院長インタビュー

近隣クリニックと連携し、地域密着型医療の提供を目指す――板倉病院

近隣クリニックと連携し、地域密着型医療の提供を目指す――板倉病院
梶原 崇弘 先生

医療法人弘仁会 板倉病院 理事長・院長

梶原 崇弘 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

千葉県船橋市の中心部に位置する医療法人弘仁会 板倉病院は、船橋市で長い歴史を誇る総合病院です。開院以来地域に根ざした医療を展開し、近年は高度な専門医療と地域のクリニックをつなぐ取り組みを積極的に行っています。

そんな同院が担う役割や今後の展望について、院長である梶原 崇弘(かじわら たかひろ)先生にお話を伺いました。

先方提供
病院外観

当院は初代院長の板倉 岩雄が1940年に開設した、船橋市の中でもっとも古い病院となりました。当初は外科病院として診療をスタートしましたが、現在では20以上の診療科と91の病床(一般病床)を有するまでになりました。そんな歴史ある当院の院長に就任したのは2012年のことです。

少子高齢化が進行するなかでも船橋市の人口は増加傾向にあり、当院にも日々多くの患者さんがお越しになっています。以前は高齢患者さんの割合が大きかったものの、近年のさまざまな取り組みにより、現役世代の患者さんも足を運んでくださるようになりました。

時代とともに変化する地域の医療ニーズにおいて、当院は“地域密着型中小病院”としての役割を担います。高度な専門的医療を担う大学病院などと地域のクリニックをつなぐ、医療のハブのような存在です。患者さんに寄り添った診療を行うのはもちろん、地域の方々がお困りのときに適切な道案内をすることが私たちの使命だと考えています。

船橋市は人口の増加がみられる一方で医療機関の数は限られています。入院設備の整った病院、地域のクリニック、在宅医療などそれぞれが上手に役割分担をしなければ、必要とされる医療を提供することが難しい現状にあります。当院が地域密着型の医療を展開するのはもちろんですが、健康な人を“患者”にさせないことも私たちに課せられた使命だと考えています。

私たちが地域密着型の医療として最初に注力したのが、検診普及のための啓発活動でした。地域の方々に検診を身近なものとして認知してもらい、定期的に検診を受けていただくことで病気の早期発見につなげようと考えたのです。2017年からは当院で撮影したCTやMRIなどの画像を近隣クリニックと共有できるシステム(カルナコネクト)を始動し、かかりつけ医のもとで検査画像をご覧いただけるようにしました。

また定期的に検診を受けていただくため、“痛い”“苦しい”などのマイナスイメージのある内視鏡検査にまつわるご負担にも十分な配慮をしています。鎮静剤を適切に使用することによってウトウトと眠ったような状態で検査を実施し、検査後は医師から丁寧な説明を行うことで“来年もまたまた板倉病院で検診を受けよう”と思っていただけるよう努めています。

地域のクリニックからご紹介いただいた患者さんに何らかの異常が見つかった場合は当院で治療を行い、治療を終えた後は再びかかりつけ医のもとで経過をみていただきます。地域のクリニックをバックアップすることが、結果として地域の方々の利益につながるのならば、これほどうれしいことはありません。

地域の方の中には“病院は病気になったら行くところ”だとお考えの方も多いでしょう。しかしいざ病気になったとき、初めて訪れる病院を受診するのは非常に勇気がいることです。普段から当院との接点を持つことは地域の方々に安心感をもたらし、私たち医療者のモチベーションアップにもつながるものと考えています。

とはいえ、健康な方はなかなか病院に足を運ぶ機会がないと思いますので、当院では6階コンファレンスルームにてさまざまなイベントを企画しています。これまでに開催したイベントには、日本酒について学ぶ“お酒の飲み方教室”、女性に人気の“いたくらラテアート体験”、子どもたちに病院の仕事を体験してもらう“板倉病院メディカル体験”などがありました。

先方提供
板倉病院メディカル体験
先方提供
お酒の飲み方教室

また、子ども食堂&フードパントリーの“いたくらごはんLABO” は、毎月第3土曜日に定期開催しています。

先方提供
いたくらごはんLABO

当院のほかにクリニックや介護老人保健施設などを展開する法人グループでは、新しく開設予定の介護老人保健施設の敷地内にアクアポニックス(水産養殖と水耕栽培を組み合わせたシステム)を導入予定です。アクアポニックスで栽培した野菜を併設の保育園の子どもたちにも食べてもらうなど、よい循環を生み出せればと考えています。

また、同法人では“通いたくなるデイサービス”づくりを行っており、併設する保育園の子どもたちや認知症患者さんとの交流を図っています。直近では、園児とともに“さつまいもの苗を植える会”を行いました。

先方提供

先方提供
さつまいもの苗を植える会

このように、今後も地域の方々が気軽に集えるような場所をつくっていきたいと考えています。

近年の高齢化に伴って当院が担う役割にも変化がみられるようになりました。当院は24時間体制の往診や訪問看護を行ったり“看取り”まで診させていただく機能強化型在宅療養支援病院に認定されており、通院が難しくなった患者さんのご自宅を訪れる訪問診療を行っているほか、地域の8つの在宅医療施設と提携しています。これまで病院は“病気やけがを治す”場所でしたが、今後はどのような最期を迎えるのかを含めて “いい看取り”をサポートすることも大事になってくるでしょう。

自分が病気になったらどんな治療を受けたいか、人生の最期をどのような形で迎えたいか……。こうしたことは、健康なときにはあまり考えない内容かもしれません。しかしこれだけ高齢化が進んだ現在においては、将来の変化に備えて医療やケアについて話し合い、意思決定を行う“人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)”が欠かせません。患者さんご本人、ご家族、そして私たち医療者が一緒に話し合い、ご本人やご家庭にとって一番よい選択ができるようお手伝いしたいと思います。

私は、板倉病院を選んで受診してくださる患者さんが“来てよかった”と安心できるような、地域のホームドクターとなることを目指して日々の診療にあたっています。それは私自身が船橋の古きよきあたたかいコミュニティのなかで育ってきたためであり、今もなお“船橋という地域に貢献したい”という強い気持ちを持っているからです。

大学病院でがん診療を専門にしていた私は、そのまま大学に残ることを考えなかったわけではありません。しかし、祖父や父がつないできた板倉病院は、“船橋市に必要な病院だ”という結論に至り、愛着のある地域の医療を支えるためにこの病院に戻ろうと決心しました。

船橋市はおよそ65万人を抱える大都市ですが(2024年時点)、人口に対して病院の数が足りているとは言えない状況にあります。この問題は当院だけでは解決できないけれど、地域のクリニックと協力すれば克服できるかもしれない……。かつて自分が立てた仮説を証明するためにも、日々の診療をがんばっているところです。地域の方々にはどんなことでも気軽にご相談いただきたいですし、この地域を愛し、一緒に取り組んでくれる医師がいるならば、ぜひ私たちの仲間になってほしいと思います。

写真提供……板倉病院

病床数や診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年8月時点のものです。

受診について相談する
  • 医療法人弘仁会 板倉病院 理事長・院長

    梶原 崇弘 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
    実績のある医師をチェック

    Icon unfold more