朝起きると手首の関節が動かしにくい、手指の関節が腫れているなどの症状がみられるとき、疑われる病気のひとつに関節リウマチがあります。
今回は、関節リウマチのメカニズムや症状について、東京都立多摩総合医療センター 副院長の島田 浩太先生にお話を伺いました。
※関節リウマチの治療法については記事2『関節リウマチ薬の治療法 抗リウマチ薬の重要性について』をご覧ください。
関節リウマチは、手首や手指をはじめとした全身の関節の炎症を主体とする病気です。また、その炎症は長期的に持続する特徴があります。
たとえば、風邪をひいて喉に炎症が起きて腫れたとしても、病原体が消失すれば腫れは徐々に引いていきます。しかし、関節リウマチでは炎症が持続または繰り返します。持続的な炎症が続くことで、何も治療をしなければ、関節や関節周囲の組織(腱など)が破壊されていきます。
2018年6月現在、関節リウマチが発症する原因は明らかではありませんが、発症しやすいいくつかの要因については指摘されています。
たとえば、喫煙や歯周病です。いずれも体のなかに慢性的な炎症が起きていることが原因ではないかと推測されています。また、関節リウマチの発症リスクを高める特定の遺伝子があることも少しずつわかってきています。
ただし、これらの要因があるからといって、必ずしも関節リウマチを発症するわけではなく、複合的にいくつかの要因が組み合わさり発症すると考えられています。
関節リウマチがなぜ発症するのかはわかっていませんが、関節リウマチの患者さんの体で何が起こっているのかについては、少しずつ明らかとなってきています。
関節リウマチの患者さんの体のなかでは、炎症性サイトカイン(炎症を起こす物質)と抗炎症性サイトカイン(炎症を抑える物質)のアンバランスが生じていることがわかっています。
先ほどもお話ししたように、通常は喉に炎症が起きても、病原体が消失すれば腫れは徐々に治まってきます。これは炎症に対して抗炎症性サイトカインがはたらくことで炎症が抑制されるためです。
しかし関節リウマチの患者さん場合、抗炎症性サイトカインに比べて、炎症性サイトカインのほうが優位にはたらいていることがわかっています。
炎症性サイトカインのはたらきが強すぎるのか、または抗炎症性サイトカインのはたらきが弱すぎるのかについては明らかではありませんが、いずれにしても両者のアンバランスが関節の炎症を持続させていることがわかっています。
そして、このようなメカニズムがわかってきたことで、関節リウマチの治療法は近年目覚ましく発展してきています(詳しい治療法については記事2『関節リウマチ薬の治療法 抗リウマチ薬の重要性について』をご覧ください)。
関節リウマチでは、最初に関節の痛みや腫れ、朝のこわばりに気づいて病院を受診される方が多いです。
関節リウマチでは、手首や手指の関節に痛みや腫れが現れることが多いです。そのほか、足の指や肩、膝、顎などの関節にも症状が現れることもあります。
このように、全身のあらゆる関節に症状がみられるため、他の関節疾患と見分けにくいことがあります。たとえば、肩や膝の痛みが加齢によるものだと思っていたら、それが関節リウマチの最初の症状だったり、顎関節症の治療をしていたら実は関節リウマチだったりすることもあります。
関節リウマチの典型的な症状である朝のこわばりがみられたり、複数の関節に症状が出てくると診断されやすいのですが、単独の関節症状のみでは関節リウマチが見逃されてしまうことも少なくありません。
筋肉は、血液を押し流すポンプのような役割を担っています。そのため、就寝中に筋肉を動かさない状態が続くと、血液に乗って流れるはずの炎症物質が関節内にうっ滞し、朝起きると関節がこわばる症状が現れるといわれています。また、関節のこわばりは起床時に限らず、長時間座り続けたときなどにも現れることがあります。
患者さんのなかには、しばらく体を動かしているうちに、こわばりの症状が改善してくるという方もいらっしゃいます。
関節リウマチによる炎症が長期間持続することによって、関節や関節周囲の構造が変化します。たとえば、骨や軟骨が溶けてしまったり、関節近くにある腱の走行が変わってしまったりしてしまいます。すると、外見上の変化や強い痛みが生じます。
また、痛みによって体を動かさない状態が続くと、筋力の低下もみられます。
関節リウマチの症状は関節に限らず、全身のさまざまな臓器にも現れます。代表的な関節外症状としては、以下のようなものが挙げられます。
など
関節リウマチは血管炎を伴うことがあり、血管炎によって体のさまざまな場所に症状が現れます。なかでも代表的なものが、上強膜炎・皮膚潰瘍・多発性単神経炎です。
上強膜炎とは、強膜*と結膜**の間にある上強膜に起きる炎症のことです。
上強膜炎では、目が充血して赤くなったり、まれに眼球に穴が開いてしまうこともあります。
*強膜……眼球の外側を作る白目の部分
**結膜……眼球を覆っている眼球結膜と、まぶたの裏側にある眼瞼結膜がある
関節リウマチに血管炎を伴っている場合、ちょっとした傷から皮膚潰瘍(深くえぐれたようになった状態)を生じてしまうことがあります。
体のある部分が損傷すると、血液中の成分によって損傷部位が修復されます。しかし、血管に炎症が起きていると血液の流れが滞るため、組織を修復するための血液が十分に行きわたりません。そのため、傷口が修復されずに、皮膚潰瘍を形成してしまいます。
多発性単神経炎とは、体の別の部位にある複数の末梢神経が障害される病気です。手足の末梢神経に痺れなどの症状が現れます。
皮膚の下に骨のような硬い結節ができることをリウマトイド結節といいます。結節は骨のような硬さであり、患者さんのなかには「骨が飛び出してきた」といって病院を受診され、調べてみたらリウマトイド結節だったという方もいらっしゃいます。
関節リウマチによって、間質性肺炎*や胸膜炎**などの呼吸器障害が起こることもあります。これらを発症すると、それぞれ咳や息切れ、胸のなかに水が溜まるなどの症状が現れます。
*間質性肺炎……肺の間質という組織が炎症し、繊維化(硬くなってしまうこと)が起こる病気
**胸膜炎……肺を包んでいる胸膜に炎症が起こる病気
また、関節リウマチでは発熱や疲労感などの全身症状もみられます。
関節リウマチでみられる発熱は、37度台でとどまることがほとんどです。
そのため、38度以上の発熱がみられる場合には、何らかの感染症を合併している可能性があります。また、実は関節リウマチではなくほかの膠原病*である可能性もあるため、高熱が出たときには十分に注意する必要があります。
膠原病…何らかの自己免疫などによって、全身のあらゆる臓器に炎症が起こる病気の総称。関節リウマチもその一種。
少し動いただけで疲れてしまうことも、関節リウマチの特徴的な症状です。
健康な人には理解されにくいほどの疲労感のため、「なまけていると思われているではないか」と悩んでしまう患者さんは多く、結果的に頑張って動いて、疲労をさらに促進させてしまいます。ですから、周囲の人は関節リウマチのこのような症状があることについて、きちんと理解しておくことが非常に重要です。
東京都立多摩総合医療センター 副院長
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