、一般的に20g 以下の場合を「過少月経」といいますが、臨床的には患者さんの訴えで判断されるため、それほど厳密ではありません。一般に月経血量は一周期分で20~140g、 平均で50~60gとされています。過多月経と比較して臨床的に問題となることはあまり多くはありません。
子宮内癒着・子宮内膜炎などの器質的な原因によるものと、そうした病変がない機能的なものとにわかれます。何が原因となっているのか、検査で鑑別することが重要です。また、出血日数か2日以内のものを「過短月経」といい、過少月経と過短月経は互いに随伴し、同様の原因で起こります。
原因
機能的な原因
稀発月経、高プロラクチン血症、甲状腺機能異常などがあります。体内ではさまざまなホルモン同士が影響しており、卵巣から出るホルモン以外の異常でも、月経の異常を起こすことがあります。また、経口避妊薬(エストロゲン+黄体ホルモン)の長期服用でも起こることがあります。
器質的な原因
子宮内癒着・子宮頸管の癒着、外子宮口の癒着閉鎖、子宮発育不全症などがあります。子宮内・子宮頸管の癒着は、子宮内容清掃術・子宮内掻爬術後に、また、外子宮口の癒着閉鎖は、子宮頸部円錐切除術後の合併症として生じることがあります。
検査・診断
問診
問診では、薬剤の服用歴や既往歴を確認します。たとえば、薬剤の一部には血液中のプロラクチンを上昇させるものがあり、高プロラクチン血症となり過少月経の原因となります。経口避妊薬(エストロゲン+黄体ホルモン)の長期服用も原因となります。子宮内容清掃術、子宮内掻爬術や子宮頸部円錐切除術の既往があればその合併症が原因である場合が考えられるため確認をします。
血液検査
血液中のプロラクチン値や、そのほかの卵巣ホルモンなどの値を確認します。甲状腺異常がないか、甲状腺ホルモン値もみることがあります。
内診・超音波検査
主に子宮の形状や内膜の状態を把握するために行います。
MRI
さらに詳しく確認が必要な場合に行います。また、脳の下垂体やその付近に腫瘍がある場合にも原因となることがあるので、頭部の精査を行うことがあります。
治療
機能的な原因の場合には、内分泌的な異常(ホルモン異常など)に応じた治療を行うことになります。月経が周期的にきている場合は、妊娠の希望がなければ経過観察をします。妊娠の希望がある場合は、排卵障害などにより妊娠しにくい場合があるので、ホルモン療法を行います。
器質的な原因(子宮内癒着、外子宮口閉鎖、子宮発育不全など)がある場合には、その治療を原則とします。子宮内癒着や子宮発育不全などでも今後の妊娠希望がなく月経痛や月経血のうっ血などがなければ経過観察でよい場合もあります。
妊娠の希望がある場合で子宮内癒着の場合には、癒着剥離術のあと、再癒着防止のため子宮腔内バルーン、IUD(子宮内器具)の留置をします。その後エストロゲン投与や、カウフマン療法などホルモン剤治療を行います。子宮発育不全で希発月経を伴っている場合などは個々に応じて必要なホルモン治療を行います。
治療に関しては年齢や妊娠希望、器質的疾患の有無によって異なるため、担当の医師とよく相談することが大切です。
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