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関節リウマチは早期に適切な治療を始めることが重要――関節超音波検査で早期診断へ

関節リウマチは早期に適切な治療を始めることが重要――関節超音波検査で早期診断へ
甲斐 基一 先生

三重膠原病リウマチ痛風クリニック 内科 院長

甲斐 基一 先生

目次
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関節リウマチは、免疫の異常により関節に炎症が生じて、進行すると関節が破壊されたり変形したりすることもある病気です。かつては治療が難しい病気でしたが、近年は薬物療法が進歩したこともあり、ほとんど症状がない状態を目指すことができるようになりました。今回は、三重膠原病(こうげんびょう)リウマチ痛風クリニック 内科院長 甲斐 基一(かい もとかず)先生に、関節リウマチの検査や治療、クリニックで力を入れている取り組みについてお話を伺いました。

関節リウマチとは、免疫の異常によって全身の関節に炎症が起こり、痛みによって体の動きが困難となり、日常生活に支障がでる病気です。進行すると関節が破壊され変形が起こり、機能が障害されることがあります。

患者さんの約80%は女性で、どの年代でも発症しますが、以前より高齢で発症する方が多く、70歳代、80歳代で発症する方もいます。

発症の原因はまだよく分かっていないものの、遺伝的な要素に、喫煙歯周病、感染、ストレスなどの環境的な要因が加わって発症すると考えられています。特に喫煙、歯周病は発症の要因だけでなく、病気の活動性や治療抵抗性にも関係すると考えられています。

関節リウマチは、初期には手指や手首の関節に痛みや腫れ、こわばりなどの症状が現れることが多いのですが、足の指に症状が生じることもあります。放置すると肩、肘、膝などの大きな関節にも症状が現れることがあります。また、高齢で発症した関節リウマチの方では、最初から肩や膝などの大きな関節に症状が現れやすい傾向があります。

インフルエンザなどの感染症でも関節痛が生じることがありますが、これらは通常1週間ほどで治まります。手指の関節痛や腫れ、こわばりが数週間以上にわたって続く場合、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医(以下、リウマチ専門医)を受診することが望ましいでしょう。

患者さんによりますが、微熱や倦怠感などの全身症状が現れたり、先に肺の病変が生じたりすることもあります(間質性肺疾患気管支拡張症など)。そのほか、結膜炎など目の症状、血管の炎症、神経障害といった症状が多数出現し、悪性関節リウマチという病態を生じる場合もあります。

写真:PIXTA

関節リウマチを診断するためには複数の検査が必要です。血液検査をはじめ、X線検査や超音波検査、MRI検査などの画像検査を行います。

血液検査は、主に関節リウマチの原因となる自己抗体*や炎症の有無を確認し、関節リウマチの診断やそれ以外の病気を除外するために行います。また、治療薬を考えるうえでも肝機能や腎機能、肝炎ウイルスや結核菌の感染を確認するスクリーニング検査などを行う必要があります。

*自己抗体:自身の体を異物と誤って認識して攻撃する抗体。関節リウマチの診断においては、リウマトイド因子(RF)や抗シトルリン化ペプチド/蛋白(CCP)抗体が参考にされる。

画像検査は、血液検査と同様に最も重要で、関節リウマチで生じる関節の炎症(滑膜炎)や関節周囲の骨の傷(骨びらん)や関節変形などを確認するために必要です。X線検査、超音波検査、MRI検査はそれぞれ役割が異なるため、それぞれの利点を生かしながら患者さんの状態によって適切なものを選択します。

当院では初診時にはX線検査に加えて、超音波検査を行っています。滑膜の腫脹や血流の増加(炎症を意味する)をリアルタイムで確認できることに加え、患者さん自身も関節リウマチの状態を把握できるメリットがあります。

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写真:PIXTA

関節リウマチの治療は、重症度や年齢、合併症、経済的な負担などを勘案して、患者さんごとに丁寧に検討していく必要があります。抗リウマチ薬は効果や副作用がそれぞれ異なるほか、妊娠や出産といったライフイベントに合わせて治療薬を変更することも必要です。関節リウマチという病気を診るだけではなく、患者さん一人ひとりの生活にも配慮しながら、それぞれの方の思いもくみ取りつつ、先を見据えて治療計画を立てていくことが大切だと考えています。

