RSウイルスとは、発熱や鼻水などの風邪症状に加え、咳や「ゼーゼー」「うーうー」とうなるような呼吸音がみられる感染症です。
生後3か月未満の赤ちゃん、心臓や肺に基礎疾患を持っている赤ちゃんは重症化しやすいといわれています。重症化すると肺炎や細気管支炎をきたすとされています。
RSウイルスが流行しているときには呼吸音を聞いただけで、RSウイルスによる呼吸障害だと判断できるといいます。赤ちゃんが感染すると呼吸障害をきたすRSウイルス感染症について千葉市立海浜病院の橋本祐至先生にお話を伺いました。
RSウイルスとは、かぜなどの呼吸器感染症を引き起こすウイルスの一種です。私たちにとても身近なウイルスといわれており、年齢や性別を問わず誰でも、そして何度も感染します。
RSウイルスに感染しさまざまな症状が現れた状態をRSウイルス感染症と呼び、例年冬ごろに流行のピークを迎えます。しかし2011年以降より7月ごろからの流行がみられます。
RSウイルスは、赤ちゃんにも感染します。赤ちゃんのRSウイルス感染症でよくみられる感染経路は、RSウイルスに感染した家族からが多いです。
RSウイルスの感染経路は2つあります。飛沫感染と接触感染(直接または間接)です。
ウイルス感染者の咳やくしゃみで飛沫が飛散し、その飛沫が鼻や口などの粘膜に触れることで感染します。
RSウイルス感染症のお子さんとの直接接触感染。また、手すりや赤ちゃんのおもちゃ、机などにウイルスが付着していた場合に、その表面を触って、手指などにウイルスが付着したままなめることで感染する間接接触感染があります。
RSウイルス感染症は、RSウイルスを原因とする呼吸器の感染症です。
RSウイルス感染症では主に熱や咳がみられ、一見すると風邪の症状と似ています。しかし、風邪症状とは異なり、発熱から2〜4日経過してから喘息発作のような「ゼーゼー」とした苦しそうな呼吸がみられます。特に生後3か月未満の赤ちゃん、心臓や肺に基礎疾患を持っている赤ちゃんの場合は重症化しやすく、赤ちゃんにうつさないための予防が大切です。
RSウイルス感染症の症状の詳細は、次章で説明します。
年齢にかかわらず、RSウイルスに感染すると以下の症状が現れます。
しかし、赤ちゃんの場合は、これらに加えて呼吸障害が現れることがあります。具体的には下記のような症状です。
上記の条件に当てはまる赤ちゃんは呼吸障害が出やすいと考えられています。また、これらに該当する赤ちゃんは、重症化するリスクも高いです。
咳が悪化し、
などの疾患に発展することがあります。
また、2歳未満の赤ちゃんの場合、中耳炎を合併することがあります。
細気管支炎とは、気管支から枝分かれして細くなった細気管支がRSウイルスなどのウイルスに感染することにより炎症で内腔が狭くなり呼吸が苦しくなる疾患です。乳児の細気管支炎の原因の50%以上がRSウイルス感染症によるものだといわれています。
症状には、鼻水や激しい咳、速い呼吸などがみられます。発熱も伴いますが、なかには発熱をしない子もいるので、熱が出ていないから大丈夫ということではありません。
赤ちゃんが細気管支炎になると、激しい咳に伴って呼吸困難をきたします。呼吸困難が進行すると痰詰まりも重なりチアノーゼ(血液中の酸素が減少し皮膚や粘膜が青紫色になる)がみられることがあります。また、呼吸の際に、胸とお腹がべこべこと陥没する、陥没呼吸がみられます。呼吸困難で哺乳ができなくなる、咳込み嘔吐も多くみられる症状です。
肺炎は、細菌やウイルスなどが、肺胞に感染して炎症を起こした状態を指します。
発熱が3日以上続く、咳や痰などの症状がみられます。
赤ちゃんが肺炎になると、呼吸困難、脱水症状がみられます。肺炎が重症化すると、ときに命に関わることがあります。そのほか、不機嫌や哺乳不良(ミルクを飲まない)、ぐったりしているなどの全身症状が現れます。
細気管支炎と同様に、赤ちゃんにおける肺炎の約50%はRSウイルス感染によるものだといわれています。
2歳未満の赤ちゃんでは中耳炎の合併がみられます。
赤ちゃんの場合は痛みを訴えられないため、中耳炎の発見が遅れてしまうことがあります。中耳炎の治療が遅れたり、治療をしないまま放置したりすると、難聴に至る可能性もあります。
生後3か月未満で発熱がみられたら、他に症状がなければ夜間に慌てる必要はありませんが、翌日の日中には医療機関を受診してください。RSウイルス感染症以外にも別の疾患が原因で発熱していることがあります。
また、「ゼーゼー」「うーうー」という異常な呼吸音があると、RSウイルス感染による細気管支炎の可能性がありますから、この場合はすぐに受診しましょう。
RSウイルスに感染した赤ちゃんでも発熱がみられないことがあります。咳や鼻水が初期症状として現れ、「ゼーゼー」「うーうー」と呼吸が苦しそうになります。
呼吸が苦しそう、普段より元気がない、ぐったりしているなどの症状がみられたら、発熱がなくとも医療機関を受診してください。
RSウイルスには予防のワクチンはありません。ですから、日常生活でウイルス感染の予防をしていくことが重要です。
風邪の症状がある場合には、赤ちゃんと接する際にマスクの着用を心がけ、赤ちゃんが触りそうなおもちゃや手すり、テーブルなどはこまめにアルコール消毒しましょう。
また、外出から帰ってきた際には赤ちゃんだけでなく、保護者の方も手指の消毒をするようにしましょう。
持ち運びのできる小さなアルコール消毒剤も、RSウイルス感染の予防では有効です。外出の際には持ち運び、その都度赤ちゃんの手指消毒を行うのもよいでしょう。
うさぴょんこどもクリニック 院長、千葉市立海浜病院 小児科 非常勤医師
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