最良の手術を、一回で成功させる

京都大学医学研究科 整形外科学 教授
松田 秀一 先生

最良の手術を、一回で成功させる

患者さんの目線に立ち、よりよい治療を追求し続ける松田秀一先生のストーリー

公開日 : 2017 年 12 月 11 日
更新日 : 2017 年 12 月 12 日

興味の方向へと進んだ結果、父親と同じ整形外科医の道へ

うちの家は代々医師でした。幼い頃から漠然と「将来は医師になって、父のあとを継ぐのだろう」と考えていたように記憶しています。そこから私は医学部へ進学、1990年に九州大学医学部を卒業しました。

学生時代にはいろいろな診療科をまわりました。整形外科では手術を自分で組み立てるようにして計画し、幾度もの行程を経て治療を完成させることを知り、心惹かれました。

「整形外科の手術が1番面白そうだ」

興味を刺激される方向へ進んだ結果、図らずも今、自分の父と同じ、整形外科医という道を歩み続けています。

入院中はとても不安で寂しい。患者さんの気持ちを痛感した

医師になってすぐの頃、急性膵炎(すいえん)を患い、3か月ほど点滴を打ちながら病室で過ごしました。そんななか、見舞ってくれる同級生たちは「初めて手術を任された」とか、「今日はこんな患者さんを処置した」などと、その目を輝かせて自身の体験を語ってくれたものです。入院中の自分と、どんどん成長していく同級生たち。私は、1人だけ置いていかれる焦燥感と悔しい気持ちを味わいました。

入院中は安静なので、起きている間は暇でしかたありません。唯一の楽しみといえば、3度の食事と、主治医との会話でした。とくに主治医の回診は待ち遠しく、病床で気になったことがあればメモに溜めて、会うたびに質問したものです。

このとき、初めて患者さんの気持ちになれました。「医者は死なない程度に病気しろ」とはよくいったものです。入院中はとても不安で寂しいこと。医師の回診を心待ちにして過ごしていること。聞きたいことは山ほどあるけれど、すべてを質問できないときもあること—。この頃に学んだ感情は今でも身に染み付いていて、患者さんとのコミュニケーションの基盤になっています。

「先生、脚を切断してください—」患者さんの言葉で外科手術の重みを知る

整形外科は、運動器官をつくる骨・関節・筋肉・靭帯・腱・脊髄・神経の病気、怪我による損傷、先天性疾患など、全身のあらゆる臓器に対して手術や保存療法でアプローチします。ある骨腫瘍の患者さんは、何度か術後感染症を起こし、そのたびに患部の洗浄と人工関節の再固定を行なっていました。そして次は7回目か8回目の手術というときだったと思います。その方は思いつめたように私にいいました。

「先生、もう、脚を切断してください—」

私は、ハッとしました。まだこんなに若い、未来ある男性が自分の脚を切断してほしいと願い出るほどに、外科手術は患者さんにとって重く、大きなストレスなのだ—。それまで私は、低侵襲(患者さんの肉体的負担が少ない)なAの方法でうまくいかなければBの方法でいきましょう、という発想で手術を提案していました。そのようなとき、もしかしたら1回で済むBの手術を望む患者さんは多いのかもしれません。手術自体が大きな精神的負担になっていることを、目の前に患者さんがいながら、私はわかっていなかったのです。

この出来事があってから、患者さんのつらさを軽減するため可能な限り少ない回数の手術で治療が終了することを、治療の基準としました。

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京都大学医学研究科 整形外科学 教授

松田 秀一 先生

日本の膝関節外科の第一人者。特に人工膝関節置換術を専門としており、多数の手術を手掛けている。膝関節のバイオメカニクス、軟骨再生などにおける研究業績も多数。若手医師の教育にも力を入れており、毎年多数の研修医が集まる。

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