てきおうしょうがい

適応障害

最終更新日:
2021年03月08日
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2021/03/08
更新しました
2017/04/25
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概要

適応障害とは、生活の中で生じる日常的なストレスにうまく対処することができない結果、抑うつや不安感などの精神症状や行動面に変化が現れて社会生活に支障をきたす病気のことです。

ICD-10(世界保健機関の診断ガイドライン)では、原因となるストレスが生じてから1か月以内(米国精神医学会のDSM5では3か月以内)に発症し、ストレスが解消してから6か月以内に症状が改善するとされていますが、ストレスが長く続く場合には長期間続くこともあります。

適応障害の症状はうつ病不安障害などと類似していますが、その症状がそういった既存の精神疾患の診断基準に明確に当てはまる場合は、そちらの診断が優先されます。たとえば、明瞭な環境変化があり、その状況に“適応”できずにうつ状態になった場合でも、症状や持続期間などがうつ病エピソードの診断基準を満たすのであれば、診断は適応障害ではなく、うつ病になります。

また、適応障害とほかの精神疾患をある時点では明確に区別できない場合もあり、発症当初は適応障害と診断されても、経過を追ううちにうつ病や統合失調症、不安障害など診断名が変わることもあります。

原因

適応障害は、ストレスなどの外因的な要素と、ストレスに対する対処力や本来の性格などの内因的な要素が組み合わさることで発症します。それぞれの要素には以下のようなものが挙げられます。

外因的な要素

家庭や学校、職場での環境の変化や人間関係の悪化が原因となることが多いですが、親しい人との離別、本人の健康問題などが誘因となることもあります。他者にとっては些細なことと思われるような出来事であっても、重大な症状を生じることがあります。なお、親しい人を失ったということに対して通常想定される範囲内の反応にとどまる死別反応は、想定を超えた反応を示す適応障害とは区別されます。

内因的な要素

社会生活を送るうえでストレスを完全に排除することは困難です。誰にでもストレスはあるものですが、些細なストレスで適応障害を発症する人もいれば、大きなストレスが生じても何ら変わることなく社会生活を送る人もいます。

これは、元来の性格や考え方によるストレスへの耐性や社会的サポート状況の違いなどが影響すると考えられます。

症状

ICD-10(世界保健機関の診断ガイドライン)では、適応障害の診断基準を、“ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態” と定義しています。

情緒面の症状とは、抑うつ気分や不安感、感情の高ぶり、集中力の低下などが挙げられます。また、これらの症状によって不眠やめまい、動悸などの身体症状が現れることもあります。

一方、行動面の症状としては、普段のその人らしからぬ発言や素行の障害(すぐに怒る、容易に感情的行動をとるなど情緒的安定さ)、摂食行動の異常、遅刻や無断欠勤など社会生活を営むうえで周囲にとっても障害になるような行為が現れることがあります。

しかし、これらのさまざまな症状は、ストレスがなくなると改善されるのが特徴です。通常、ストレスが消失してから6か月以上症状が続くことはないとされています。

検査・診断

適応障害の診断には、血液検査や画像検査による明確な基準はなく、症状の現れ方や時期、ストレスとの関係などを丁寧に問診していくことが必要となります。

なお、適応障害は脳腫瘍てんかん甲状腺疾患など脳の器質的疾患や身体疾患に起因する症状を除外した後に診断されるため、脳の病変をチェックするCT検査、MRI検査、脳波検査や採血検査などが行われることがあります。そして、診察や心理検査により既存のほかの精神疾患の診断基準をいずれも満たさないことを確認します(除外診断)。

そのうえで、日常的なストレスに遭遇後、本人に著しい精神的苦痛や社会的機能の障害が生じていれば、適応障害と診断されます。

治療

適応障害の治療でもっとも大切なことは、原因となるストレス状態の軽減です。

そのために環境調整としては、一時的に学校を休ませたり、休職をすすめたりする場合もあります。職場の配置転換後に発症した場合は、本人が希望する部署への異動をすすめるのが有効な場合もあります。

これと並行して、本人に対してはストレス対処能力を高めることが非常に大事です。このために、心理療法としては、認知行動療法やカウンセリングが行われます。不眠、不安、緊張感、抑うつ気分などの症状が顕著であれば、補助的に薬物療法で症状を抑えながら、本人と環境の間に生じている問題を徐々に整え、ストレスを受け入れる手助けをする治療が行われます。

また、社会的サポートの補強としては、家庭内での環境調整や周囲の協力を得ることが必要です。多くの適応障害ではストレスとなる要因がなくなると症状も改善します。しかし、ストレスを完全に排除することは困難なことが多く、ストレスとうまく付き合いながら、情緒面の症状には認知行動療法や対症的に薬物療法が行われます。

なお、一般的に薬物療法で用いられるのは、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などですが、あくまで補助的なものであり、心理療法に比べて効果のエビデンスが乏しいため、環境調整や本人への心理療法が優先されます。

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適応障害を得意な領域としている医師

  • 東北医科薬科大学病院 精神科 科長、東北医科薬科大学病院 福祉部 部長(福祉部精神科外来)、東北医科薬科大学 精神科学 教授

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