治療
1型糖尿病の治療は、適切なインスリン投与が基本になります。食事や運動は血糖値に大きく影響を与える因子であるため、食事の取り方や運動量にも注意が必要です。そのほかの治療法として、通常のインスリン療法では治療が困難な例において移植手術が検討されることもあります。
インスリン療法
1型糖尿病においては、血糖値を適切に管理するために多くのケースで1日複数回のインスリン投与が必要となります。
そのため、インスリン療法では患者自身がインスリン製剤を継続的に投与(自己注射)して血糖を管理することが求められます。インスリン製剤を投与する方法として、“頻回インスリン注射療法”と“持続皮下インスリン注入療法”があります。
頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の専用注射器を用いて1日に複数回インスリン注射を行う方法です。インスリンは極細の注射針を用いて腹部、太もも、上腕、臀部(お尻)に注射(皮下注射)します。インスリン注射の投与量はダイヤルで細かく設定でき、投与前の血糖値や食事量を目安に調整します。最近では自宅で手軽に血糖値を測定できる機器が普及しており、特に血糖変動の大きい1型糖尿病患者には、連続して血糖値を測定することのできる持続血糖モニター(CGM)が有用です。
持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置したカニューレ(細い管)からインスリンを持続的に注入する方法です。インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。また、現在のインスリンポンプではCGMと連動して自動的にインスリン投与量を調整する機器も登場しています。
膵臓・膵島移植手術
頻回インスリン療法や持続皮下インスリン注入療法を用いても血糖変動が大きい場合は、膵臓移植や膵島移植の適応となる場合があります。いずれも臓器提供者(ドナー)が必要であることや、移植を受けた後は拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬を服用し続ける必要がありますが、血糖値の安定化や糖尿病の根治を目指せる治療法です。
膵臓移植は全身麻酔で行い、ドナーから提供された膵臓を下腹部に移植します。移植した膵臓が正常に機能すれば、1回の移植手術でインスリン療法を必要としない状態になれる可能性がありますが、全身麻酔による手術を必要とするため患者の身体的負担が大きいという課題があります。
膵島移植では、ドナーの膵臓から膵島*のみを分離した後、患者に局所麻酔をして門脈**にカテーテルを入れ、膵島を点滴で注入します。注入された膵島が患者の肝臓で機能すると、血糖値に反応してインスリンを分泌するようになります。インスリン療法から離脱するためには複数回の移植が必要となることが多いものの、局所麻酔で行う治療であるため、膵臓移植と比べて患者にかかる身体的負担が軽減できるメリットがあります。
*膵島:膵臓内のインスリンを分泌して血糖を調節する組織(β細胞を含む)。
**門脈:胃や小腸、大腸などの消化管や臓器を流れた血液が肝臓に入っていく静脈。
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