この手術で患者さんの人生が決まる

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科 講師
渡邉 純 先生

この手術で患者さんの人生が決まる

寡黙に技術と向き合い続ける渡邉純先生のストーリー

公開日 : 2017 年 05 月 30 日
更新日 : 2017 年 06 月 01 日

高校3年生の時のたったひとつの手術が決めた人生

実は、進路を決めるぎりぎりまで医師志望ではありませんでした。私はもともと医師家系でもなく、当時は医療とは関係のない道に進むつもりでした。

そんな私に転機が訪れたのは高校3年生の時です。気胸を患ってしまい、1か月以上の入院と手術が強いられたのです。当時はまだまだ胸腔鏡手術が普及しておらず、気胸といえば開胸での手術が当たり前の時代です。私も最初は「手術は開胸で行う」と担当医に告げられ、一抹の不安を抱えていました。

しかし、「若い高校生に大きな傷が残るのはどうか」との様々な方の厚意のおかげで、私は胸腔鏡で手術を受けられることになりました。そして、入院期間も大幅に短縮し、胸腔鏡手術を受けて1週間も経たずに退院することができたのです。

「手術ってすごいな!しかも、こんな小さな傷で病気を治してしまうなんて。患者の人生をこんなに劇的に変えることができるなら、自分の手でも手術をしてみたい」

ひとりの患者として手術を経験した私は、それから手術や胸腔鏡の魅力にとりつかれてしまいました。自然と外科医を志し、医学部に志望を変更して1浪したのちに横浜市立大学医学部に入学したのです。

再建までできるから、と選んだ消化器外科

当時、虎の門病院は診療に対するモチベーションがとても高く、積極的に手術を行っていました。そのような環境で自分の腕を磨きたい。そう思い、2001年に横浜市立大学医学部を卒業してからの2年間、虎の門病院の外科にてレジデントとして勤務しました。

レジデントとしての研修年限も終わりに近づき、ふと自分の今後を考えたときに3つの選択肢がありました。1つ目はこのまま虎の門病院で勤務すること。2つ目は母校の医局へ入局すること。そして、3つ目は他の病院へ転職すること。

このまま虎の門病院で勤務を続けることはよい選択だとは思いましたが、研修が終わってからもそのまま正規のスタッフとして勤務できるか確証がありませんでした。

様々な可能性があるなか、中長期的な将来を見据えたときに自分にとってもっともよい選択は母校の医局に戻ることだと思いました。そして、母校の横浜市立大学第二外科(現・消化器・腫瘍外科学講座)に入局し3年間、さらに高レベルな手術手技の修練を行い、外科医としての基本を学んだのです。

「あれ、胸腔鏡手術がきっかけなのに消化器外科に進んだの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。私が消化器外科に進んだのは、消化器外科では単に腫瘍などを取るだけでなく再建まで行えるからです。単純に「再建までできたほうおもしろいんじゃないか」と考え、私は消化器外科を選びました。

その後、臨床だけでなく研究も行いたいと思い、横浜市立大学大学院に進学して医学博士を取得しました。

人生の転機となった腹腔鏡との出会い

今でこそ年間300件と非常に多くの腹腔鏡手術を担当していますが、実はまだ最初の腹腔鏡手術を行ってから8年しか経っていません(2017年1月時点)。

初めて腹腔鏡手術を経験したのは大学院に入学して4年目の頃です。当時、腹腔鏡手術はメジャーではなく、腹腔鏡の技術認定医ほとんどいない状況でした。ですから当時私がいた病院でも腹腔鏡手術を指導できる医師がいませんでした。

しかし、高校生の頃に受けた胸腔鏡手術で胸腔鏡や腹腔鏡などの内視鏡手術の可能性を身をもって理解していた私は、どうしても腹腔鏡手術を学びたいと思い、その可能性について熱く語っていました。

それを知った当時の院長が外部から内視鏡手術の技術認定医を呼んでくださったのです。こうして、腹腔鏡手術を含めた内視鏡手術の基本について教わることができました。

あのとき院長が技術認定医の先生を呼んでくださらなかったら、私はこんなに腹腔鏡手術ができるようになってはいなかったと思います。当時の院長にも私に指導をしてくださった先生にも本当に感謝しています。

腹腔鏡手術を初めて行ってから2年目で技術認定医の資格を取得し、そこからは主に大腸がんの腹腔鏡手術をメインに外科全般の手術を行っています。

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横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科 講師

渡邉 純 先生

低侵襲な大腸がんの腹腔鏡下手術を得意とするエキスパート。洗練された手術手技で地域医療に貢献する一方、術後合併症低減のための研究やリンパ流評価によるオーダーメイドの手術療法の開発等の臨床研究を積極的に行っている。

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