のうかんしゅっけつ

脳幹出血

最終更新日:
2024年10月23日
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2024/10/23
更新しました
2017/04/25
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概要

脳幹出血は、脳出血の一種で、脳幹*という重要な部位の小血管が破れて出血し、意識障害や手足の麻痺などを引き起こす病気です。“脳出血”のおよそ10%が脳幹出血といわれています。

脳幹は、呼吸、心拍、意識レベルの調整など生命維持に欠かせない機能を担うほか、目や顔、舌の運動機能などの神経の中枢があり、手足の運動に指令を出す重要な神経の線維も通っています。そのため脳幹出血が起こると、それらの神経が影響を受けて、目や顔を動かせない、手足をうまく動かせないなどの症状を引き起こします。また、生命維持に重要な意識や呼吸に大きく関わる神経があるため、出血量が多い場合には、重い意識障害や呼吸困難など命に関わる深刻な状態を引き起こす可能性があります。一方で、小さな脳幹出血では、ふらつきやめまいのみの場合もあります。

脳幹出血を含む脳出血の原因の多くは高血圧といわれています。高血圧が続くと脳幹に栄養を送る脳内の小動脈に負荷がかかり、細動脈硬化**など、血管壁に変化を生じ、そこにさらに高い圧力が加わると、脳の血管が破裂して脳出血を発症します。

脳幹は深部に位置し、多くの重要な神経が集まっているため、手術で血腫を除去しても症状の改善が見込めないことが多くあります。そのため、治療は主に血圧コントロールや脳のむくみをとる薬物療法などが行われます。

*脳幹:生命維持に関わる重要な機能を司る脳の領域。大脳の下にあり、ちょうど木の幹のような形をしている。

**細動脈硬化:通常直径50~200μm程度の小血管に内膜の肥厚や血管壁の変性などが起こること。これにより、血管が閉塞したり、破れやすくなったりする。

原因

脳幹出血の主な原因は高血圧です。

高血圧の影響で細動脈硬化が生じると脳の血管が脆くなるため、血圧が急に上がると、脳の血管が破れて脳内に出血を起こします。喫煙や肥満、運動不足、不規則な食生活、ストレス、糖尿病脂質異常症、加齢などが高血圧の原因となり、これらの要因が組み合わさることで脳幹出血のリスクが増加するといわれています。

そのほか、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を服用している場合や、脳の中の血管形態異常である“海綿状血管腫”なども出血の原因になることがあります。

症状

脳幹出血では、出血した部位の神経機能が障害されてさまざまな症状が出現します。

出血が少ない場合には、突然の吐き気や嘔吐、頭痛、息苦しさ、めまいのほか、物が二重に見える、うまく話せなくなる、物を飲み込みにくい、顔の筋肉や体をうまく動かせないなどの症状が現れます。脳幹出血は時間とともに急速に悪化することがあるため、これらの症状が現れたらすぐに救急車で病院を受診することが重要です。

脳幹には生命維持に重要な神経が集まっており、出血が広範囲な場合は意識障害や呼吸困難が現れ、命に関わることもあります。また出血した血液が脳幹の壁を越えて脳室*へ流れ込み、“閉塞性水頭症(へいそくせいすいとうしょう)”をきたして意識障害を引き起こすこともあります。

*脳室:脳幹の後部に存在する空洞で、脳室内は脳脊髄液と呼ばれる液体で満たされている。

検査・診断

脳幹出血が疑われる場合には、ただちに頭部CT検査が行われます。CTで脳幹部に白く映る血腫が認められれば脳幹出血とすぐに診断できます。

出血の量が少なかったり、症状の悪化がなかったりする場合でも、数時間程度空けてCTを再度撮像し、出血範囲が広がっていないかを確認します。その後も何度かCT検査を繰り返します。高血圧以外に、海綿状血管腫など血管形態異常や他の病変が疑われる場合には、造影剤を使って脳の血管を映し出すCTアンギオグラフィ検査やMRI検査なども行われます。

治療

脳幹出血が認められる場合には、主に薬物療法などが行われます。

意識が低下し、呼吸が難しい場合は人工呼吸器を装着します。脳幹は小さな組織であるため、手術が難しく、一般的に外科的治療は行いません。ただし、出血が脳室まで及び、髄液の流れが止まり脳室が拡大する水頭症を引き起こす場合や、脳室内の出血を併発している場合は例外です。このような状況では、脳室内にチューブを挿入し、たまった血液を外へ排出する“脳室外ドレナージ”が行われることがあります。

治療を開始し、出血範囲の拡大がみられなくなって状態が安定すれば、早期から栄養療法やリハビリテーションが開始されます。また体を動かすのが難しい麻痺がある場合には、足に静脈の血栓症を起こしやすいため、足の関節運動や機械によるマッサージを行います。

薬物療法

薬物療法では脳幹出血の悪化を防ぎ、症状を改善して全身の状態を安定させることを目指します。以下の薬などが使用されます。

  • 降圧薬……血圧を下げて、血腫の拡大や新たな出血が起こるのを防ぎます。発症初期は注射薬を用い、なるべく早めに血圧を十分に下げて維持し、その後早期に内服の降圧薬に切り替えます。
  • 止血薬……止血薬は通常用いませんが、血液を固まりにくくする抗血栓薬を服用中の患者が出血した場合、その抗血栓薬の効果を打ち消す薬(中和薬)として使用することがあります。
  • 脳圧降下・浸透圧利尿薬……頭蓋内圧を下げ、脳のむくみによる組織の障害を抑えます。

栄養療法

意識障害や嚥下障害(えんげしょうがい)がある場合には、鼻からチューブを挿入し、胃に直接栄養を送る経鼻経管栄養などを行います。一方、意識に問題なく、飲み込みの機能を評価して問題がない場合には、経口での栄養摂取を開始します。

リハビリテーション

脳幹出血では出血でダメージを受けた神経に麻痺が起こり、両方の手足をうまく動かせないといった重度の後遺症を残すことがあります。そのため、患者の状態が安定したら、すみやかに日常生活動作(ADL)改善のためにリハビリテーションを開始します。リハビリテーションでは、座位・起立訓練から歩行訓練、話す・飲み込む訓練など、患者の障害に応じた動作訓練が行われます。

予防

脳幹出血の予防には、血圧を正常範囲に保つことが重要で、中高年からは自宅で血圧を測定し、自分の普段の血圧を知ることが大事です。禁煙をし、塩分の摂取は7g未満、飲酒は純アルコールで1日20g以下(日本酒1合程度以下)としましょう。定期的な運動を行い、睡眠を十分にとり、健康的な生活習慣を心がけるようにしましょう。

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