毎日忙しい!でも、毎日充実!

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毎日忙しい!でも、毎日充実!

脳神経外科の第一線で活躍する川俣貴一先生のストーリー

東京女子医科大学 脳神経外科学講座 教授・講座主任
川俣 貴一 先生

手術に、業務に、論文に-医師としての忙しい日々

眠い目を擦って夜間に患者さんを見守る当直、長時間集中し患者さんの命を預かる手術、大学病院であればこれに加えて研究発表や論文執筆もしなければなりません。医師なら誰しも「忙しい!」「辛い!」「苦しい!」と音をあげたくなる時があるでしょう。そのような中でも、すべては患者さんの幸せのためにという思いで、診療・研究・教育にあたっています。

私が主任教授を務める東京女子医科大学脳神経外科学講座では毎朝7時半に全体カンファレンスがあります。朝7時過ぎには出勤し、全ての診療・手術・業務が終わり、私が家路につくのが23時や0時などということも決して稀ではありません。

1日中病院にいますが「仕事が終わる」なんてことはありません。患者さんのために、仲間の医師のために、仕事は次から次へと増えていくばかりです。

長いときは10時間以上-脳神経外科手術は体力勝負

脳神経外科は体力と強い精神力を要する側面も持ち合わせている診療科です。手術は長時間かかることも少なくなく、作業は細く複雑。そして一歩間違えば、患者さんの命に影響します。そのため脳神経外科医にはとにかく高いモチベーションと体力の維持が求められます。しかし、患者さんの人生を背負っているという責任感と自覚を頼りに手術へと向かいます。

順調に手術が終わったからといってすぐに安心はできません。患者さんの麻酔が覚めて意識を取り戻すまで、あるいは数日経過して無事が確認できるまで、私たちは患者さんを見守ります。患者さんが術後に無事に目を覚まし、元気な姿を見せてくれて初めて、私たち医師の心に達成感と喜びが訪れるのです。

「晴耕雨読」-手術も研究もできる脳神経外科を目指した後進育成

手術だけでも大変な作業ですが、大学病院に勤める脳神経外科医の仕事はこれだけではありません。手術や外来診療の合間に時間を作り、後進医師の指導や研究にも精を出す必要があるのです。

忙しい毎日が続きますが、私が大切にしているのが「晴耕雨読」という言葉です。これは、私が医師になって5年目、東京都立府中病院(現・多摩総合医療センター)に出張していた頃に出会った青木信彦先生にいただいた言葉です。

一般的に「晴耕雨読」とは晴れた日は畑を耕し、雨の日は本を読む、という閑静な文人の生活を意味する四字熟語ですが、青木先生のおっしゃる「晴耕雨読」の意味はこれとは少し違います。

手術の多い時期は手術に集中し、手術件数が落ち着いて時間が作れる時には論文を書いたり読んだりする。合間に時間を作っては臨床・研究に全力で打ち込む、という理想的な脳神経外科医の姿を表しています。

主任教授となった今では、なかなか自分の論文を書く時間が取れませんが、後進の医師を指導する際に恩師の「晴耕雨読」を思い出し、高みを目指す医師の育成に務めています。

大学には医学生、初期研修医、後期研修医、大学院生、医局員、さまざまな立場で医学を学び研究したい医師がいます。それぞれの目的に合わせて適切に教育することも私たちの義務です。彼らが幸せな医師人生を送るために、これからも全面的にバックアップしていきたいと思っています。

忙しい日々、原動力は?-「患者さんを元気にしたい」という思い

このように、私の毎日はバタバタと大忙しで過ぎ去っていきます。忙しい毎日を送る私を突き動かしてくれる原動力の1つはやはり「患者さんを元気に幸せにしたい」という医師としての義務感・責任感でしょう。

患者さんやそのご家族との出会いは、いつも私に感動や刺激を与えてくれます。手術をして患者さんが元気になれば本当に嬉しい気持ちになりますし、たとえ重症の患者さんであっても、よい結果が出せなければ、その時のことを忘れることはありません。悲しかったこと。悔しかったこと。もっとできたはず、という後悔。そして、納得のいく治療や患者さんからもらった嬉しい言葉。どんな些細なことでも、患者さん1人1人との関わりの蓄積が、私を奮い立たせる原動力になっているのです。

ありがたいことに、私のいる東京女子医科大学脳神経外科には、北は北海道、南は沖縄まで日本各地から患者さんが当院を選んで訪れて来てくれます。「ならば!」と患者さんやご家族の期待に応えるべく、お1人お1人の治療に全力を傾け1つ1つの手術に打ち込みます。

30年勤め上げてきた脳神経外科講座、先代の思いを受け継ぐ

主任教授となってからは、当教室で共に働く仲間である医師たちへの義務感・責任感も1つの大きな原動力になっています。先輩たちや同僚たちが支えてくれているおかげで今私はこの立場に立てていると常に感謝の気持ちを持っています。ですから、彼らの期待に応えたいという思いは常に念頭にあります。

また私は大学を卒業してすぐにこの教室に入局したので、30年間、この教室の歴史をみてきました。初代主任教授であった喜多村孝一先生、私をボストン・ハーバード大学へ留学させてくださった高倉公朋先生、私の手術を徹底的に鍛え上げ良性腫瘍治療を教えてくださった堀智勝先生、脳血管障害の治療を理論的に教えてくださった岡田芳和先生。私は幸いにも当教室歴代主任教授の4名全てと共に働くことができ、本当に多くのことを学びました。このような稀有な経験をさせていただいた身として、先代の思いを引き継ぎ、後進の医師に伝えていく義務と責任があると自覚しています。

「自分自身を優秀だと思ったことは一度もない」

私は自分自身を優秀だと思ったことは一度もありません。医学部を志す方にありがちないわゆる天才タイプではありませんし、時間をかけて根気強くやっていかなければ人並みにはなれないと常に感じてきました。

しかし、この劣等感をバネに努力だけは人一倍してきたつもりです。手術も論文も始めはなかなかうまくできず、悔しい思いや歯がゆい思いをたくさんしましたが、粘り強く繰り返し行うことで少しずつ少しずつ進歩して今の姿があります。

また同時に、患者さんや仲間の医師など多くの方々との出会いによって今の自分があると感じています。多くの学びを与えてくれた方々への感謝の気持ちを胸にこれから先の医師人生を歩んでいきたいと思います。

義務感と責任感を胸に

私はいつも「忙しい」といっていますが、それはとても幸せなことだと思っています。この忙しくも充実した医師人生は患者さん、そして仲間の医師たちによって支えられています。「患者さんをよくしたい」「後輩たちにいい医師人生を送ってほしい」といった義務感や責任感は時には私のプレッシャーとなりますが、その一方で大きな原動力にもなります。これがあるおかげで、日々の診療や業務、経験や教育を懸命に行っていけるのだと思っています。

患者さんや、仲間の医師のために奮闘する忙しい毎日は、「辛い!」「苦しい!」ばかりではありません。目を凝らしてみてみると、日々の中に愛おしく思える経験や出会いがたくさん散りばめられています。このような出来事の1つ1つをすくい上げ、大切にしていくことで、これからも医師人生を邁進していきたいと思います。

 

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  • 東京女子医科大学 脳神経外科学講座 教授・講座主任

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