関節リウマチの治療で最も重要なのは薬物療法です。原則として、メトトレキサートという飲み薬をできるだけ早く開始し、効果が十分に発揮されるまで増量します。具体的には、週6〜8mgから開始して週12〜16mg程度まで増量しながら、寛解(かんかい)*を目指します。しかし、十分な効果が出る前に肝障害や吐き気、倦怠感などの副作用によって増量が難しいこともあり、そのような場合はメトトレキサートを注射薬に変更したり、他の抗リウマチ薬の併用を検討したりします。メトトレキサートで寛解に至らなかった場合は、生物学的製剤**やJAK阻害薬***に変更したり、追加したりすることを検討します。これらの薬剤によって寛解を達成できることが多くなってきました。

患者さんによりますが、当院では治療を開始してから寛解導入までは2〜4週に1回、寛解導入後は1〜2か月ごとに通院いただくことが多いです。

*寛解:関節リウマチの炎症や痛みが治まり、ほとんど症状が出ていない状態のこと。ただし病気が完全に治ったわけではなく、また症状が再燃する可能性がある。

**生物学的製剤:バイオテクノロジーによって作られた薬で、免疫異常を改善する作用、炎症や関節破壊を抑制する作用がある。点滴か皮下注射で投与する。

*** JAK阻害薬:細胞の内側にあるヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素を阻害することで炎症や関節破壊を抑制する内服薬。

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写真:PIXTA

薬物療法の進歩により手術を必要とする方は減少していますが、関節に変形が生じた場合は手術が必要になります。近年は荷重がかかる膝や股関節(こかんせつ)の手術は減少しているものの、手指や足の関節形成術などが多く行われています。

足趾(そくし、あしゆび)に変形をきたすと外反母趾(がいはんぼし)や内反小趾になるほか、脱臼するなどして靴が合わなくなり胼胝(たこ)が生じやすくなります。足は日常の生活の中でとても大切な機能を担っているため、患者さんがなるべく快適に過ごせるように必要な場合はこれらの手術を検討します。

手術後は必要に応じてリハビリテーションも行います。

関節リウマチの治療においては、生活習慣を改善する基礎療法も大切です。一番大事なのは禁煙ですが、過労やストレスを避けることも心がけていただきたいと思います。

関節リウマチの治療には、内科的な要素と整形外科的な要素があります。当院にはリウマチ専門医である内科の医師と整形外科の医師が在籍し、それぞれの利点を生かしながら、連携して診療にあたっています。患者さんに適切な検査を実施するため複数の超音波診断装置を備えているほか、関節超音波検査に関する十分な知識と経験を有する日本リウマチ学会登録ソノグラファーも3名在籍しています(2025年10月時点)。

これまで診療してきた患者さんの中で印象に残っているのは、ある20歳代の女性の方です。

初診の際は、関節リウマチのため、まるで骨折したときのように右腕を添え木で固定して来院されたのです。そのように生活に大きな支障がでている状況は大変だとすぐに治療を始めました。幸いなことに速やかに寛解に至り、妊娠を希望されていたので、患者さんと相談しながら計画を立てて治療を行い、現在は寛解を維持したまま無事妊娠されました。患者さんとは丁寧にコミュニケーションを重ねていましたので、お互いに特に不安なく妊娠を喜べたのはよかったと感じています。

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写真:PIXTA

この10〜20年で関節リウマチの治療は大きく変化し、現実的に寛解が達成できるようになってきました。一方で、difficult to treat-RA(D2T-RA)といわれ寛解に至ることが難しい難治性の方やがんなどの合併症によって十分な治療ができない方、あるいは高齢で認知症を併発する方などもいらっしゃいます。関節リウマチは非常に多角的な視点で診る必要がある病気であり、それぞれの患者さんに適切な治療を見つけて提供していくことは容易ではありませんが、非常に大事なことだと思っています。

関節リウマチは、早期に発見し早期に治療を行うことが最も重要です。また治療を受けていたとしても、それが適切でなければ進行してしまう可能性もあります。

当院は気軽に受診していただけるクリニックです。まずは、現在の状態を知ることが大事ですので、気になることがあれば一度受診していただければと思います。そのうえで、ご自身に合った治療を一緒に考えていきましょう。

提供:大正製薬株式会社

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